ジョスリン・ベル・バーネル

スーザン・ジョスリン・ベル・バーネル：パルサー発見の立役者と物理学における多様性への貢献

スーザン・ジョスリン・ベル・バーネル（Susan Jocelyn Bell Burnell）は、1943年7月15日に北アイルランドのベルファストで生まれたイギリスの天体物理学者です。彼女は、ケンブリッジ大学大学院生時代に、指導教官であるアントニー・ヒューイッシュ（Antony Hewish）と共に、パルサーを発見しました。この発見は天文学に大きな影響を与えましたが、ノーベル物理学賞はヒューイッシュとマーティン・ライル（Martin Ryle）に授与され、ベル・バーネルは受賞を逃しました。

パルサーの発見

1967年、ベル・バーネルはクエーサー観測のための電波望遠鏡のデータを分析中、非常に早く規則的に変化する電波信号を発見しました。この信号は、当初「LGM-1」（現・PSR B1919+21）と名付けられ、宇宙人からの通信ではないかとも考えられました。しかし、その後の研究で、この信号は高速で回転する中性子星、すなわちパルサーから放射されていることが判明しました。

パルサー発見の論文は5人の共著で発表され、ヒューイッシュが筆頭著者、ベル・バーネルが2番目の著者でした。1974年、ヒューイッシュとライルは「電波天体物理学の先駆的研究」を理由にノーベル物理学賞を共同受賞しましたが、パルサーの信号に最初に気づいたベル・バーネルは受賞を逃しました。この選考結果に対して、フレッド・ホイル（Fred Hoyle）を含む多くの天文学者が異議を唱えました。

その後のキャリア

1969年にケンブリッジ大学でPh.D.を取得後、ベル・バーネルはサザンプトン大学、ロンドン大学ムラード宇宙科学研究所、エディンバラ王立天文台、オープン大学、プリンストン大学、バース大学など、数々の研究機関や大学で教鞭を執りました。また、2002年から2004年までイギリス天文学会会長、2008年から2010年まで英国物理学会会長を務めるなど、学会の要職も歴任しました。現在は、オックスフォード大学客員教授兼マンスフィールド・カレッジフェローを務めています。

多様な物理学研究者育成への貢献

ベル・バーネルは、科学界における女性の地位向上にも尽力しています。2018年に基礎物理学ブレイクスルー賞特別賞を受賞した際、賞金230万ポンド全額を寄付し、女性や少数民族、難民の学生が物理学研究者になるための奨学金基金「ベル・バーネル大学院奨学金基金」を設立しました。この基金は、英国物理学会によって管理されています。

受賞歴と栄誉

ベル・バーネルは、数々の賞を受賞しています。主なものとしては、マイケルソンメダル（1973年）、ロバート・オッペンハイマー記念賞（1978年）、ハーシェル・メダル（1989年）、ジャンスキー賞（1995年）、マイケル・ファラデー賞（2010年）、ロイヤル・メダル（2015年）、基礎物理学ブレイクスルー賞特別賞（2018年）、コプリ・メダル（2021年）、カール・シュヴァルツシルト・メダル（2021年）などが挙げられます。

また、ウィリアム&エルヴァ・ゴードン卓越助教授（2006年）、大英帝国勲章受勲（2007年）、BBC100人の女性に選出（2014年）など、数々の栄誉にも輝いています。2020年には、王立協会本部に彼女の肖像画が掲げられ、その功績が讃えられました。

スーザン・ジョスリン・ベル・バーネルは、パルサーの発見という天文学における重要な業績を残しただけでなく、科学界における多様性の推進にも大きく貢献しています。彼女の功績は、次世代の科学者たちにインスピレーションを与え続けています。

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