ジャニベク・ハン

ジャニベク・ハン：カザフ・ハン国の創始者

ジャニベク・ハン（生没年不詳）は、ジョチ・ウルスの混乱期にカザフ・ハン国を創始した重要な人物です。彼はジョチ裔の王族であり、15世紀半ばにアブル＝ハイル・ハンに対して反乱を起こし、ケレイ・ハンと共にキプチャク草原の東方へと逃れました。

生涯

ジャニベクは、ジョチ・ウルスの左翼、オルダ・ウルスの麾下にあるトカ・テムル家の出身です。彼の曾祖父であるオロス・ハンは、ジョチ・ウルスの家督を巡る争いで活躍しました。しかし、15世紀半ばになると、シバン家のアブル＝ハイル・ハンが勢力を拡大し、中央アジア一帯を支配するようになります。アブル＝ハイル・ハンは、南部のティムール朝やモグーリスタン・ハン国にも圧力をかけました。

ジャニベクは、ケレイと共にカザフ分裂派を率い、アブル＝ハイル・ハンの影響から逃れるため、部衆を率いてキプチャク草原の東方、モグーリスタンへと移動しました。研究者によって時期は異なりますが、エセン・ブカが統治するモグーリスタン・ハン国に迎え入れられたという点では概ね一致しています。エセン・ブカは彼らを歓迎し、チュー川流域に独立した勢力を築くことを許しました。これが、後のカザフ・ハン国の基礎となります。

アブル＝ハイル・ハンの死後、多くのウズベク人がジャニベクを頼り、その数は20万人にも達しました。1468年には、アブル＝ハイル・ハンの後継者であるシャイフ・ハイダルの攻撃を打ち破り、逆にハイダルを戦死させました。

功績と評価

ジャニベクはその知恵を称えられ、「Äz（賢者）」という称号を贈られました。彼の息子であるカーシム・ハンは、カザフ人の法律を成文化しました。現代のカザフスタンでは、ジャニベクとケレイによる東方への移住が、カザフ人の民族形成と独立を導いた出来事として重要視されています。

カザフ・ハン国において、ケレイの王統は次代で途絶えましたが、ジャニベクの王統は代々カザフ・ハン国の当主として存続し、18世紀にはヒヴァ・ハン国の当主としても迎えられました。彼の血筋は、19世紀のボケイ・ハン国の時代まで続きました。

ジャニベク・ハンは、カザフ・ハン国の創始者として、カザフ民族の歴史において重要な役割を果たした人物です。

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