サモア標準時

サモア標準時 (Samoa Standard Time)

サモア標準時（Samoa Standard Time）とは、協定世界時（UTC）を基準として、そこから11時間遅らせた標準時（UTC-11）の呼称です。この時間帯は、特に南太平洋に位置するアメリカ合衆国の自治領であるアメリカ領サモアにおいて、その公式な時間として定められています。アメリカ領サモアは、サモア諸島の一部を構成しており、主要な島としてはツツイラ島やマヌア諸島などがあります。地理的に赤道付近に位置し、熱帯気候に属するこれらの島々で、人々の生活や活動の基準となる時間が、このサモア標準時なのです。

使用地域

このUTC-11という時間帯は、アメリカ領サモアのほかにも、同じくアメリカ合衆国の管理下にあるいくつかの太平洋上の地域で使用されています。その中には、第二次世界大戦の激戦地として知られる北西ハワイ諸島に位置するミッドウェー島（公式にはミッドウェー環礁国立自然保護区として管理されています）が含まれます。また、中央太平洋に点在する無人の島々、例えばジャーヴィス島、パルミラ環礁、そしてキングマン・リーフといった、アメリカ合衆国領有小離島として知られる地域も、このUTC-11を標準時としています。これらの島々は人間の恒久的な居住地ではありませんが、漁業や学術調査などで訪れる人々にとっては、この標準時が用いられます。

サモア独立国の時間変更

この標準時に関連して特に注目すべきは、隣接するサモア独立国との関係の変化です。かつて、サモア独立国もアメリカ領サモアと同じくUTC-11を使用していました。しかし、2011年末にサモア独立国は、自国の標準時を抜本的に変更するという歴史的な決定を実行しました。この変更の主な動機は、経済的な連携強化にありました。サモア独立国は、経済的に結びつきの強いオーストラリアやニュージーランドといった国々が位置する西太平洋・オセアニア地域との時差を縮め、ビジネスにおける利便性を高めようとしたのです。具体的には、2011年12月29日の深夜0時をもって、標準時をUTC-11からUTC+13へと24時間進めました。この変更は、文字通り「日付変更線を越える」ことを意味し、サモア独立国では2011年12月29日という日付が暦から完全に消滅しました。これにより、わずか数十キロメートルしか離れていないアメリカ領サモアとの間に、日付変更線による丸一日の時差が生じることとなりました。サモア独立国は日付変更線の西側（アジア・オセアニア側）、アメリカ領サモアは東側（アメリカ側）に位置することになったのです。

IANAタイムゾーンデータベースでの位置づけ

世界中の標準時や夏時間に関する情報を一元管理し、コンピュータシステムなどで利用可能な形式で提供しているのが、IANAタイムゾーンデータベース（通称tz database）です。このデータベースは、正確な時間帯設定を行う上で不可欠な存在となっており、多くのオペレーティングシステムやソフトウェアに組み込まれています。tz databaseに含まれる情報の中には、アメリカ領サモアに関する記述もあり、その標準時がUTC-11であることが明記されています。具体的には、`zone.tab`ファイルなどのデータ構造を通じて、地域ごとの時間帯情報が定義されています。これにより、アメリカ領サモアに設定されたデバイスやシステムは、サモア標準時に従って正確な時刻を表示することが可能となっています。

アメリカ時間との関連

アメリカ合衆国はその広大な地理的範囲から、複数の標準時を採用しています。これらは総称して「アメリカ時間（Time in the United States）」と呼ばれることがあります。サモア標準時は、地理的には北米大陸から遠く離れていますが、アメリカ合衆国の領土（海外領土）で使用されている標準時であるため、広義のアメリカ時間の一部として位置づけることができます。ただし、アメリカ本土で使用されている主要な標準時（東部標準時、中部標準時、山岳部標準時、太平洋標準時など）とは大きく異なる時間帯であり、これらの本土の時間帯と混同しないよう注意が必要です。

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