スリランカのイスラム教

スリランカのイスラム教について

スリランカにおけるイスラム教は、国の総人口の約9.72%を占め、2012年の国勢調査では約196万人が信仰していることが確認されました。ムスリム共同体は主にスリランカ系ムーア人、インド系ムスリム、マレー人から成り、それぞれが独自の歴史や伝統を持っています。特にスリランカ系ムーア人は、一般に「ムスリム」という呼称で民族集団を示す際に使用されることが多いです。

イスラム教の伝来と発展

8世紀、アラブの商人たちがスリランカに訪れることでイスラム教は広まり始めました。最初に改宗したのは、アラブ商人自身や彼らと結婚した現地の女性たちでした。15世紀にはアラブ系商人がインド洋沿岸の貿易を掌握し、その結果、多くの商人がセイロン島に定住しました。しかし、16世紀にポルトガル人がスリランカにやって来ると、多くのスリランカ系ムーア人は迫害されることになりました。シンハラの王であるキャンディのセナラットは、ムスリムを高地や東部に避難させました。

18世紀から19世紀にかけて、ジャワ及びマレーシアから移住してきたムスリムもスリランカのムスリム人口を増やし、彼らはスリランカ系ムーア人のイスラム教の伝統を受け継ぎながら独自の文化も形成しました。また、19世紀から20世紀にかけて、インドからのムスリムも到来し、スリランカにおけるイスラム教の成長に寄与しました。

スリランカ内戦とムスリム

1983年から2009年まで継続したスリランカ内戦において、ムスリムはLTTE（タミル・イーラム解放のトラ）による攻撃の対象となり、多くが殺害され、故郷を追われました。特に1990年10月には、LTTEによって北部から強制的に追放された95,000人以上のムスリムが民族浄化の一環として移動を余儀なくされました。最終的にこれらの出来事はムスリムの間に強いトラウマを残しました。

内戦の終息以降、ムスリムの復興が進み、北部州との往来は活発化しています。特に、ジャフナでは約2,000人のムスリムが居住しており、再開されたオスマニヤ大学には60名の学生が在籍するなど、交流が再び生まれています。

スリランカ系ムーア人の特徴

スリランカ系ムーア人は総人口の約9.2%を占め、主にスンナ派のシャーフィー学派に属します。彼らの起源は、7世紀から8世紀にスリランカに定住したアラブ系商人に由来しています。地域によって言語や文化が異なり、貿易や農業を営む傍ら南アジアの文化を取り入れています。

教育も重視されており、国内には749のムスリム学校と205のマドラサが存在します。近年、初の総合的なイスラム教教育を持つ学校も開設され、ムスリム系専門職が全国平均を上回るほどに成長しています。経済的な機会が限られているため、多くのムスリムは海外に移住し、働き口を求めることがあります。これは「頭脳流出」とも言われています。

東海岸と西海岸のムーア人

東海岸では、ムスリムが主に農業と漁業に従事しており、母系社会ですがシャリーア法が重視されています。一方、西海岸のムーア人は商人や専門職が多く、父系社会を維持しています。これらのコミュニティは、アラブの文化的伝統を反映しつつ、地域の風習も取り入れています。

その他のムスリムコミュニティ

スリランカには、インドからの移民の子孫やムスリムも存在し、それぞれ異なる背景を持っています。特に、メモン人はパキスタン南部に起源を持ち、ダウーディ・ボフラやホージャはインド北西部から渡来したシーア派のムスリムです。

このように、スリランカのイスラム教は歴史的にも文化的にも多様で、現代においても多くの挑戦とともに発展を続けているのです。

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