スナバコノキ

スナバコノキ：爆発する果実を持つ有毒な高木

スナバコノキ（Hura crepitans）は、トウダイグサ科フラ属に属する高木です。中南米の熱帯地域を原産とし、カリブ海諸島にも分布しています。その奇妙な生態から、「サルが登れない木」「毒の木」「ダイナマイトの木」など、様々な異名を持っています。

名前と由来

「スナバコノキ」という名前は、18世紀初頭に、羽根ペンで文字を書いた後にインクを乾かすために使用された砂を入れる箱（砂箱）として、この木が利用されていたことに由来します。この用途から、その名が付けられました。

分布

原産地は熱帯アメリカですが、アフリカ（ガンビア、ギニア、ベナン、中央アフリカ共和国）や北アメリカ（フロリダ州）にも帰化しています。

形態と生態

スナバコノキは、樹高50メートル以上に達する高木です。樹皮は円錐状の太くて短いトゲで覆われています。葉は鮮やかな緑色のハート型をしています。雌雄異花であり、深紅色の小さな花が多数集まって咲きます。

爆発する果実

スナバコノキの最大の特徴は、その果実です。カボチャのような形をした果実は、長さ3-5cm、直径5-8cmほど。内部は16室前後に分かれており、それぞれの部屋に種子が詰まっています。果実が完熟して乾燥すると、オリーブグリーンから焦げ茶色に変色し、乾燥と収縮によって内部に大きな張力が蓄積されます。そして、気温が高く乾燥した日に突然破裂し、大きな爆発音とともに種子を高速でまき散らします。

その威力は凄まじく、種子は秒速70m（時速240km）以上で飛び散ると言われています。種子は空気抵抗を考慮した角度で放出され、フリスビーのように回転しながら最大45mまで上昇し、遠くまで運ばれるように最適化されています。

アリとの共生

果実が熟し始めると、小さなアリが集団で果実の亀裂から侵入し、内部を巣として利用することが知られています。アリは心皮の隙間で子育てを行います。

有毒な樹液と種子

スナバコノキの乳白色の樹液と種子には毒性があります。誤って摂取すると、中毒症状を引き起こす可能性があります。

利用

カリブ族は、スナバコノキの果実の毒を毒矢の原料として利用し、魚を捕るための狩猟に用いていました。また、殺魚成分であるフラトキシン（huratoxin）が同定されており、これはプロテインキナーゼC活性化剤として知られています。

属

フラ属（Hura）は2種からなり、スナバコノキと Hura polyandra Baill.（メキシコから中米およびエクアドルにかけて分布）が属しています。

スナバコノキは、そのユニークな生態と有毒性から、熱帯の自然を象徴する植物の一つと言えるでしょう。観察する際には、十分な注意が必要です。

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