スロヴェネ族

スロヴェネ族：北東ルーシの先住民族

スロヴェネ族は、第一千年紀の後半に東スラヴ民族の中で最も北に定住した部族であり、イリメニ湖周辺からモロガ川上流域にかけて居住していました。彼らの歴史は、伝説と考古学的証拠によって部分的に再構築されています。

伝説に彩られた歴史

9世紀までのスロヴェネ族に関する情報は、主に伝説として伝えられています。15世紀末から17世紀にかけて収録された伝説によると、スロヴェネ族とその公ルスは、紀元元年よりもずっと前にスロヴェンスク（ノヴゴロド）とルーサを建設したとされています。

『イオアキム年代記』には、スロヴェネ族の公が偉大な都市を建設し、その政権が公ヴァンダルの子孫によって9世紀まで継承されたと記されています。ヴァンダルの息子であるイズボル、ウラジーミル、ストルポスビャトはそれぞれ都市を領有し、その都市は彼らの名にちなんで名付けられました。9世紀前半にはブリヴォイという公がヴァリャーグとの戦いに敗れ、ビャルムへ逃れ、ヴァリャーグがスロヴェネ族に貢税を課したと伝えられています。その後、スロヴェネ族はゴストムィスルを公に迎え、彼のもとで周辺地域に貢税を課し、スロヴェネ族の地を長く統治したとされています。

『原初年代記』には、860年代から870年代にかけてスロヴェネ族を含む諸部族の間で内戦が起きていたことが記録されています。この内戦は、しばしば「公の招聘伝説」と関連付けられます。伝説によれば、スロヴェネ族、クリヴィチ族、チュヂ族、ヴェシ族は内戦を収めるためにヴァリャーグに公の派遣を要請し、リューリクが公として迎えられました。このリューリクは、後のリューリク朝の祖とされています。

考古学的検証

考古学者は、イリメニ湖周辺の5世紀から7世紀にかけての考古学的文化遺跡であるノヴゴロド丘群文化をスロヴェネ族によるものとみなしています。ヴォルホフ川河口付近のリュブシャ要塞は、700年頃にスロヴェネ族によってフィン・ウゴル系民族の木製の要塞跡に建設されたものであり、770年代にはラドガ（現スタラヤ・ラドガ）に植民し、840年代までフィン系の部族との交易のためにガラス製のビーズを生産していました。780年代から830年代にかけては、ヴォルガ川を介して他民族との国際的な毛皮交易を行っていたことも、アラブの貨幣ディルハムの出土によって示唆されています。また、プロイセン、ポメラニア地方や、リューゲン島、ゴットランド島などの環バルト海地域との関係も確認されています。

830年代には、ラドガ湖周辺がヴァリャーグ（おそらくスウェーデン人）の襲撃を受け、その後バルト起源の様々な事物が出現しました。850年代には、ゴットランド島やスウェーデン地方との交易が増加しました。

リュブシャ要塞やラドガの他に、8世紀から9世紀初頭にかけてヴォルホフ川の水源地近くに建設された要塞化された都市（リューリクの城址）は、ノヴゴロドの前身となった都市であると考えられています。イリメニ湖の南に位置するルーサの建設は、集落跡の発見された地層から、遅くとも9世紀末のことであると推定されています。10世紀前半には、中世ルーシの政治・文化・交易の中心都市の1つとなるノヴゴロドが登場しました。

V.セドフの研究によれば、7世紀から8世紀にかけてのスロヴェネ族の居住地域では、気候の温暖化に伴い、隣接するクリヴィチ族やフィン・ウゴル民族よりも早く農耕が発展したと考えられています。集落の分布、人口増加、ソプカ（円墳）の分布、上流階級層の墓地の登場、貿易の発展、そしてリュブシャ要塞と都市（リューリクの城址）の登場は、スロヴェネ族の社会・経済の発展を示すものです。また、V.セドフは、イリメニ湖南部やロヴァチ川流域におけるスロヴェネ族とクリヴィチ族の同化の過程では、スロヴェネ族の文化や伝統が優勢であったことを指摘しています。

伝説上の公については、V.タチシチェフはウラジーミルの時代を6世紀のこととしていますが、考古学的には6世紀のスロヴェネ族の公国の証拠は見つかっていません。しかし、5世紀から7世紀の遺跡から、イリメニ湖南部やヴォルガ川上流域への最初のスラヴ民族の移住があったことが示唆されています。5世紀から7世紀のヴォルホフ川流域におけるスロヴェネ族の生活痕を示す遺跡は発見されていません。イズボル、ウラジーミル、ストルポスビャトの三兄弟の公の伝説は、キエフの創設に関するキー、シチェク、ホリフの三兄弟の伝説や、リューリク朝の祖リューリクとシネウス、トルヴォルの三兄弟の伝説など、ルーシにおける三兄弟の登場する伝説に類似しています。ゴストムィスルについては、歴史家は、ゴストムィスルの伝説は西スラヴ民族を起源とするものであると指摘しています。バルト地方のスラヴ人（ヴェンド人）の中には、844年に死亡したゴストムィスルという王がいたことが知られています。

ノヴゴロドへの統合

10世紀にノヴゴロドが建設されると、スロヴェネ族は「ノヴゴロドの人々」と呼ばれるようになり、その土地はノヴゴロド・ゼムリャーの主要な部分となりました。彼らの文化と伝統は、その後のノヴゴロドの発展に大きな影響を与えたと考えられています。

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