ドミンゴ・デ・ソト

ドミンゴ・デ・ソト（Domingo de Soto, 1494年 - 1560年11月15日）は、ルネサンス期のスペインを代表する神学者、哲学者、そして法学者です。フランシスコ・デ・ビトリアと並び、16世紀のサラマンカ学派を創設した人物として、その名を知られています。

生涯

ドミンゴ・デ・ソトは、セゴビアで貧しい家庭に生まれました。アルカラ大学とパリ大学で学び、トマス・デ・ビラノバやジョン・メイジャーといった高名な学者に師事し、哲学と論理学を修めました。この時期にビトリアの影響を受けたとされています。アルカラ大学で哲学教師として教鞭を執っていましたが、1525年にドミニコ会に入会し、教育の場をブルゴス学院、そして1532年からはサラマンカ大学へと移しました。

サラマンカ大学では法学と神学の教授として活躍しました。また、皇帝カール5世（スペイン王カルロス1世）によってトリエント公会議（1545年開会）の代表団に選ばれ、ドミニコ会の代表として重要な役割を果たしました。公会議中断後、1548年にはカール5世の聴聞師に任命されましたが、間もなくその地位を辞し、サラマンカに戻りました。その後、ビトリアの没後、サラマンカ学派の後継者としてその発展に尽力し、1556年に引退するまで教鞭を執りました。

1540年には、スペインを襲った飢饉の惨状を目の当たりにし、貧困問題に対する独自の解決策を提唱しました。彼は、フアン・デ・メディナが主張する中央による厳しい統制を批判し、より人道的なアプローチを主張しました。また、インディアス先住民（インディオ）問題にも積極的に関与し、1550年に開催された「バリャドリッド論争」では、ラス・カサスとセプルベダの間で繰り広げられた論争の審議会議長を務めました。ドミンゴ・デ・ソトは、サラマンカでその生涯を閉じ、サラマンカ大学サン・エステバン学院の回廊天井には、法衣をまとった彼とビトリアの肖像画が飾られています。

業績

ドミンゴ・デ・ソトは、ビトリアと共にサラマンカ学派の創始者となり、神学者としてはトマス・アクィナスの『神学大全』の注釈書を著しました。また、ビトリアによって開拓された国際法理論と経済理論を継承・発展させました。

国際法理論においては、スペインの植民地政策を批判的に分析し、「インディオ」の権利を擁護しました。彼の著作は、「国際法の父」と呼ばれるグロティウスの主著『戦争と平和の法』に大きな影響を与えました。特にビトリアの著作と並び、国際法の発展に大きく貢献したと評価されています。

経済理論においては、主著『公正と法』において、先行のルイス・サラビア・デ・ラ・カリェの理論を基に「公正価格論」を展開しました。彼は、財貨の価格は、人間がその財貨に対して感じる必要性の度合い、つまり「評価」によって決定されると主張しました。この考えを貨幣に適用し、為替取引を理論的に正当化しました。これは、マルティン・デ・アスピルクエタによって継承され、「貨幣数量説」へと発展していきました。

『公正と法』は、1540年から1541年、そして1542年から1543年にかけてのサラマンカでの講義に基づいており、徴利（usura）、国家における商業の形態、公正価格、価格変動とその原因、そして海運や生命保険まで、経済に関する広範な内容を含んでいます。この著作は、当時大きな反響を呼び、幾度となく版を重ねました。

著作

In diakecticam Aristoelis (1544年) - アリストテレス論理学の注釈書
『公正と法』（De Justitia et jure） (1553年)

参考文献

光延一郎 「ソト」 『新カトリック大事典』第Ⅲ巻、研究社、2002年
飯塚一郎 『貨幣学説前史の研究』 未来社、1969年
飯塚一郎 「スペインの初期経済学」 小林昇（編） 『経済学の黎明』〈講座経済学史Ⅰ〉 同文舘出版、1977年所収
飯塚一郎 『大航海時代へのイベリア：スペイン植民地主義の形成』 中公新書、1981年
* クラウス・リーゼンフーバー 『中世思想史』 平凡社ライブラリー、2003年 ISBN 9784582764857

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