ザビール

ザビール：南半球を代表する種牡馬

ザビールは、ニュージーランドで生まれ、オーストラリアで競走馬生活を送った名種牡馬です。19戦7勝という戦績を残し、その中でも特にオーストラリアンギニーを含む重賞4勝は、彼の能力の高さを示しています。オーストラリアダービーでは5着、コックスプレートでは14着と、最高峰の競走馬というには至らなかったものの、その才能は種牡馬として開花することになります。

1991年に競走馬を引退したザビールは、ニュージーランドのケンブリッジスタッドで種牡馬としてのキャリアをスタートさせました。そして、その才能はすぐに開花します。初年度産駒のオクタゴナルは、カンタベリーギニー、オーストラリアンダービー、ローズヒルギニーというオーストラリア3歳三冠（事実上の三冠）を制覇し、G1競走10勝を挙げました。さらに2年目の産駒マイトアンドパワーも、古馬G1競走を多数制覇。この2頭だけで6頭の産駒がG1競走24勝という驚異的な成績を記録したのです。

ザビールの成功は、その後も継続します。スカイハイツなど、数々のG1競走勝ち馬を輩出し、父サートリストラムの父系の復興に大きく貢献しました。オセアニアを代表する種牡馬として、デインヒルと双璧をなす存在となったのです。1997/1998 - 1998/1999年シーズンにはオーストラリアリーディングサイアー、1997/1998 - 2000/2001年シーズンにはニュージーランドリーディングサイアーを獲得するなど、その圧倒的な成功は数字としても証明されています。

代表産駒であるオクタゴナルは、種牡馬としても成功を収め、2003/2004年シーズンの年度代表馬ロンロを輩出しました。さらに、フランスで種付けされたオクタゴナルの産駒レイヴロックは、イスパーン賞を制し、ザビール系から初のヨーロッパG1優勝馬が誕生しました。

ザビールの活躍は、晩年まで続きました。孫のロンロがオーストラリアリーディングサイアーを獲得した2011-2012年シーズンでも、ザビール自身は9位と健闘を見せました。しかし、2013-2014年シーズンに種付けした30頭全てが不受胎であったことから、種牡馬を引退することになります。引退時点でのG1勝ち馬は43頭、重賞勝ち馬は100頭にものぼるという輝かしい実績を残しました。

2015年9月26日、ザビールは死亡しました。しかし、彼の血脈はその後も、プロヴォケイティヴやリジーラムールといったG1競走勝ち馬を輩出し続け、その影響力を示しています。ニュージーランドでは、彼の功績を称え、G1競走「ザビールクラシック」が開催されています。

ザビールとデインヒル：対照的な二大巨頭

種牡馬としてのライバルであったデインヒルとは、対照的な特徴を持っていました。デインヒル産駒が早熟で短距離戦を得意とする一方、ザビール産駒は2400メートル以上の長距離戦で強さを発揮しました。特に、メルボルンカップ3勝、コーフィールドカップ3勝、オーストラリアンダービー4勝と、デインヒル産駒が勝てなかった長距離G1競走で圧倒的な成績を残しました。一方で、2歳G1の最高峰ゴールデンスリッパーステークスでは、デインヒル産駒が4勝を挙げる一方、ザビール産駒の優勝はありませんでした。

また、シャトル種牡馬として世界的に血脈を広めたデインヒルと比較すると、ザビール産駒の北半球への進出は少なかったものの、香港所属のヴェンジェンスオブレインが香港カップやドバイシーマクラシックを制覇するなど、その能力の高さを示しました。オクタゴナルのフランスでの種付けなども含め、ザビールの血統は徐々に北半球にも浸透しつつあります。日本においては、直仔の活躍馬はいませんが、マイネルチャールズやマイネヌーヴェルなどの母の父として知られています。

主な産駒 (G1優勝産駒のみ)

ザビールは、数多くのG1勝ち馬を輩出しました。その中には、オクタゴナル、マイトアンドパワー、ヴェンジェンスオブレインなど、オセアニア競馬史に名を刻む名馬が含まれます。これらの産駒の活躍が、ザビールを伝説的な種牡馬たらしめたのです。

血統と一族

ザビールの父は、南半球のノーザンダンサーと呼ばれたサートリストラムです。半弟にはオーストラリアンギニー優勝馬のバリシニコフがいます。さらに、甥にはイギリスで重賞2勝を挙げたキングフィッシャーミル、英仏で重賞2勝のウェルビーイングがおり、姪にはオーストラリアでG3優勝しているクラウンドグローリーがいます。また、近親には1994年の凱旋門賞優勝馬カーネギーもおり、種牡馬として日本、オーストラリアで活躍しました。

ザビールの死後も、その血脈は多くの競走馬に受け継がれ、現在も世界中の競馬界に影響を与え続けています。彼の功績は、これからも長く語り継がれることでしょう。

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