ジュニアズ・ファーム

ジュニアズ・ファーム (Junior's Farm)

「ジュニアズ・ファーム」は、1974年にポール・マッカートニー率いるバンド、ウイングスが世に送り出した楽曲であり、彼らにとって通算9枚目のシングルとして発表されました。

制作の背景

1973年以来、ポール、リンダ、デニー・レインの3人体制で活動していたウイングスは、新たなギタリストとしてジミー・マカロックを、そしてドラマーとしてジェフ・ブリトンを迎え入れ、体制を強化しました。この新体制での最初のレコーディング・セッションは、1974年6月にアメリカ合衆国テネシー州ナッシュヴィルで行われました。これは、後に発表されることになるニュー・アルバムに向けたリハーサルを兼ねたもので、その際に「ジュニアズ・ファーム」は録音されました。

楽曲の着想

この曲のユニークな着想は、彼らがナッシュヴィルでのセッション期間中、約6週間にわたって滞在していた場所から得られました。それは、テネシー州ウィルソン郡レバノンにある、カントリー・ミュージックのソングライター、カーリー・プットマンが所有する広大な農場でした。この「ファーム（農場）」での体験が楽曲のインスピレーションとなり、さらに、ボブ・ディランの楽曲「マギーズ・ファーム」に登場する「息子（ジュニア）」というアイデアが組み合わされて、「ジュニアズ・ファーム」というタイトルとテーマが生まれました。

シングルとして

シングル盤のB面には「サリー・G」が収録されています。この「サリー・G」は、ナッシュヴィル滞在中に、地元で活躍するセッション・ミュージシャンたちと共にレコーディングされた楽曲で、その土地柄を反映したカントリー・ミュージックの雰囲気を持っています。

演奏者（「サリー・G」）

「サリー・G」の録音には、ウイングスのメンバーに加え、現地の著名なミュージシャンが参加しました。

ロイド・グリーン - ドブロ・ギター、ペダル・スティール・ギター
ボブ・ウィルス - ヴァイオリン
ジョニー・ギンブル - ヴァイオリン

チャートでの成功

「ジュニアズ・ファーム」は、リリースされるやいなや各国のチャートで成功を収めました。イギリスでは最高16位にランクインしました。アメリカでは、シングルは当初「ジュニアズ・ファーム」としてリリースされましたが、後にB面の「サリー・G」とともに両A面扱いとなり、さらにクレジット表記が何度か変更されるという珍しい経緯をたどりました。最終的にビルボード誌の週間シングルチャートでは、1975年1月11日付で最高位となる第3位まで上昇する大ヒットとなりました。1975年の年間ランキングでは88位を記録しています。また、キャッシュボックス誌のチャートでも最高4位（1月4日付）を記録し、年間92位となりました。特にビルボードチャートにおけるクレジットの変更は興味深く、最初は「ジュニアズ・ファーム」単独名義で上昇し、後に両A面「ジュニアズ・ファーム／サリー・G」、下降中に「サリー・G／ジュニアズ・ファーム」となり、さらに「サリー・G」単独でチャートインし直して最高39位まで上昇するという複雑な動きを見せました。

その他の特記事項

このシングルは、ウイングスにとっていくつかの節目となりました。ドラムを担当したジェフ・ブリトンは、本作が発表された直後にバンドを脱退したため、「ジュニアズ・ファーム」は彼がウイングスに在籍していた時期にリリースされた唯一のシングルとなりました。また、このシングルはポール・マッカートニーにとって、長年所属したアップル・レコードからリリースされた最後のシングルという歴史的な意味合いも持っています。

主な収録アルバム

「ジュニアズ・ファーム」は、ベスト・アルバムなどに収録されています。

『ウイングス・グレイテスト・ヒッツ』
『オール・ザ・ベスト』（アメリカ盤のみ）
『夢の翼〜ヒッツ&ヒストリー〜』（エディット・ヴァージョン）

参加メンバー

「ジュニアズ・ファーム」の演奏は、当時のウイングスのメンバーによって行われました。

ポール・マッカートニー - リード&バッキング・ボーカル、ベースギター
リンダ・マッカートニー - バッキング・ボーカル、キーボード
デニー・レイン - バッキング・ボーカル、エレクトリック・ギター
ジミー・マカロック - バッキング・ボーカル、エレクトリック・ギター
* ジェフ・ブリトン - ドラムス

この楽曲は、ウイングスが新たな活力を得て制作された時期を象徴する、力強く印象的なナンバーとして、今も多くのファンに親しまれています。

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