ショート スカイバン

ショート SC.7 スカイバン：多用途に活躍する輸送機

ショート スカイバンは、イギリスの航空機メーカー、ショート社が開発・製造した双発ターボプロップ汎用輸送機です。その特徴的な外観と高い実用性から、短距離旅客機や軍用輸送機として世界中で幅広く運用されました。

開発の経緯

スカイバンの開発は1959年に始まり、1963年1月17日に初飛行を遂げました。当初はレシプロエンジンを搭載していましたが、将来性を見据えてターボプロップエンジンに換装。フランスのチュルボメカ社製アスタゾウIIエンジンを搭載した「スカイバン シリーズ1A」が開発され、同年10月2日に初飛行しました。その後、量産型である「スカイバン シリーズ2」ではアスタゾウXIIエンジンが採用され、1968年からはギャレット社製TPE-331エンジンを搭載した「スカイバン シリーズ3」へと生産が移行しました。

特徴的な設計

スカイバンの最も特徴的な点は、その胴体断面が四角形であることです。これは、最大限の搭載能力を確保するための設計思想によるものです。主翼は高翼配置で、降着装置は固定式を採用しています。また、水平安定板の両端に垂直尾翼を配置した独特な構造も特徴的です。これらの設計は、短距離での運用を前提とした小型輸送機としての役割に特化した結果と言えるでしょう。非与圧式のキャビンは、旅客輸送仕様では19名の乗客を収容でき、後部にはヒンジ式のカーゴドアが設けられています。

生産と運用

1986年までに北アイルランドのベルファストで153機が生産され、軍用・民間用を問わず、世界中の多くの国々で採用されました。日本では、かつて海上保安庁が運用していたことがあります。

多様な派生型

スカイバンには、様々な派生型が存在します。
スカイバン シリーズ1: レシプロエンジンを搭載した試作機。
スカイバン シリーズ1A: アスタゾウIIターボプロップエンジンを搭載した試作機。
スカイバン シリーズ2: 最初期の量産型。アスタゾウXIIエンジンを搭載。
スカイバン シリーズ3: TPE-331エンジンを搭載した主力モデル。
スカイバン シリーズ3A: シリーズ3をベースに、より大きな総重量での運用を可能としたモデル。
スカイバン シリーズ3M: 軍用型。輸送だけでなく、捜索救難など多用途に運用可能。
スカイバン シリーズ3M-200: シリーズ3Mの重重量運航型。
スカイライナー: 豪華な内装を備えた純旅客輸送型。

各国での採用（軍用）

スカイバンは、以下の国々で軍用機として採用されました。

アラブ首長国連邦、アルゼンチン、オーストリア、ボツワナ、シスカイ、エクアドル、イギリス、ガーナ、ガンビア、ガイアナ、インドネシア、日本、レソト、メキシコ、モーリタニア、マラウイ、ネパール、オマーン、パナマ、シンガポール、タイ、イエメン。

性能要目（シリーズ3）

乗員: 1-2名
乗客: 19名
全長: 12.22 m
全幅: 19.79 m
全高: 4.60 m
翼面積: 34.65 m2
空虚重量: 3,331 kg
最大離陸重量: 5,670 kg
エンジン: ギャレット TPE331-201 (715hp) × 2
最大巡航速度: 325 km/h
実用上昇限度: 6,860 m
最大航続距離: 1,117 km（燃料余裕含む）

登場作品

スカイバンは、映画やゲーム、小説など、様々なフィクション作品にも登場しています。

映画
『キャノンボール2』：日本の貨物機として登場し、三菱チームの三菱・スタリオンを降ろすために公道へ強行着陸する場面が描かれています。
ゲーム
『フィクショナル・トルーパーズ』：メカール共和国とエストビア連邦の両軍が装備。メカール軍は独自にレドームを背負った早期警戒機型を運用しています。
小説
『遠い海から来たCOO』：主人公が大型水槽を運ぶために使用しています。

参考文献

分冊百科「週刊 ワールド・エアクラフト」No.134 2002年 デアゴスティーニ社

関連項目

ショート 330
* ショート 360

もう一度検索