ジーザス&メリーチェイン

ジーザス&メリーチェイン (The Jesus and Mary Chain)

ジーザス&メリーチェイン（通称：ジザメリ、JAMC）は、1984年にジム（弟）とウィリアム（兄）のリード兄弟が中心となり、スコットランドで結成されたロックバンドです。彼らの音楽は、パンク、ノイズ、そしてポップの要素を融合させた独特のサウンドが特徴で、1980年代半ばから1990年代末にかけて6枚のアルバムをリリースし、ピクシーズをはじめとする後続のオルタナティブ・ロックバンドに大きな影響を与えました。1999年に一度解散状態となりましたが、2007年に活動を再開し、現在も精力的に活動を続けています。

バンドの歴史

結成からデビューまで

ジーザス&メリーチェインは、リード兄弟が失業保険で生活を送る傍ら、曲作りを始めたことがきっかけで誕生しました。1983年頃からデモ音源のレコーディングを開始し、1984年にはベーシストのダグラス・ハート、ドラマーのマレイ・ダーグリッシュが加入し、バンドとしての形を整えライブ活動を開始しました。結成当初、彼らの音楽に影響を与えたのは、ザ・ストゥージズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、シャングリラスといったアーティストでした。

1984年半ば、アラン・マッギーが主宰するクリエイション・レコーズとシングル一枚の契約を結び、同年11月にシングル『アップサイド・ダウン(Upside Down)』でレコードデビューを果たしました。ダーグリッシュが脱退後、プライマル・スクリームのフロントマンとなるボビー・ギレスピーがドラマーとして加入。1985年2月には『アップサイド・ダウン』が英国インディーチャートで1位を獲得し、NMEなどのメディアから注目を集める存在となりました。

初期のライブは、客席に背を向けて演奏する、短時間で切り上げる、観客との対話を拒絶するなど、悪名高いものでした。しばしば暴動も発生し、ザ・サン紙からは「新しいセックス・ピストルズ」と評されることもありました。しかし、アラン・マッギーはこのような悪評を巧みに利用し、バンドの知名度向上に貢献しました。

1980年代

1985年、バンドはブランコ・イ・ネグロと契約し、2月にシングル『Never Understand』をリリース。3月には「The Jesus and Mary Chain Riot」として知られる事件が起こります。ノース・ロンドン大学でのライブでは、キャパシティを超えるチケットが販売され、会場は混乱状態となりました。前座の煽りや、バンドの遅延、入場できない観客も多数いたことから、会場は殺気立っていました。開演から20分でバンドがステージを後にすると、客席からは物が投げ込まれ、暴動が発生しました。この事件の影響で、多くのライブがキャンセルとなりました。5月には、ブランコ・イ・ネグロから2枚目のシングル『You Trip Me Up』をリリース。B面には「Jesus Fuck」が収録予定でしたが、レコード会社の判断で「Just Out of Reach」に変更されました。

11月には、デビューアルバム『サイコキャンディ(Psychocandy)』を発表。「Just Like Honey」のドラムはザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」から借用されました。このアルバムは、2003年にローリングストーン誌のオールタイム・ベストアルバム500で268位に選ばれています。アルバム発表後、アメリカや日本を含むワールドツアーを実施。1986年7月には、ドラッグを連想させるジャケットが波紋を呼んだ『Some Candy Talking EP』をリリース。このEPを最後に、ボビー・ギレスピーはプライマル・スクリームでの活動に専念するためにバンドを脱退しました。

その後、リード兄弟はドラムマシンの導入により、2ndアルバム『ダークランズ(Darklands)』を制作し、1987年9月にリリース。前作のノイズサウンドから一転し、メロディアスで1960年代ポップサウンドに接近した作品となりました。1988年3月にはシングル『Sidewalking』、4月にはレアトラック集『キスは罠(Barbed Wire Kisses)』をリリース。1989年10月には、打ち込みを積極的に導入し、ギターノイズも随所に散りばめた3rdアルバム『オートマティック(Automatic)』をリリース。「Head On」は後にピクシーズによってカバーされました。

1990年代

1990年9月には「Rollercoaster EP」をリリースし、1992年3月には過激な歌詞が話題を呼んだ「Reverence」を先行シングルに、4thアルバム『ハニーズ・デッド(Honey's Dead)』をリリース。マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ダイナソーJr.、ブラーなどを前座に迎えた大規模なワールドツアー「Rollercoaster Tour」も行いました。翌1993年には2枚目のレアトラック集『サウンド・オブ・スピード(The Sound of Speed)』をリリース。このアルバムは、日本限定で発売されていたものに新曲を追加して再発売したものでした。

1994年8月には、ノイズサウンドを完全に排除し、全編アコースティック調の5thアルバム『ストーンド・アンド・ディスローンド(Stoned & Dethroned)』をリリース。この作品はイギリスだけでなく、アメリカのビルボードチャートにもランクインしました。しかし、1995年5月にパイロットシングル「I Hate Rock'N'Roll」をリリース後、ブランコ・イ・ネグロが閉鎖。1998年6月には、古巣クリエイションから『マンキ(Munki)』をリリースしましたが、制作中にリード兄弟の関係が悪化。ツアー中にウィリアムが脱退し、バンドは解散状態となりました。1999年にはクリエイションも解散しました。

解散後

解散後、兄ウィリアムはLazycameとして活動し、アルバムを2枚リリース。弟ジムは、ベン・ルーリーやニック・サンダーソンと共にフリーヒート（Freeheat）を結成し、アルバムを1枚リリースしました。また、兄弟の妹リンダのプロジェクト、シスター・ヴァニラ（Sister Vanilla）では、兄弟とベンが楽曲を提供しています。2002年には、プライマル・スクリームのアルバム『イーヴル・ヒート』に、ジムがリードボーカルを務める楽曲「Detroit」が収録されました。

再結成

2007年、コーチェラ・フェスティバルでのライブをきっかけに再結成を果たし、活動を再開しました。2008年にはサマーソニック出演のため来日。2017年には、19年ぶりとなる7thアルバム『ダメージ・アンド・ジョイ (Damage and Joy) 』をリリースしました。

ディスコグラフィ

アルバム

サイコキャンディ / Psychocandy (1985年): デビューアルバム。ノイズに覆われた作風は、シューゲイザーやオルタナティブ・ロックに大きな影響を与えました。「Never Understand」「You Trip Me Up」「Just Like Honey」がシングルカット。
ダークランズ / Darklands (1987年): ノイズを抑え、メロディアスなサウンドを全面に打ち出した2ndアルバム。UKアルバムチャートで5位を記録。「April Skies」「Happy When It Rains」「Darklands」がシングルカット。
オートマティック / Automatic (1989年): ダイナミックなサウンドが特徴の3rdアルバム。打ち込みも積極的に導入。「Blues From A Gun」「Head On」がシングルカット。
ハニーズ・デッド / Honey's Dead (1992年): 前作を踏襲しつつも、バンドの集大成的な作品。ダンサブルなリズムも取り入れられました。「Reverence」「Far Gone And Out」「Almost Gold」がシングルカット。
ストーンド・アンド・ディスローンド / Stoned & Dethroned (1994年): 全編アコースティックで統一された5thアルバム。マジー・スターのホープ・サンドヴァルが参加した「Sometime Always」や、ザ・ポーグスのシェイン・マガウアンが参加した「God Help Me」を収録。「Sometime Always」「Come On」がシングルカット。
マンキ / Munki (1998年): クリエイション・レコードからリリースされた6thアルバム。ホープ・サンドヴァルが参加した「Perfume」を収録。「Cracking Up」「I Love Rock 'n' Roll」がシングルカット。
ダメージ・アンド・ジョイ / Damage and Joy (2017年): 19年ぶりの7thアルバム。キリング・ジョークのユースがプロデュース。
Glasgow Eyes (2024年)

編集盤

キスは罠 / Barbed Wire Kisses (1988年)
サウンド・オブ・スピード / The Sound of Speed (1993年)
ヘイト・ロックンロール / Hate Rock 'N' Roll (1995年)
コンプリート・ジョン・ピール・セッション / The Complete John Peel Sessions (2000年)
21シングルズ / 21 Singles (2002年)
ライブ・イン・コンサート / BBC Live in Concert (2003年)
The Power of Negative Thinking (2008年)
ファイヴ・オリジナル・アルバムズ ＜完全生産限定盤＞ (2010年)

使用された楽曲

映画『ロスト・イン・トランスレーション』: 「Just Like Honey」
映画『恋しくて』: 「The Hardest Walk」
映画『クロウ/飛翔伝説|クロウ_飛翔伝説』: 「Snakedriver」
インディ系の映画監督グレッグ・アラキ作品：多数
シボレーのCMソング: 「Happy When It Rains」
英ビールメイカーのキャンペーンソング: 「Heat」

トリビア

マジー・スターのボーカル、ホープ・サンドヴァルとウィリアムは、過去に恋人関係にあり、共同で作品を制作。
映画『ハイ・フィデリティ』で、レコード屋の店員が客に「Psychocandy」を勧めるシーン。
デスキャブ・フォー・キューティーの楽曲「We Looked Like Giants」に「Do you remember The JAMC」という歌詞。
ジミー・イート・ワールドの楽曲「Authority Song」に「The DJ never has it, JAMC Automatic」という歌詞。
ピクシーズが1991年のアルバムで「Head On」をカバー。

脚注

関連項目

シューゲイザー

外部リンク

Official website
ワーナーミュージック・ジャパン - ジーザス&メリーチェイン

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