ジョージ・アーネスト・モリソン

ジョージ・アーネスト・モリソン（1862年2月4日 - 1920年5月30日）は、オーストラリア・ビクトリア州ジーロングで生まれました。彼は、旅行家、冒険家、そして『タイムズ』の特派員として、また図書収集家としても知られています。中国名は莫理循（バクリジュン）です。

生涯

モリソンはメルボルン大学を卒業後、イギリスのエジンバラ大学で医学を学びました。その後、モロッコで侍医を務めた後、オーストラリアへ帰国。1882年から1883年にかけて、カーペンタリア湾からメルボルンまでオーストラリア大陸を徒歩で縦断するという驚異的な偉業を成し遂げました。

1893年、モリソンは中国へ渡り、その後数年間、中国各地を精力的に探検します。1894年には上海からラングーンへ、1896年にはバンコクから雲南府へ、1897年には満州を横断し、ストレチェンスクからウラジオストックまで旅をしました。これらの旅行を通じて、彼は各地の文化や社会情勢を深く理解し、独自の視点を養いました。1895年には『タイムズ』の通信員となり、1897年以降は北京に駐在。1900年の義和団の乱にも遭遇し、その模様を世界に伝えました。また、1905年には旅順での乃木希典入城式に列席し、『タイムズ』代表としてポーツマス会議にも参加するなど、重要な歴史的瞬間に立ち会いました。

1907年からは再び旅行を開始し、北京からフランス領ベトナム、そして1910年には北京から洛陽、新疆を経てパミール高原を越えトルキスタンまで横断しました。日本へは生涯で三度訪れています。1912年には『タイムズ』を辞任し、中華民国総統府の政治顧問に就任しました。1919年のパリ平和会議には中国代表団の一員として参加しましたが、その道中で病に倒れ、イギリスで58歳で亡くなりました。

モリソンの特筆すべき功績の一つは、中国滞在20年の間に収集した膨大な欧文文献コレクションです。このコレクションは「モリソン文庫」と呼ばれ、1917年に岩崎久弥に買い取られ、後の東洋文庫の基礎となりました。モリソンはジャーナリストとしてだけでなく、知的な探求者、文化の橋渡し役としても大きな足跡を残しました。

著書

モリソンは自身の冒険と探検の記録を著書として出版しています。

An Australian in China : being the narrative of a quiet journey across China to British Burma (1895年)

この著書は、中国を横断してイギリス領ビルマに至る旅を記録したものです。1985年にはデビッド・ボナビアによる序文付きで再版され、2008年にはイラスト版も出版されました。

『中国风情：风土』

中国の風俗や文化に関する著作で、1998年に中国語訳が出版されました。

An Australian in China - プロジェクト・グーテンベルク・オーストラリア eBook (2005年)

自身の著作が電子書籍としても公開されました。

参考文献

モリソンに関する研究書や伝記も多く出版されており、その多岐にわたる活動や業績を深く知ることができます。

ウッドハウス暎子『日露戦争を演出した男モリソン』(1988年/2004年 新潮文庫)
ウッドハウス暎子『北京燃ゆ：義和団事変とモリソン』(1989年)
ウッドハウス暎子『辛亥革命とG・E・モリソン：日中対決への道』(2010年)
シリル・パール 『北京のモリソン』 (2013年)
岡本隆司編、東洋文庫監修『G・E・モリソンと近代東アジア：東洋学の形成と東洋文庫の蔵書』(2017年)

脚注・出典

モリソンの生涯や業績については、さまざまな資料や研究論文で詳細に論じられています。それらの情報は、彼の多面的な人物像を理解する上で非常に重要です。

外部リンク

公益財団法人東洋文庫 沿革
モリソン、ジョージ・アーネスト（略歴・書誌データベース・肖像写真ほか）
* モリソンの世界旅行〈出典：榎一雄「(オーストラリア)ミッチェル図書館所蔵のモリソン文書について」『東洋文庫書報』1970〉

ジョージ・アーネスト・モリソンは、その卓越した行動力と知的好奇心によって、歴史に名を刻んだ偉大な人物です。彼の生涯は、私たちに冒険と探求の精神を教えてくれます。

もう一度検索