スパルティ

ギリシャの県都スパルタ：古代と現代の融合

スパルタは、ギリシャ共和国ペロポネソス地方ラコニア県に位置する都市であり、同県の県都でもあります。古代ギリシャで名を馳せたスパルタの地に位置しますが、現在私たちが目にする都市は、19世紀に建設された近代的な都市です。 そのため、現代の都市も「スパルタ」と呼ばれ、古代の歴史と現代の生活が共存する独特の雰囲気を醸し出しています。

地理：タイゲトス山脈とエヴロタス川に囲まれた都市

スパルタ市街は、ラコニア県北西部の内陸盆地、エヴロタス川の西岸に位置しています。西側には雄大なタイゲトス山脈がそびえ立ち、自然豊かな景観を形成しています。2011年の地方自治体改革により、周辺6自治体と合併し、その面積は大幅に拡大。タイゲトス山脈からパルノナス山脈にまで及ぶ、広大な市域を持つようになりました。北と東はアルカディア県、西はメッシニア県と接し、主要都市であるトリポリやカラマタとは幹線道路で結ばれています。スパルタがある盆地は、タイゲトス山脈とパルノナス山脈に挟まれた地溝帯であることも、この地の地理的特徴を際立たせています。

スパルタ市域には、スパルタ（14,817人）、マグラ（1,475人）、クシロカンビ（1,001人）などの人口1,000人以上の集落が複数存在します（2001年国勢調査）。また、ユネスコ世界遺産に登録されているミストラスの中世都市遺跡も、スパルタ市域に含まれています。ミストラスは、スパルタ市街の西約5kmに位置し、歴史的な魅力を放つ重要な観光地です。

歴史：古代から現代への変遷

スパルタの歴史は古代ギリシャへと遡ります。古代ギリシャ、古代ローマ時代を通じて栄えたスパルタは、幾度かの破壊と再建を繰り返しました。西ゴート族のアラリックによる破壊や、その後の中世の出来事を通して、その歴史は複雑に織りなされています。10世紀にはラケデモンと呼ばれ、府主教座が置かれるなど、ラコニア地方の中心地としての地位を維持しました。13世紀には、アカイア公国によってミストラスが城砦として建設され、やがてこの地域の中心はミストラスに移っていきました。オスマン帝国時代もミストラスは繁栄を続けましたが、古代スパルタの故地には小さな村落が残るのみとなっていました。

ギリシャ独立戦争後の1834年、オソン1世はミストラスの再建を断念し、古代スパルタの遺跡近くに新たな都市の建設を決定しました。公園を整備した美しい都市として設計された新たなスパルタには、ミストラスから多くの住民と建材が移り住みました。ギリシャ王政時代には、「スパルタ公」は王太子の称号として用いられました。

社会：保守的な都市と多様な産業

スパルタは、ギリシャの中でも特に保守的な都市として知られています。王政廃止後も、左派の市長が就任した例はほとんどないと言われています。産業面では、スパルタを中心とするエヴロタス谷地域で農業が盛んであり、柑橘類やオリーブなどが生産されています。また、ペロポネソス大学の人間運動科学部も存在し、教育面でも重要な役割を果たしています。

行政区画と交通：広範囲をカバーする行政と交通網

スパルタ市は、ラコニア県を構成する5つの基礎自治体の1つです。2010年の地方制度改革により、旧スパルタ市を含む7自治体が合併し、現在の広大な市域が形成されました。交通面では、南北方向にGR-37号線（GR-39号線と重複）が走り、トリポリとギティオを結んでいます。西へはGR-82号線が伸び、カラマタとを結んでいます。また、市域南部には軍用のスパルティ飛行場があり、最寄りの民間空港はカラマタ国際空港です。

文化と観光：古代と中世の遺産

スパルタには、古代スパルタとミストラスの遺産を展示する考古学博物館、レオニダス王の墓、古代スパルタ遺跡など、多くの観光地があります。特にミストラスは、ユネスコの世界遺産として登録されており、スパルタの豊かな歴史を物語る重要な観光資源となっています。また、スパルタ市は、レバノン、セルビア、アメリカ合衆国、オーストラリア、ハンガリー、そして日本の福島県棚倉町など、世界各地の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

スパルタは、古代の歴史と現代の生活が共存する、独特の魅力を持つ都市です。歴史遺産と豊かな自然に囲まれたこの都市は、訪れる人々に忘れられない思い出を提供してくれるでしょう。

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