ザルカ川

概要と地理

ザルカ川は、ヨルダン西部を蛇行しながら流れる重要な河川です。ヨルダン川の東岸に位置し、ヤルムーク川やアルノン川と並び、この地域の主要な支流の一つとして知られています。アラビア語では「ナハル・エッ＝ザルカー」と呼ばれ、「青い川」を意味するとされますが、その名の由来については、シリアのダマスカスとサウジアラビアのメッカを結ぶ巡礼路の途中にあるザルカの砦の近くを通ることに由来するという説も存在します。

この川の源流は、ヨルダンの首都アンマン近郊にあります。そこから一度北へ向かった後、西へと流れを変えます。川は、旧約聖書でギレアドとして知られるヨルダン川東岸の険しい山岳地帯を東西に横断するように流れていきます。流路の途中には、キング・タラール・ダムが建設されており、ここでは大きな人造湖が形成されています。ダムを過ぎると、ザルカ川はステップ気候地帯を深く険しい渓谷を穿ちながら進み、最終的にヨルダン川沿いの盆地へと出てきます。ゲネサレト湖と死海のほぼ中間に位置する地点で、ザルカ川は約100kmを超える旅を終え、ヨルダン川に合流します。

旧約聖書におけるヤボク川

ザルカ川は、旧約聖書に登場する「ヤボク川」に比定される、非常に歴史的な意義を持つ川です。聖書の中でヤボク川は、イスラエル民族の族長ヤコブの重要な物語の舞台として描かれています。

創世記32章によると、ヤコブは双子の兄エサウから逃れてメソポタミアのハランで伯父ラバンのもとに身を寄せ、財産を築き上げました。それから20年後、ヤコブは一族郎党を連れてハランを出発し、故郷であるカナンへ戻る旅の途中で、ヤボク川に差し掛かります。ヤコブは、この川の浅瀬を渡るルートを選びました。ヤボク川は西へ下るとスコットの谷に続き、スコットからヨルダン川を渡れば、シェケムの街へ比較的容易にたどり着ける道筋だったからです。また、旧約聖書に何度か名が出てくるザレタンやアダムといった町も、ヤボク川がヨルダン川の谷に出る地点の近くに位置していました。

ヤコブがヤボク川を渡ろうとした時、彼は兄エサウが多数の従者を率いて向かってきているという知らせを受け、強い不安に襲われます。その夜、ヤコブは先に家族や家畜をヤボク川の向こう岸に渡らせ、自分は一人残りました。すると、不思議な人物が現れ、ヤコブは夜が明けるまでその人物と格闘することになります。夜明けが近づき、相手がヤコブから離れようとした際、ヤコブがしがみついて祝福を求めると、相手は自らが神の使いであると告げ、ヤコブに「神と戦った者」という意味を持つ「イスラエル」という新しい名を与えて去りました。ヤコブはこの場所をペヌエル（「神の顔」の意）と名付けました。夜が明けてヤコブが川を渡ると、そこにはエサウが待っていました。ヤコブは恐れていましたが、意外にもエサウはもはやヤコブを憎んではおらず、彼を抱きしめ、二人は和解しました。このヤコブと「天使」との格闘の物語は、ヤボク川のほとりで起きた出来事として、聖書の中でも特に象徴的な場面の一つです。

さらに、ヤボク川は聖書時代において、複数の部族や王国の境界線としても重要な役割を果たしました。民数記や申命記、ヨシュア記によれば、ヤボク川はイスラエル十二支族のうち、ヨルダン川東岸に入植したルベン族とガド族の領土と、南に位置するアモン人の領土との間の自然な境界線となっていました。また、アムル人の王シホンの領土も、南のアルノン川から北のヤボク川まで広がっていたと記述されています。士師記11章には、アモン人の王がイスラエルに対し、かつて自分たちの領土であったヤボク川周辺地域の返還を要求する場面が記されています。歴史家のエウセビオスは、ヤボク川の位置について、古代都市ゲラサ（現在のジャラシュ）とフィラデルフィア（現在のアンマン）の間にあたると述べています。

現代のザルカ川

現代のザルカ川は、ヨルダンにとって非常に重要な水源の一つです。しかし、この川は現在、いくつかの深刻な課題に直面しています。水量の減少が進んでいること、そして流域の開発などによる水質汚染が挙げられます。ザルカ川は、その歴史的な重要性だけでなく、現代のヨルダンにおける水資源問題とも深く関わる、過去と現在を結ぶ川と言えるでしょう。

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