スラヴャンスクの戦い

スラヴャンスクの戦い（2014年4月12日～7月5日）は、ウクライナ東部のドネツィク州スラヴャンスクで、ウクライナ軍と親ロシア派分離主義勢力の間で行われた戦闘です。この戦いは、2014年のウクライナ紛争における最初の大規模な交戦であり、その後の紛争激化の先駆けとなりました。

戦いの背景

2014年、ウクライナでは親ロシア派の不安が高まっていました。4月12日、武装した覆面の男たちがスラヴャンスク市庁舎を占拠し、ドネツク人民共和国の旗を掲げました。これに対し、ウクライナ政府は対テロ作戦を開始し、スラヴャンスクを奪還しようとしました。

戦闘の経過

政府庁舎の占拠

4月12日、イーゴリ・ギルキン率いる民兵グループがスラヴャンスクの行政庁舎などを占拠。警察の武器庫を襲撃し、多くの武器を奪いました。市長も当初は武装勢力を支持する姿勢を示しましたが、後に逮捕されました。

政府の対応

4月13日、ウクライナ政府は対テロ作戦を開始し、武装勢力に武装解除を要求。しかし、分離主義勢力はこれを拒否し、ウクライナ軍との間で衝突が始まりました。4月14日には、スラヴャンスクの重要な政府庁舎や関連地域が親ロシア派に占拠されました。

最初の攻撃

ウクライナ軍は4月15日にクラマトルスクの空軍基地を奪回しようと攻撃を開始。空港を巡る激しい戦闘が行われましたが、ウクライナ軍が奪回に成功しました。しかし、4月16日には、ウクライナ軍の装甲車が分離主義勢力に奪取されるという事態も発生しました。

復活祭の停戦

4月19日、一時的な軍事行動の停止が合意されましたが、その間にも分離主義勢力によるロマ族への迫害やジャーナリストの誘拐が発生しました。4月20日には、右派セクターがテレビ塔の破壊工作を試みたことで、戦闘が再開されました。

軍事作戦の再開

4月23日、ウクライナ軍はスビャトヒルスク近くの都市から分離主義勢力を排除。ポノマレフはウクライナ大統領選挙を阻止すると宣言し、人質をちらつかせました。4月24日には、ウクライナ軍が町周辺の検問所を奪取しましたが、ロシア軍の侵攻の脅威が増大したため、作戦は中止されました。

政府による封鎖

ウクライナ政府はスラヴャンスクを封鎖し、増援を阻止しようとしました。分離主義勢力による住民への暴行や強盗も報告されるようになりました。4月28日には、ロシア軍と繋がりのある自称「副市長」が逮捕されています。

2回目の攻撃

5月2日、ウクライナ軍はスラヴャンスク奪回のため大規模な作戦を開始。ヘリコプターの撃墜や、激しい戦闘が報告されました。分離主義勢力はウクライナ軍の検問所を確保したと発表し、民兵の死傷者が出たと主張しました。一方、ウクライナ軍も多数の死傷者を出し、ヘリコプターが撃墜されています。

住民投票後

5月12日、ドネツク州の住民投票後、イーゴリ・ギルキンは自身を「最高司令官」と宣言。5月13日には、分離主義勢力によるウクライナ軍輸送車列への攻撃で7名の空挺兵が死亡。5月19日と20日には、ウクライナ軍陣地が迫撃砲攻撃を受けました。5月27日、分離主義勢力内部で内紛が起こり、略奪を行ったとされる兵士が処刑されました。

5月から6月にかけて、ウクライナ軍はヘリコプターや固定翼機でスラヴャンスクに攻撃を仕掛けましたが、多くの損害を出しました。6月10日には、ポノマレフが解任・逮捕されています。6月24日には、停戦合意翌日に輸送ヘリコプターが撃墜されました。6月末には、ポロシェンコ大統領が停戦の終了を宣言し、新たな攻撃を開始。テレビ塔が砲撃で倒壊しました。

分離主義勢力の撤退後

7月5日、分離主義勢力はスラヴャンスクから撤退し、ウクライナ軍が町を奪還しました。分離主義勢力は撤退時に戦車や装甲車を失い、人質が解放されました。その後、政府軍は近隣の都市も奪還しました。7月11日、スラヴャンスク市長は逮捕され、7月24日には集団墓地が発見されました。

人質と誘拐

紛争中、多くの人が人質として誘拐されました。ジャーナリストや公人、さらには国際軍事査察官も含まれていました。

著名な誘拐事件

ウォロディムィル・ルィバック：ホルリフカ市議会議員、誘拐後に殺害された。
サイモン・オストロフスキー：Vice Newsのジャーナリスト、誘拐後解放された。
国際軍事査察官：欧州安全保障協力機構の軍事査察員が拘束されたが、後に解放。