サンノゼ・シャークス

サンノゼ・シャークス（San Jose Sharks）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼを本拠地とする、ナショナルホッケーリーグ（NHL）に所属するプロアイスホッケーチームです。

創設の経緯とチーム名の誕生

北カリフォルニア地域には、オリジナル・シックスが登場した時代から熱心なホッケーファンが存在していました。しかし、過去にNHLフランチャイズを誘致しようとする試みは成功していませんでした。かつてオークランドに本拠を置いていたオークランド・シールズは、1976年にクリーブランドへ移転し、クリーブランド・バロンズとして最後の2シーズンを戦いました。バロンズのオーナーであったジョージ・ガンドとゴードン・ガンドの兄弟は、彼らが1990年まで所有していたミネソタ・ノーススターズとバロンズを合併させることを決定します。1990年5月9日、ガンド兄弟はミネソタ・ノーススターズの所有権を売却し、その引き換えに再び北カリフォルニアに新チームを設立する権利を得ました。こうして、5,000通を超える郵便投票の結果と太平洋沿岸に生息するサメ（シャーク）を考慮して、新たなチーム「シャークス」が誕生したのです。

本拠地の変遷と「鮫の水槽」

創設当初の2シーズン、チームはカリフォルニア州デイリーシティにあるカウパレスでホームゲームを行いました。その後、サンノゼ・アリーナ（後にHP Pavilionと改称され、「鮫の水槽（Shark Tank）」の愛称で親しまれる）へと本拠地を移しました。このアリーナは、シャークスの熱狂的なファンによって独特の雰囲気が作り出され、「鮫の水槽」という通称が定着しました。

創設初期の苦難と飛躍

シャークスは、多くのエクスパンションチームと同様に、創設後の2シーズンはNHLチームの中でも非常に低迷しました。特に1992-93シーズンに喫した71敗は、NHL史上最悪の記録となりました。しかし、3シーズン目の1993-94シーズンには成績が改善され、レギュラーシーズンで33勝35敗16引き分けの82ポイントを獲得し、初のプレーオフ進出を果たしました。この82ポイントは、前シーズンと比較して58ポイント増という、NHL記録となる成績向上幅でした。プレーオフのファーストラウンドでは、第1シードのデトロイト・レッドウィングスを4勝3敗で下し、番狂わせを演じましたが、続くセカンドラウンドではトロント・メープルリーフスに3勝4敗で惜しくも敗れました。翌1994-95シーズンもプレーオフに進出し、前シーズン同様にセカンドラウンドで敗退しました。当時のシャークスは、ゴールテンダーのアルツールズ・イルベ、ディフェンスのサンディス・オゾリンチ、フォワードのイゴール・ラリオノフやセルゲイ・マカロフといった旧ソ連圏の選手たちが中心となり、ケビン・コンスタンチン監督の指揮下にありました。

チーム改革と新たな選手たち

1995-96シーズンは前2シーズンと比べて思わしくなく、パシフィック・ディビジョン最下位でシーズンを終え、プレーオフ進出を逃しました。これを受けてチームは大規模な改革に着手し、シーズン中にサンディス・オゾリンチやイゴール・ラリオノフといった中心選手をトレードで放出し、シーズン終了後には負傷したアルツールズ・イルベもトレードに出しました。交換要員として、コロラド・アバランチからフォワードのオーウェン・ノーランらをチームに加えました。この改革を経て、2シーズン後の1997-98シーズンには、デトロイト・レッドウィングスから獲得したゴールテンダーのマイク・バーノンの活躍により、シャークスは再びプレーオフに進出しました。このシーズン終了後、マイク・バーノンはコーン・スマイス賞（プレーオフ最優秀選手）を受賞しています。また、新ヘッドコーチとしてダリル・サッターが迎え入れられました（サッターはかつて日本リーグでもプレーした経験があります）。

プレーオフ常連へ、そして躍進

シャークスはその後5シーズン連続でプレーオフ出場を果たしますが、セカンドラウンド進出には届きませんでした。2000-01シーズンには、ロシア人のゴールテンダー、エフゲニー・ノボコフが加入し、正ゴールテンダーとして活躍しました。彼はその年のリーグ最優秀新人（カルダー記念賞）に選ばれました。また、同じシーズンにはアナハイムのスター選手だったフィンランド人フォワードのテーム・セラニもチームに加わりました（2003年まで所属）。

2003-04シーズンは、シャークス創設以来最高の出来と評されています。レギュラーシーズンで104ポイントを獲得し、パシフィック・ディビジョンを制し、ウェスタン・カンファレンスの第2シードを獲得しました。プレーオフでも勢いを維持し、ファーストラウンドでセントルイス・ブルースを4勝1敗、セカンドラウンドでコロラド・アバランチを4勝2敗で下しました。しかし、ウェスタン・カンファレンス決勝ではカルガリー・フレームスに2勝4敗と惜しくも敗れ、スタンレーカップファイナル進出はなりませんでした。

チームカラーとジョー・ソーントン時代

シャークスのチームカラーである「teal（緑がかった青色）」は、アメリカのスポーツチームでこの色を普及させる一助となったとも言われています。

2005-06シーズンは、シーズン半ばまでプレーオフ進出圏内を行き来する状況が続いていましたが、シーズン中にボストン・ブルーインズからスター選手のジョー・ソーントンを獲得したことで、チームは勢いを増しました。ソーントンの巧みなパス供給により、スコアラーのジョナサン・チーチューの得点数が飛躍的に増加しました。このシーズン、ジョー・ソーントンはリーグ最多ポイントを獲得し、ジョナサン・チーチューはリーグ最多ゴールゲッター（モーリス・リシャールトロフィー）となりました。また、ニューヨーク・レンジャースからはヴィレ・ニエミネンを補強しました。プレーオフにはウェスタン・カンファレンス5位で進出し、ファーストラウンドではナッシュビル・プレデターズに勝利しましたが、セカンドラウンドでエドモントン・オイラーズに敗退しました。このプレーオフではヴェサ・トスカラがゴールを守り好セーブを見せました。

2006-07シーズンもプレーオフ進出圏内を維持し続け、ゴールテンダーはエフゲニー・ノボコフとヴェサ・トスカラが交互にゴールを守る体制を取りました。移籍期限を前に、セントルイス・ブルースからビル・ゲリンをトレードで獲得しました。その後の快進撃により、順位を急上昇させ、ウェスタン・カンファレンス5位でレギュラーシーズンを終えました。プレーオフでは再びファーストラウンドでナッシュビル・プレデターズを破りましたが、セカンドラウンドでデトロイト・レッドウィングスに敗れました。このシーズンのプレーオフでは、エフゲニー・ノボコフが多くの試合でゴールマウスを任されました。

2007年のドラフト前に、出場停止処分を受けていたマーク・ベルと一緒にヴェサ・トスカラはトロント・メープルリーフスへトレードされました。

初のスタンレーカップファイナルへ

長い歴史の中でプレーオフでの成功を目指してきたシャークスは、2015-16シーズンに大きな歴史を刻みました。ウェスタン・カンファレンス決勝でセントルイス・ブルースを4勝2敗で破り、チーム史上初のカンファレンス優勝を成し遂げ、悲願のスタンレーカップファイナルへの進出を決めました。ファイナルでは、シドニー・クロスビーを擁するピッツバーグ・ペンギンズと対戦しましたが、2勝4敗で敗れ、スタンレーカップ獲得はなりませんでした。しかし、このファイナル進出はチームの歴史における重要なマイルストーンとなりました。

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