ジャン＝ポール・サヴィニャック

ジャン＝ポール・サヴィニャック：画家と映画監督の二つの顔

1936年、ヴェルサイユに生まれたジャン＝ポール・サヴィニャックは、フランスを代表する画家、そして映画監督として知られています。古典文学者と同名の人物が存在しますが、全くの別人です。

サヴィニャックの幼少期はトゥールーズで過ごされました。その後、パリに移り住み、ピエール・シャルパンティエというパトロンを得て、モンパルナスのアトリエで画業に励みました。装飾芸術美術館の館長とも親交を深めた彼は、芸術家としての道を着実に歩み始めます。

映画の世界との関わりは、1959年、ジャン・ドラノワ監督作品『ギャンブルの王様』の美術装飾助手として始まりました。その後、兵役を経て、運命の出会いが訪れます。それは、かのジャン＝リュック・ゴダール監督との出会いでした。

1962年除隊後、ゴダールの『女と男のいる舗道』で助監督として参加。以後、ゴダール作品に携わり、『カラビニエ』『はなればなれに』『アルファヴィル』と、アンナ・カリーナ主演作品を中心に計4本の作品で助監督を務めます。さらに、ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』、アニエス・ヴァルダの『幸福』など、ヌーヴェルヴァーグを代表する巨匠たちの作品にも参加、その才能を磨いていきました。

わずか3年間の助監督経験後、驚異的なスピードで監督デビューを果たします。1965年公開の『ニック・カーターと赤のクローバー』です。この作品は、『アルファヴィル』のスピンオフ的な作品であり、ゴダール作品で培ったサヴィニャックのセンスが光る作品となりました。撮影には、ゴダール作品で撮影助手だったクロード・ボーソレイユ、そして後に『小さな泥棒』で知られるクロード・ミレールが助監督として参加しています。また、『シェルブールの雨傘』と『幸福』のプロデューサーであるマグ・ボダールのパルク・フィルムも出資しており、当時のフランス映画界の状況を反映した作品と言えるでしょう。

その後、サヴィニャックはゴダール監督を追うように、ゴダールに関するドキュメンタリーや五月革命に関する作品も制作しようと試みます。しかし、ゴダールが毛沢東主義に傾倒するにつれて、彼は「ジガ・ヴェルトフ集団」への参加をせずに映画界から離れていきます。1975年以降は、画家としての活動に専念するようになります。

サヴィニャックは、ゴダールとカリーナの最も幸福な時期を目の当たりにし、ヌーヴェルヴァーグの華やかな時代を生き抜いた重要な人物です。彼の監督デビュー作『ニック・カーターと赤のクローバー』は、『アルファヴィル』の世界観を受け継ぎ、ゴダール作品に携わった同僚達、シャルル・L・ビッチの『最後の男』など、ゴダール作品群と強い繋がりを持つ作品群として捉えることが出来ます。クリス・マルケル監督の『ラ・ジュテ』から受けた影響が、短期間で鮮やかに開花したと言えるでしょう。

サヴィニャックのフィルモグラフィーには、監督作品として『ニック・カーターと赤のクローバー』、『ジャン＝リュック・ゴダール』、『五月に何が起こったか?』、『議会73』などがあります。助監督として参加した作品は、『女と男のいる舗道』、『カラビニエ』、『シェルブールの雨傘』、『はなればなれに』、『アルファヴィル』、『幸福』など、ヌーヴェルヴァーグを代表する名作ばかりです。また、撮影として参加した作品もあり、映画界に多方面から貢献しました。

画家として、映画監督として、サヴィニャックは、フランス文化史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。彼の作品は、今もなお多くの人の心を捉え続けています。

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