スーパーファミスタ5

『スーパーファミスタ5』は、1996年 2月29日にナムコ（現・バンダイナムコエンターテインメント）からスーパーファミコン用ソフトとしてリリースされたプロ野球ゲームです。本作はスーパーファミコン向けに開発された『ファミスタ』シリーズの最後を飾るタイトルであり、同時にナムコがスーパーファミコン向けに店舗販売した最後のソフトでもあります。略称として「パースタ5」とも呼ばれ、日本野球機構公認作品として制作されました。著作権表示は発売前年の1995年となっています。

家庭用ゲーム機版『ファミスタ』シリーズにおいて、前年の『ギアスタジアム平成版』までは「ナムコット」ブランドで展開されていましたが、本作からは会社名と同じ「ナムコ」ブランドに変更されました。これに伴い、ゲーム内の試合結果を伝える架空の新聞名も「ナムコットスポーツ」から「ナムコスポーツ」へと変更されています。

ゲームの特徴

前作『スーパーファミスタ4』から採用された、グラウンドの高低差を表現した3D視点が引き続き用いられています。1994年にコナミの『実況パワフルプロ野球』シリーズが登場し、野球ゲーム市場が新たな局面を迎える中で、本作は多数のゲームモードと1996年シーズン開幕前時点での最新チームデータを前面に打ち出しました。初代『スーパーファミスタ』以来となる多くのチームが登場するのも特徴です。前作に引き続きキリンビバレッジがCM契約スポンサーとなっており、球場看板やゲーム画面の一部にKIRIN商品の広告を見ることができます。

野茂英雄選手のメジャーリーグでの活躍を反映し、架空チーム「アメリカンズ」が復活しました。チームの選手データの多くは、前作に登場した「ドリームス」のものが流用されています。アメリカ各地の地名を冠する選手が多い中で、野茂選手と同じくトルネード投法を操る右投げの投手「ジャパン」という架空選手も所属しています。

選手データは基本的に1996年シーズン開幕前に準じていますが、過去の『スーパーファミスタ』シリーズと同様に、前シーズン終了後に日本のプロ野球を離れた外国人選手も一部登場します。例えば、元千葉ロッテマリーンズのフリオ・フランコ選手は、その特徴的な打撃フォームまで再現されており、アメリカンズの全選手にこのフォームが設定されています。一方で、セントラル・リーグ特別表彰を受ける活躍をしながらも、オフの契約問題で去就が不透明だったロビンソン・チェコ投手（広島東洋カープ）は登録されていませんでした。また、前作同様、一部選手の背番号が実際の開幕時点と異なるケースも存在します（例：中日ドラゴンズの音重鎮選手が50番ではなく5番、山田和利選手が7番ではなく4番）。

「ナムコスポーツ」の試合結果見出しは、前作までのようにチームの勝敗自体を大きく扱うのではなく、実際のスポーツ新聞を意識し、その試合で活躍した選手に焦点を当てる形式に変更されました。

ゲームモード

多彩なモードが用意されています。

一戦勝負: 好きなチーム（実在12球団、ナムコスターズ、アメリカンズ）と球場を選んで手軽に対戦できます。基本的な内容は前作と同様です。
リーグ戦: 好みのチーム構成や試合数でリーグ戦を行います。また、『ファミスタ』シリーズで初めて、リーグ優勝に加えて日本シリーズ制覇を目指す、現実のプロ野球に近いペナントレースをプレイすることが可能です（ペナントレースは実在12球団限定）。
夢のFA: 勝利試合の成績に応じて資金を獲得し、好きな選手を補強してオリジナルチームを作るモードです。最大3チームまで保存できますが、このモードで作ったチームを他のリーグ戦に参加させることはできません。
OBに挑戦: 好きな実在12球団で、1960年代から1990年代までのOB選手で構成されたチームと対戦します。OBチーム同士や、OBチーム対オリジナルチームでの対戦も可能です。
オールスター: 通常のオールスター戦に加え、前作から引き続き「東西対抗戦」、そして前年のオールスター戦を反映した「全日本人対全外国人」という対戦形式が追加されています。この全日本人対全外国人モード限定で登場する外国人選手もいます（例：マイク・バークベック選手）。また、外国人捕手不在という事情から、ジョー（定詰雅彦選手）やデーブ（大久保博元選手）といった日本人選手も特別に登場しました。
選手エディタ: 選手の能力や背番号（00、0-99に加え、01-09も設定可能）を自由に編集できるモードです。ただし、「OBに挑戦」モードに登場する下手投げ投手のような特殊なフォーム設定はできません。選手名入力には、文字をドットで描く方式も導入されました。既存選手のデータをコピーし、能力だけでなく一部の特殊な打撃・投球フォームを引き継ぐ機能も存在します。
マルチプレイ: マルチタップを使用することで、最大4人での同時プレイが可能です。このモード専用の操作として、ベースカバーが追加されました。
オプション: ゲームのエラー率やバランスを調整できます。新たに「ひいき機能」が搭載され、ひいきチーム（実在12球団限定）を設定すると、ファン向けの演出が加わるほか、そのチームでプレイする際に全打者の打率が5分上昇、全投手の防御率が0.5低下するという補正がかかります。ひいきチーム設定時には、タイトル画面やチーム選択時に応援ボイスも流れます。パッケージには、実在12球団の「ごひいきチーム専用シール」が同梱されていました。

登場チームと球場

実在プロ野球のセントラル・リーグ、パシフィック・リーグ各6球団、そして架空のナムコスターズ、アメリカンズが登場します。

ホーム球場は、実在の球場をモデルにした11球場に加え、ナムコスターズの本拠地であるナムコ球場と、アメリカンズの本拠地であるアメリカン球場（ドジャースタジアムがモデル）があります。ナムコ球場は、前作から両翼やセンターまでの距離が縮小されつつも、収容人員が大幅に増加するというユニークな変更が加えられました。

オプションで「野次」設定を「あり」にすると、球場ごとに異なる種類の野次や応援メッセージが流れます。実在モデルの球場では、それぞれの地域の方言にちなんだものが聞かれます（関東弁、名古屋弁、関西弁、広島弁、博多弁）。アメリカン球場ではアメリカ英語に加え、野茂選手ブームで広まった「サンシン」といった日本語も流れます。ナムコ球場のみは、野次の代わりに1980年代頃のナムコゲームのBGMが流れる特別仕様となっています。

その他

本作の開発スタッフとして、岸本好弘氏、島本昌弘氏、堀込高樹氏などが関わっています。選手エディタモードのBGMは、サウンド担当の堀込高樹氏が後に自身のバンド「キリンジ」の楽曲『汗染みは淡いブルース』としてセルフリメイクしました。

ゲーム中の効果音やBGMには、『ディグダグ』や『ディグダグII』のものが随所に使用されています。具体的には、ゲーム起動時の効果音、ナムコ球場での通常時のBGM（『ディグダグII』メインBGM）、ヒット時のBGM（『ディグダグII』スパートBGM）、タイム時のメニュー画面BGM（『ディグダグ』ネームエントリーBGM）などです。

玉子ドーム（東京ドームモデル）のライトスタンド上段には、当時発売予定だったナムコのスキーゲーム『スーパーファミリーゲレンデ』の看板が掲げられています。

「一戦勝負」モードにおいて、控え野手を全て使い切った状態で延長戦に突入すると、攻撃側のイニングで監督が代打として打席に立つというユニークな隠し要素も存在しました。

本作に関する攻略本としては、双葉社から「必勝攻略法」シリーズ、小学館から「公式ガイドブック」シリーズが発売され、特に後者には「OBに挑戦」モードに登場する選手の名鑑も収録されていました。

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