サンティアゴ・デ・リニエルス

サンティアゴ・デ・リニエルス：リオ・デ・ラ・プラタ副王領の英雄、そして悲劇

サンティアゴ・デ・リニエルス・イ・ブレモン（1753年7月25日 - 1810年8月26日）は、フランスに生まれ、スペインの軍人、政治家として活躍し、リオ・デ・ラ・プラタ副王領の第10代副王を務めた人物です。彼の生涯は、植民地時代の激動と、その後の独立運動の幕開けを象徴しています。

生い立ちと軍歴

リニエルスはフランスのニオールで生まれ、1765年に陸軍士官学校に入学後、フランス軍に入隊しました。1775年にスペイン軍に転身し、翌年にはペドロ・デ・セバーヨスと共にコロニア・デル・サクラメント包囲戦に参加するなど、軍人としてのキャリアを重ねました。

ブエノスアイレス防衛の英雄

リニエルスの名声を決定づけたのは、1806年のイギリス軍によるブエノスアイレス侵攻です。当時の副王ソブレモンテが逃亡する中、リニエルスは民兵隊を組織し、クリオーリョ（植民地生まれのスペイン系住民）と共にイギリス軍を撃退しました。この功績により、彼はブエノスアイレスのアウディエンシア（裁判所）によって暫定副王に選出され、翌1807年には国王カルロス4世によって正式に副王に任命されました。

副王としての苦悩

副王となったリニエルスでしたが、その立場は決して安泰ではありませんでした。イギリス軍の侵攻後、リニエルスを排除しようとする保守派（ペニンスラール）と、自治組織の設立を目指すクリオーリョとの対立が激化しました。1809年1月には、マルティン・デ・アルサガ率いるペニンスラールが反乱を企てましたが、コルネリオ・サアベドラ率いるクリオーリョの民兵隊によって鎮圧されました。この混乱を収拾するため、本国の最高中央評議会はリニエルスを解任しました。

反革命と処刑

1810年5月25日、サアベドラを代表とするプリメラ・フンタ（最初の政府委員会）が設立されると、リニエルスはコルドバに退き、同地のインデンテンテ（知事）や司教、ペニンスラールらと共に反革命を掲げて反乱を起こしました。しかし、この反乱はマヌエル・ベルグラーノ率いる遠征軍によって鎮圧され、リニエルスはコルドバで処刑されました。

評価

サンティアゴ・デ・リニエルスは、ブエノスアイレスをイギリス軍の侵攻から守った英雄として、クリオーリョからの支持を集めましたが、保守派との対立、そして反革命の罪により、悲劇的な最期を迎えました。彼の生涯は、リオ・デ・ラ・プラタ副王領における政治的、社会的な対立と、独立運動の複雑な背景を浮き彫りにしています。

リニエルスは、その功績と悲劇的な結末によって、今もなおアルゼンチンの歴史において重要な人物として語り継がれています。

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