アルカディア県

アルカディア県：理想郷の歴史と自然

アルカディア県は、ギリシャのペロポネソス半島中部に位置する行政区です。県都トリポリは、ペロポネソス地方の首府でもあり、アルカディア県はペロポネソス半島で最大の面積を誇ります。その名は古代ギリシャの「理想郷」アルカディアに由来し、豊かな自然と歴史的な背景を持つ地域です。

地理

アルカディア県は、ペロポネソス半島の中央部から東部にかけて広がり、東南部はエーゲ海に面しています。半島内のすべての県と接しており、北東にコリンティア県とアルゴリダ県、南にラコニア県、南西にメッシニア県、西にイリア県、北西にアハイア県があります。地形は山々に囲まれた高原地帯が中心で、北部にはエリマントス山脈やキリニ山が連なり、南部にはパルノン山脈やタイゲトス山脈の一部が広がっています。ペロポネソス半島で最長のアルフェイオス川は、この地に源を発しています。

気候

気候は地域によって異なり、東部と南部、低地部、中央部では、夏は猛暑で冬は温暖です。一方、標高の高い北部や西部では、冬に降雪が見られます。

主要都市

県最大の都市は、県北西部に位置する県都トリポリで、約2万6000人が暮らしています。その他、人口3000人以上の都市には、メガロポリ、レオニディオがあります。

歴史

古代、アルカディアは周囲から隔絶された地域であったため、避難場所としての役割を果たしました。ドーリア人の侵入後も、この地ではミケーネ方言が生き残り、アルカド＝キプロス方言へと発展しました。ヘロドトスは、アルカディアの住民が先住民であるペラスゴイ人であると記しています。ペロポネソス戦争後、アルカディアはスパルタの支配下に入りましたが、後にアルカディア同盟を結成し、ペロポネソスの政治において重要な役割を果たしました。

中世には東ローマ帝国領となり、その後アカイア公国の一部となりました。16世紀にはオスマン帝国の支配下に入りましたが、ギリシャ独立戦争では主要な舞台の一つとなりました。独立後、アルカディアの経済は発展しましたが、20世紀には移民により人口が半減しました。第二次世界大戦やギリシャ内戦で被害を受けましたが、戦後に再建されました。

社会と産業

アルカディア県では、農業が盛んで、ジャガイモ、オリーブ、牧畜などが主な産業です。メガロポリには、ギリシャ南部全土に電力を供給する大規模な火力発電所があります。また、この地域は鉱業も盛んです。レオニディオやティロスを中心とした地域では、古代ギリシャ語の方言であるツァコニア語が使用されています。

行政区画

アルカディア県は複数の自治体（ディモス）から構成されています。2010年のカリクラティス改革以前は、23の基礎自治体からなっていましたが、改革後は新自治体を構成する行政区となっています。

交通

アルカディア県は、ペロポネソス半島の交通の要所であり、主要な幹線道路がトリポリを通過しています。国道7号線（欧州自動車道路E65号線）は、県内を南北に走り、県南西部で終点を迎えます。また、A7号線（モレアス自動車道）もトリポリを経由し、アテネやカラマタと接続しています。鉄道は、ペロポネソス狭軌網が県内を走っています。

文化と観光

アルカディアは、ギリシャ神話にも登場し、ゼウスの誕生地の一つとされるリュカイオン山があります。また、素朴で幸福な生活を描いたパストラル（田園詩）の舞台として知られ、「アルカディア」は理想郷を意味する言葉となりました。ウェルギリウスの田園詩やヤコポ・サンナツァロの絵画は、このイメージを決定づけました。

スポーツ

サッカーでは、アステラス・トリポリスFCがトリポリを本拠地としています。また、レオニディオにも地元サッカークラブがあります。

著名な出身者

著名な出身者には、詩人のコスタス・カリオタキス、政治家のグリゴリス・ランブラキス、映画監督のコスタ＝ガヴラス、マラソン選手のヤニス・クロスなどがいます。

外部リンク

アルカディア県議会
パトラ大学
トリポリ市公式サイト
ティロス市公式サイト

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