シュー皮

軽やかで多彩なシュー皮の世界

シュー皮、またはシュー生地は、シュークリームやエクレアといった、誰もが一度は口にしたことがあるであろう洋菓子の土台となる、軽くて風味豊かなペイストリーです。その汎用性の高さから、クロカンブッシュ、フランスのクルーラー、ベニエ、サントノーレ、パリ・ブレストといった華やかな菓子から、ドイツのフロッケンザーネトルテ、インドネシアのクエ・スス、そしてグジェールといった、国境を越えた様々な菓子作りにも用いられています。

シンプルな材料と驚くべき食感

シュー皮の材料は驚くほどシンプルです。バター、水、小麦粉、そして卵。これら4つの材料だけで、独特の軽さと空気を含んだ食感を生み出します。ベーキングパウダーなどの膨張剤は一切使用しません。その秘密は、高い水分量にあります。生地を高温で焼く（あるいは揚げる）際に発生する水蒸気によって、シュー皮は内部からふくらみ、特徴的な空洞構造が形成されます。この点において、ヨークシャー・プディングやデイヴィッド・エアのパンケーキと共通点があります。

多様な調理法と世界各地のバリエーション

シュー皮の調理法は焼くのが一般的ですが、ベニエのように揚げる方法もあります。スペインや南米では、揚げたシュー皮を用いたチュロスが朝食として親しまれています。チョコレートブランマンジェにつけていただくのが一般的です。オーストリアでは、茹でたシュー皮を用いて、甘いアンズを使ったマリレンクネーデルというダンプリングが作られています。また、茹でたシュー皮をマカロニ代わりに用いる「パリ風グラタン」といった、意外な調理法も存在します。シュー生地にクリームを詰めて、シュークリームやエクレアを作るのも定番の方法です。

歴史：王室から現代の定番菓子へ

シュー生地の起源は16世紀にまで遡ります。カトリーヌ・ド・メディシスがフランス王アンリ2世に嫁いだ際に、従えた料理人ポペリーニが考案したものがシュー生地の原型と言われています。当時、生地をスプーンで天板に落とし、火で乾燥させるという手法が用いられていたようです。

しかし、現代のようなシュー生地のレシピが確立されたのは、18世紀のことです。パティシエのジャン・アヴィスがそのレシピを完成させたとされています。アヴィスは、かの有名なアントナン・カレームの師匠にあたる人物でもありました。カレームはアヴィスのレシピをさらに改良し、私たちが現在親しんでいるシュークリームのレシピを完成させたのです。フランス語でシュー生地を意味する「パータ・シュー（pâte à choux）」は、「シュー（choux）」がキャベツを意味することに由来しています。その姿がキャベツに似ていることにちなむとされています。

シュー皮は、その歴史とシンプルな材料、そして多様なバリエーションによって、世界中の菓子愛好家を魅了し続けている、まさに定番中の定番と言えるペイストリーです。

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