ヤザタ

ヤザタ：ゾロアスター教における中級の善神

ヤザタ（Yazata）は、ゾロアスター教において崇拝される、中級の善なる神々の総称です。その名はアヴェスター語で「崇められるに値する者」を意味し、パフラヴィー語ではヤズド（Yazd）と呼ばれます。これらの神々は、ゾロアスター教の神学体系において、最高神アフラ・マズダーの直下にあるアムシャ・スプンタ（不滅の聖者）よりも下位に位置づけられています。

インド・イラン共通の起源

ヤザタの多くは、インド・イラン共通時代に存在した多神教に起源を持つ自然神です。この事実は、ゾロアスター教が古い宗教的伝統を基盤として発展したことを示唆しています。彼らは、自然現象や抽象的な概念を神格化したものであり、太陽、水、風などの自然の力を司るとされています。

人間との関係

ヤザタは常に人々に祀られることを望んでおり、祀られることによって人々に恩恵を与えると信じられています。この考え方は、インドのデーヴァ（神々）との類似性を示しており、ヤザタがゾロアスター教に取り入れられた後も、古い多神教の性格を色濃く残していることを示しています。

主なヤザタ

ヤザタの中には、特に重要な役割を果たす神々が存在します。以下に、主なヤザタをいくつか紹介します。

アータル（Atar）: 火を神格化した神であり、清浄と正義を象徴します。ゾロアスター教の儀式において重要な役割を果たし、祭壇に火を焚くことで神聖な空間を作り出します。

アープ（Ap）: 水を神格化した女神で、生命の源泉と純粋さを象徴します。川や泉などの水域を守護し、豊穣と繁栄をもたらすとされます。

ウルスラグナ（Verethragna）: 戦勝の神であり、勇敢さと勝利を象徴します。困難を克服する力を与え、敵を打ち破るための助けとなると信じられています。

スラオシャ（Sraosha）: 服従と信仰の神であり、正しい行いを促します。道徳的な秩序を守り、人々に神の意志に従うよう導きます。

ティシュトリヤ（Tishtrya）: 雨を司る神であり、干ばつを打ち破り豊穣をもたらします。天候の安定を保ち、農耕生活にとって重要な役割を担います。

ハオマ（Haoma）: 聖なる植物であり、神聖な飲料の名前でもあります。この飲料は儀式で使用され、信者に活力と霊的な啓示を与えるとされます。

フワル・フシャエータ（Hvare-khshaeta）: 太陽を神格化した神であり、光と生命の源を象徴します。昼間世界を照らし、善の力を増幅させると信じられています。

ミスラ（Mithra）: 契約と友情を司る神であり、正義と真実を象徴します。約束を守ることを重視し、不正行為を罰するとされます。

ラシュヌ（Rashnu）: 正義の神であり、裁判と裁きを司ります。人々の行いを監視し、公正な裁きを下すとされます。

アナーヒター（Anahita）: 水と豊穣を司る女神で、純粋さと生命力を象徴します。川や泉などの水域を司り、人々に恵みをもたらすとされます。

これらのヤザタは、ゾロアスター教の神話と儀式において重要な役割を果たし、信者たちの信仰生活を支えています。

まとめ

ヤザタは、ゾロアスター教における中級の善神であり、自然現象や抽象的な概念を神格化した存在です。彼らは人間によって祀られることを望み、それによって人々に恩恵を与えると考えられています。これらの神々は、古代インド・イランの多神教に起源を持ち、ゾロアスター教の中で独自の役割を担っています。

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