スラオシャ

スラオシャ（Sraosha）は、ゾロアスター教において下級神、または天使に相当するヤザタの一柱であり、アムシャ・スプンタの一員と見なされることもあります。その名は「聞くこと」を意味し、「聴取」と「従順」を司る神として崇められています。また、Srosh、Sirushi、Seroshなど、複数の綴りでも知られています。

スラオシャは、ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーの耳として捉えられ、アンラ・マンユ（悪神）の手先によって苦しめられる人々の叫びを聞き届けるとされています。特に、怒りと暴力の悪魔アエーシュマとは敵対関係にあり、太陽が沈んだ後、地上に降りてきてはアエーシュマと戦うと伝えられています。

ゾロアスター教の伝承においては、スラオシャは全ての死者の魂が渡らねばならない「判決の橋」の守護者の一人としての役割も担っています。ミスラ、ラシュヌと共に、死者の魂を裁く三柱の神性として、その重要な地位を確立しています。この「判決の橋」は、死後の世界における魂の運命を決定づける場所であり、スラオシャは正義と慈悲をもって審判を行うと信じられています。

スラオシャは元々、ペルシャ神話において主神の耳としての役割を持っていましたが、イスラム教がペルシアを征服し、ゾロアスター教が衰退した後も、その存在は完全に消滅することはありませんでした。イスラム教の世界では、スラオシャはアッラーフの使者スルシュ（Surush）として名を残し、その影響力を保持し続けました。

スラオシャは、ゾロアスター教における重要な神格であり、その「聴取」と「従順」の象徴は、人々の信仰生活において、非常に大きな意味を持っています。また、悪と戦い、死者の魂を導く存在としても、畏敬の念を集めています。

参考文献

アーサー・コッテル『世界神話辞典』左近司祥子他訳、柏書房、1993年。ISBN 4-7601-0922-6。
グスタフ・ディヴィッドスン『天使辞典』吉永進一訳、創元社、2004年。ISBN 4-422-20229-4。

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