スヴェルドロフ級巡洋艦

スヴェルドロフ級巡洋艦

スヴェルドロフ級巡洋艦は、ソビエト連邦海軍が運用した軽巡洋艦の艦級で、ソ連海軍での正式名称は68bis型軽巡洋艦です。この艦級は、ソ連海軍が最後に建造した砲装型巡洋艦であり、その計画は政治的な混乱の中で度々変更されました。しかし、最終的には1952年から1955年にかけて14隻が建造され、ソ連海軍の重要な戦力として運用されました。1960年代には1隻が退役し、1隻がインドネシア海軍に移譲されましたが、残りの艦は1992年までソ連海軍で運用されました。

来歴

スヴェルドロフ級の起源は、チャパエフ級（68型）の発展型として1939年に開始された開発計画に遡ります。しかし、1941年の独ソ戦勃発により計画は一時中断されました。大戦終結後、ソ連海軍はスターリングラード級重巡洋艦（82型）、チャパエフ級軽巡洋艦（68型）、本級（68bis型）、65型軽巡洋艦の整備を計画しましたが、ヨシフ・スターリン書記長の意向により、65型の開発は中止され、82型重巡洋艦と本級の建造が優先されました。これにより、本級の建造数は当初の7隻から25隻に増加しました。

その後も、アメリカ海軍の203mm砲搭載巡洋艦に対抗するため、220mm砲搭載の66型中巡洋艦が計画されましたが、資源不足により1953年に中止されるなど、巡洋艦戦力の整備方針は二転三転しました。1947年1月には、船体の製造に新しい溶接技術を導入し、152mm砲塔を遠隔操作可能にする設計が決定しました。1948年には「ジェルジンスキー」が起工されましたが、これは溶接技術のテストベッドとしての意味合いが強く、その経験をもとに、1949年10月にはネームシップとなる「スヴェルドロフ」が起工されました。

設計・装備

船体はチャパエフ級の設計を踏襲し、長船首楼型とされましたが、ソ連軍艦として初の全溶接構造を採用しました。高張力鋼であるSHL-4型鋼が用いられましたが、「ジェルジンスキー」の建造段階では質が悪く、後に製造方法を改良して船底や舷側を張り替えました。溶接技術の導入により、船台上での建造期間は40％短縮され、船殻重量も軽量化されました。主機関はチャパエフ級と同じものが採用され、シフト配置も同様でした。

主砲は、チャパエフ級と同様にB-38型58口径152mm砲を3連装砲塔に搭載しました。この砲塔は、チャパエフ級のMk.5型を改良したMk.5 bis型です。砲射撃指揮装置（GFCS）は、光学式のモチブG型から、レーダー搭載のモルニアATs-68bis型に変更されました。GFCSは主装置、予備装置、砲塔内部装置で構成され、非常時には砲側射撃も可能でした。高角機銃は、V-11 37mm連装機銃が搭載され、GFCSにはレーダー搭載のヤーコリM型が使用されました。後に、新型のSM-20 ZIF-68-1型 45mm4連装砲を搭載する計画が立ち上がりましたが、巡洋艦の維持コストを憂慮したフルシチョフの指示により中止されました。

改装

スヴェルドロフ級は、以下のような多様な改装が計画・実施されました。

68U型 (指揮艦型)

1963年、2隻の指揮艦への改造が指令されました。68U号計画では、通信設備を増強し、3・4番砲塔を撤去して、4K33 オサーM個艦防空ミサイル・システムとKa-25哨戒ヘリコプターの運用設備を設置する予定でした。「ジュダノフ」と「アドミラル・セニャーウィン」が改装対象となり、「ジュダノフ」の改装では、黒海艦隊司令部が4番砲塔の撤去に反対したため、ヘリコプターは露天係止となりました。また、AK-230が追加装備されました。「アドミラル・セニャーウィン」は、当初の計画通り航空艤装とAK-230を搭載しました。

68A型 (近接防空力強化型)

1960年代から1980年代にかけて、「アドミラル・ウシャコーフ」、「アレクサンドル・スヴォーロフ」、「オクチャーブリスカヤ・レヴォリューツィヤ」、「ミハイル・クトゥーゾフ」にAK-230 30mm機銃とGFCSが搭載され、後期改造艦ではAK-630が採用されたともされています。

70E型 (防空艦型)

1955年、第16設計局は本級を防空艦に改装する70E号計画を策定しました。この計画では、3番砲塔と機銃、魚雷発射管を撤去し、M-2「ヴォールホフM」（SA-N-2）のSM-64型連装発射機を搭載する予定でした。「ジェルジンスキー」が改装対象となり、1957年から1958年にかけて改装工事が行われ、ソ連初の艦対空ミサイル搭載艦となりました。しかし、発射速度の遅さから、発射機の複数搭載が必要とされ、70型計画が計画されましたが、兵装のバランスの悪さから中止となりました。

配備

スターリンの死後、フルシチョフは対艦ミサイルと潜水艦戦力を重視する方針に転換しました。これにより、砲装型巡洋艦の計画は変化しましたが、本級は大きさが手頃で、改造や近代化に適していたため、14隻に減らされつつも生き残りました。

「オルジョニキーゼ」は、1956年にイギリスの潜水士による諜報事件に関与した後、1960年にインドネシアに移譲されました。「アドミラール・ナヒーモフ」は1960年に退役し、標的艦として使用された後、解体されました。他の艦は1980年代末から1990年代初頭にかけて除籍・解体されましたが、「ミハイル・クトゥーゾフ」は記念艦として保存されています。アメリカ海軍のミサイル巡洋艦ボストン級が竣工したのは、1番艦「スヴェルドロフ」が竣工したのと同じ1952年でした。

脚注

参考文献

『世界の艦船』、1986年1月増刊号「近代巡洋艦史」、海人社

外部リンク

Сайт «АТРИНА» • Легкий крейсер пр.68-бис типа «Свердлов», Sverdlov class （ロシア語）
Project 68 Sverdlov class, Federation of American Scientists （英語）
Легкий крейсер пр. 68-бис "Мурманск" （ロシア語）
Новороссийск: нареченный именем России (ノヴォロシースクの観光案内) （ロシア語）
На маневрах "Океан" 『オケアン演習』 - YouTube

関連項目

* ブラックバーン バッカニア - 本級を仮想敵として開発されたイギリスの艦上攻撃機。

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