セントルイス・ブルース (アイスホッケー)

セントルイス・ブルース

セントルイス・ブルースは、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスに本拠地を置く、北米のプロアイスホッケーリーグであるナショナルホッケーリーグ（NHL）に所属するチームです。チーム名は、ジャズやブルースが盛んなこの地の文化にちなみ、同名の音楽ジャンル「ブルース」から名付けられました。

チームの創設と初期の挑戦

ブルースは、1967年にNHLがチーム数を倍増させるための拡張（エクスパンション・シックスと呼ばれます）を行った際に誕生した6つの新チームの一つです。当時のNHLには、既存の強豪チーム「オリジナル・シックス」から新チームへのトップ選手の移籍を制限する特別なルールがあり、新規加入チームは戦力面で不利な状況に置かれていました。

このような状況の中、セントルイス・ブルースは創設初期から目覚ましい活躍を見せます。まずリン・パトリックが、続いてスコティ・ボウマンがヘッドコーチを務め、それぞれの在任期間中にチームを合計3年連続でスタンレー・カップ決勝へと導きました（1968年、1969年、1970年）。しかし、当時のプレイオフ形式では、拡張チームはすべて同じ地区に集められたため、決勝で必ずオリジナル・シックスの強豪チームと対戦しなければなりませんでした。結果として、モントリオール・カナディアンズに2度、ボストン・ブルーインズに1度敗れ、残念ながら優勝には手が届きませんでした。

初期のチームを支えた選手には、ダグ・ハーヴェイ、ジャック・プラント、ディッキー・ムーアといった経験豊富なベテランと、レッド・ベレンソン、ボブ・パラガー、バークレイ・パラガーといった若手選手がいました。

低迷期と経営危機

初期の快進撃の後、ブルースは再びスタンレー・カップ決勝の舞台に立つことはできませんでした。カンファレンス決勝には2度進出したものの、優勝争いからは遠ざかります。特に1970年代は、主にチームの財政的な困難が影響し、勝率が5割を下回るシーズンが多く続きました。

1980年に入ると、ラルストン・プリナがチームに投資を行い、状況は改善の兆しを見せます。レッド・ベレンソンがコーチとして指揮を執り、ウェイン・バビチが54ゴールを挙げる活躍を見せ、バーニー・フェデルコらフォワード陣も得点に貢献し、レギュラーシーズンではリーグ全体で2位という好成績を残しました。しかし、プレイオフでは第2ラウンドでニューヨーク・レンジャースに敗れ、ファンの期待に応えることはできませんでした。

その後再び成績が低迷し、1982年にはプレイオフに進出したものの、チームは氷上外の更なる問題に直面します。投資元であったプリナが投資から撤退し、本拠地のアリーナを閉鎖するという事態が発生したのです。チームは1983年にカナダのサスカチュワン州サスカトゥーンへの移転を検討しましたが、NHLはサスカトゥーンの市場規模に懸念を示し難色を示したため、最終的にNHL自身がチームを一時的に買収するという異例の形で収拾が図られました。

再建期とスター選手の時代

NHLからチームを買収したハリー・オーネストの下で、ブルースは経営面が安定し、他のチームと競争できる環境が整い始めます。1982年にドラフト指名されたダグ・ギルモアがスーパースターへと成長し、チームを牽引しました。1986年にはスタンレー・カップ準決勝まで進出しましたが、カルガリー・フレームスとの激闘の末、最終戦で惜敗しました。

ゼネラルマネージャーのロン・キャロンは、リーグ屈指の交渉手腕で知られ、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、ブレット・ハル、アダム・オーツ、カーティス・ジョセフ、ブレンダン・シャナハン、アル・マキニスといった多くの才能ある選手を獲得しました。この時期、チームは優勝を狙える強力な布陣を擁していましたが、プレイオフでは第2ラウンドの壁を破ることができないシーズンが続きました。

特にブレット・ハルは、この時代のNHLを代表するスター選手の一人でした。1990-1991シーズンには86ゴールを記録し、ウェイン・グレツキーに次ぐ成績を残しました。なお、グレツキーも1996年に短期間ですがブルースでプレーした経験があります。1990年にはレギュラーシーズン2位となり、プレイオフ第2ラウンドでミネソタ・ノーススターズを破り、長年の鬱憤を晴らしました。

マイク・キーナン体制とその後の変化

1994年にゼネラルマネージャー兼コーチとしてマイク・キーナンが就任すると、チームは急速な改革に乗り出します。彼はブレンダン・シャナハンを放出し、代わりにベテランのウェイン・グレツキーを獲得するなど、大胆な選手補強を行いましたが、その方針はファンやオーナーから疑問視され、わずか2年後の1996年に解雇されました。

再びロン・キャロンがGMに復帰しましたが、この頃にはフリーエージェント制度が浸透し、選手の移籍が活発になります。チームの顔であったブレット・ハルも1998年にダラス・スターズへ移籍し、移籍1年目にスタンレー・カップ優勝を経験しました。

しかし、ハートフォード・ホエーラーズから獲得したクリス・プロンガーをはじめ、パボル・デミトラ、ピエール・タージョン、アル・マキニス、そしてゴールテンダーのロマン・タレクといった選手たちの活躍により、ブルースはその後も優勝争いに加われるチーム力を維持しました。1999-2000シーズンにはレギュラーシーズンでNHL全チーム中最高成績を収め、会長賞を獲得しましたが、プレイオフ第1ラウンドでサンノゼ・シャークスに敗れるという波乱に見舞われます。2001年には西カンファレンス決勝に進出しましたが、コロラド・アバランチに敗れ、またも決勝進出はなりませんでした。

近年の動向と輝かしい成果

ブルースは、度重なるプレイオフでの惜敗や「あと一歩届かないチーム」という評価にも関わらず、1980年以降、長い間安定してプレイオフに進出し続ける強豪チームでした。創設以来、プレイオフ進出を逃したのはわずか数シーズンしかありません。しかし、2005-06シーズンと2006-07シーズンには、2年連続でプレイオフ進出を逃すという低迷期を経験しました。2007年のオフシーズンには、日系カナダ人のスーパースター、ポール・カリヤを獲得するなど、チーム再建への動きも見られました。

そして、長年の歴史と苦闘の末、セントルイス・ブルースは2019年に念願のスタンレー・カップ初優勝を果たし、その歴史に新たな一ページを刻みました。

スタンレー・カップ戦績

優勝：1回（2019年）
準優勝：3回（1968年、1969年、1970年）

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