ジェイムズ・グラハム (初代モントローズ侯爵)

初代モントローズ侯爵ジェイムズ・グラハムの生涯

初代モントローズ侯爵ジェイムズ・グラハム（1612年 - 1650年）は、スコットランドの貴族であり、清教徒革命（イングランド内戦）期に重要な役割を果たしました。父は第4代モントローズ伯爵ジョン・グラハム、母は初代ガウリ伯爵ウィリアム・リヴァンの娘マーガレットです。

生い立ちと初期の活動

1626年、父の死により第5代モントローズ伯爵を襲爵し、セント・アンドルーズ大学で学びました。1629年にはマグダレーン・カーネギーと結婚し、4人の子供をもうけました。当初、グラハムはイングランド王兼スコットランド王チャールズ1世の宗教政策に反発し、1638年にはアーガイル伯爵らと共に国民盟約を結成し、長老派教会を擁護しました。この盟約は、チャールズ1世の宗教政策に対する抵抗運動として重要な意味を持ちました。

主教戦争と盟約派の分裂

1639年からの主教戦争では、グラハムは盟約派として活躍しましたが、後に盟約派内部で意見が対立。スコットランドの自治を主張する強硬派と、国王との協調を重視する穏健派に分裂し、グラハムは穏健派の代表格となりました。この対立により、グラハムは一時的に逮捕・監禁されることになります。しかし、1641年にチャールズ1世の介入で釈放され、表面的には平和が訪れましたが、主教戦争の戦費問題でチャールズ1世はイングランド議会と対立し、イングランド内戦へと繋がっていきました。

王党派への転向

1642年からのイングランド内戦の影響がスコットランドにも及び、グラハムら穏健派は王党派に転じました。一方、アーガイル侯ら強硬派は議会派と連携し、1643年には厳粛な同盟と契約を締結。イングランドへ援軍を派遣しました。孤立したグラハムは、王妃ヘンリエッタ・マリアと接触し、スコットランドでの蜂起を提案しました。しかし、他の王党派との対立や、ハミルトン公との確執から、一旦スコットランドに帰国します。その後、盟約派と議会派の同盟を知り、チャールズ1世の側近としてスコットランド挙兵計画を練り上げました。

1644年、侯爵に昇叙され、スコットランド総督に任命されたグラハムは、北イングランドで挙兵準備を始めました。しかし、盟約派の迅速な対応により撤退を余儀なくされます。同年7月、援軍と共にスコットランドに上陸し、再び挙兵しました。

スコットランドでの活躍と敗北

グラハムの軍は少数精鋭で、地形を利用した作戦やゲリラ戦術を駆使し、ティパミュアの戦いやアバディーンの戦いで盟約派を破りました。また、スコットランド中を荒らし回り、盟約派を大いに動揺させました。特に1645年のインヴァロッヒーの戦いとキルシスの戦いでの勝利は、グラハムの軍事的名声を最高潮に高めました。しかし、この間にも多くの犠牲を出し、息子の戦死もありました。チャールズ1世はグラハムに期待し合流を試みましたが、ネイズビーの戦いで議会派に大敗し、再起が難しい状況になっていました。

しかし、盟約派が反撃に転じると状況は一変します。リーヴェン伯の派遣軍がスコットランドに戻り、グラハムの軍は兵の離脱で急速に弱体化しました。1645年9月、フィリップホフの戦いで敗北し、グラハムは逃亡を余儀なくされました。チャールズ1世も敗北を受け入れ、グラハムのスコットランドでの活動は終わりを迎えました。

亡命と最期

グラハムは大陸を転々とした後、チャールズ王太子（後のチャールズ2世）に迎えられました。1649年、チャールズ1世の処刑に悲憤し、議会派への憎悪を表明しました。チャールズ1世処刑後、スコットランドでは反発が起こり、盟約派も王党派と手を組みましたが、長老派教会の受け入れとグラハムら王党派の排除を条件としました。1650年、孤立した状況でオークニー諸島で挙兵したグラハムは、カービスデイルの戦いで敗北し捕えられ、エディンバラで処刑されました。遺体は各地に分散され、その最期は悲劇的なものでした。

死後

グラハムの死後、盟約派はスコットランドの実権を握りましたが、第三次イングランド内戦が勃発し、オリバー・クロムウェル率いる共和国軍がスコットランドに侵攻しました。1651年、ウスターの戦いでスコットランド軍は共和国軍に敗れ、チャールズ2世は大陸へ亡命。1660年の王政復古でチャールズ2世が復帰し、グラハムは英雄として再評価されました。遺体は集められ、セント・ジャイルズ大聖堂に埋葬されました。なお、グラハムの爵位は息子が相続し、曾孫は公爵に昇叙されました。

グラハムの生涯は、複雑な政治情勢の中で翻弄されながらも、自らの信念を貫いた人物像を伝えています。彼の軍事的才能は高く評価され、その勇猛果敢な行動は後世に語り継がれています。

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