スナヅル

スナヅル（砂蔓）

スナヅル（学名：Cassytha filiformis）は、クスノキ科スナヅル属に分類されるつる性の寄生植物です。日本ではシマネナシカズラとも呼ばれます。しばしば混同されるネナシカズラはヒルガオ科の植物であり、スナヅルとは異なる種類です。スナヅルは、その形態や遺伝的な特徴から、日本に固有の種として独立させるべきだという意見もあります。

分布と生育環境

スナヅルは、日本では小笠原諸島、九州南部、南西諸島にかけて分布しています。四国でも生育が確認されており、比較的温暖な地域を好むと考えられます。国外では、台湾、中国南部、南アメリカ、中央アメリカ、ハワイ、フロリダなど、熱帯から亜熱帯にかけて広く分布しています。主に海岸の日当たりの良い砂浜に生息し、グンバイヒルガオやハマゴウといった海浜植物に寄生します。

形態

スナヅルは、長さ3〜5mに及ぶつる性の植物です。茎は直径1〜2mm程度で、地を這うように伸び、緑色から黄褐色をしています。全体に毛がなく、硬い質感を持っています。葉は鱗片状で小さく、目立ちません。全草に葉緑体を含むため、光合成も行います。花は、長さ3〜4cmの穂状花序をなし、先端に直径3mmほどの淡黄色の小さな花を咲かせます。果実は直径6〜7mmの球形核果で、最初は緑色から淡黄色をしていますが、熟すと褐色になり、最終的には黒色の殻に包まれた種子を露出させます。

生態と群落

南西諸島では、海岸でごく普通に見られます。砂浜を覆うように這い回ったり、岩場の植物に絡みつき垂れ下がったりする様子が観察されます。植物社会学的には、沖縄の海岸において、クロイワザサとスナヅルが共に生育する群落が確認されています。この群落は、海岸側のハマニガナ - ハマボウフウ群落と内陸側のクサトベラ群落の間に位置します。群落名に寄生植物の名前が含まれるのは珍しい例です。

人間との関わり

海外では、スナヅルが果樹や花卉に寄生して収穫量を減少させる事例が報告されており、問題視されています。沖縄県でもパイナップルなどへの被害が懸念されています。一方で、スナヅルはカッシフィリンなどのアルカロイドを含み、台湾やアフリカでは薬用植物として利用されています。茎を切るとクスノキのような香りがすることも特徴です。

近縁種

日本には、スナヅルを含めて3種のスナヅル属植物が生育しています。スナヅルは、その中でも茎が最も太く、分布域も広い種類です。

保護状況

スナヅルは、生育地の地方自治体によって作成されたレッドデータブックに掲載されており、鹿児島県では準絶滅危惧種に指定されています。

参考文献

大野照好監修・片野田逸郎著 『琉球弧・野山の花 from AMAMI』、株式会社南方新社、1999年。
島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧』 九州大学出版会、1997年。
多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第4巻 海辺の植物とシダ植物』 新星図書出版、1979年。

外部リンク

スナヅル
スナヅルとオーストラリア産のスナヅル属
スナヅル - 日本新薬

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