セントヘレナ (貨客船)

セントヘレナ号について

セントヘレナ号（RMS St Helena）は、イギリスの海外領土であるセントヘレナ島とアセンション島へ運航していた貨客船です。長い間、この船は南大西洋の重要な輸送手段として機能しており、多くの旅客と貨物を運んできました。しかし、セントヘレナ空港の開港により、2018年2月にその役目を終えました。

背景

1977年まで、セントヘレナへの航路はユニオン＝キャッスル・ラインによって運営されていました。この航路はイギリス本土と南アフリカを結ぶ船の寄港地として機能していましたが、旅客数の減少によりユニオン＝キャッスル・ラインは航路から撤退しました。このためイギリス政府は、ノースランド・プリンス号という貨物船を購入し、セントヘレナへの航路を維持することになりました。ノースランド・プリンス号は1982年のフォークランド紛争においてもイギリス海軍に徴用されるなどの歴史があります。

その後、旅客需要に対応するために1989年にセントヘレナ号が新たに建造されました。

セントヘレナ号の特徴

セントヘレナ号はアバディーンのホール・ルッセル・アンド・カンパニーで1990年に進水しました。イギリス一級登録貨客船に分類され、船員56名を含む搭乗員が乗船しています。貨物の輸送では、石油などの液体物も含め、様々な貨物を取り扱うことができました。また、2012年の改装により旅客定員は128名に増加し、船内にはレストランや売店、プール、ラウンジなどが完備されていました。

さらに、乗客には無料で食事やアフタヌーン・ティーが提供され、航海中にはクリケット大会やビンゴ、カクテルパーティーなどのイベントが催され、旅客たちに楽しい時間を提供していました。

航海日程

セントヘレナ号は基本的には南アフリカのケープタウンとセントヘレナおよびアセンション島を結ぶ航海を行っていました。時には、ナミビアのウォルビスベイを起点とすることもありました。年に2回はイギリス本土のドーセット州ポートランドに寄港し、その際にはスペインのビーゴやテネリフェ島にも寄ることがありました。

事故と修理

1999年の11月、セントヘレナ号は故障が発見され、フランスのブレストで長期間の修理を余儀なくされ、多くの人々がセントヘレナを出発できなくなりました。この事故を踏まえ、セントヘレナでは空港建設の必要が高まっていきました。また、2000年にはシリー諸島沖で火災事故が発生しましたが、大きな損傷には至りませんでした。

引退と現在

イギリス政府は2010年までにセントヘレナの空港を建設し、同時にセントヘレナ号を引退させる計画を立てました。数回の計画変更を経て、空港建設が進められ、2017年10月14日に空港が開港しました。セントヘレナ号は2018年2月10日にその最終航海を遂げ、退役しました。

退役後、セントヘレナ号は2021年に開始予定の電気自動車レース「エクストリームE」のパドックとして活用されています。セントヘレナ号の歴史は、その役割を果たしてきた多くの人々の思い出と共に、今も語り継がれています。

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