ゼンハーモニック音楽

ゼンハーモニック音楽の概念

ゼンハーモニック音楽は、12平均律とは異なる調律システムを用いて構成される音楽の一群を指します。この名称は、ギリシア語の「外国」や「異種」を意味する「Xeno」に由来し、音楽理論家アイヴァー・ダレッグによって名付けられました。彼は、純正音程や5、7、11平均律を含む多様な音律を必要に応じて取り入れることを意図しており、そのためゼンハーモニック音楽は微分音（マイクロトーン）よりも広範な概念として扱われることが一般的です。

微分音楽としての定義

著名な音楽理論家であるジョン・チャルマーズは、自著『Divisions of Tetrachord』の中で、「ゼンハーモニック音楽が12平均律で演奏される場合、その音楽の本質に影響を与えないことが多い。このことは、その音楽が真正な微分音楽ではない」と指摘しています。つまり、ゼンハーモニック音楽は、見慣れない音程や和音、音色を用いることで、通常の12音音楽と明確に区別されることがあるのです。加えて、他の理論家たちもゼンハーモニックとそれ以外の音楽スタイルの分類を主観的なものと見なす傾向にあります。

ゼンハーモニック音楽の実例

実際、12音階のルールに従いながらも、ゼンハーモニック的な特徴を備えた音楽も存在します。例えば、イースリー・ブラックウッドの『The Structure of Recognizable Diatonic Tunings』では、12音から24音までの多様な平均律エチュードが紹介されており、12音音楽との類似性やゼンハーモニックの特徴を兼ね備えています。ダレッグ自身も「Xenharmonic」という用語を、12平均律のように聞こえない音全般を指すために考案したと述べています。

調律と楽器

ゼンハーモニック音楽は、12平均律以外のさまざまな調律や音階を適用し、その全てがこのカテゴリに分類されることになります。純正律に基づく音階や、物理的なオブジェクトから生じる音の倍音やインハーモニシティも調律の一部として考慮されます。ルー・ハリソンとウィリアム・コルヴィグは、チューブロングと呼ばれる独自の調律楽器を開発しました。

また、電子音楽の作曲では、ダニエル・ウィルソンが1940年代後半にラジオニクスの原理を使用して代表作を作りました。これにより、ゼンハーモニック音楽の可能性が広がりました。さらに、アニー・ゴスフィールドや坂本龍一などの作曲家も、ゼンハーモニックな特徴を持つ作品を制作しており、彼らの音楽はこのジャンルに分類されることがあります。

MOSスケールについて

MOS（Moment of Symmetry）スケールは、特定の音程を基にした音階を生成するシステムとして1975年に提唱されました。これは、任意の平均律上で調性を構築するために利用され、特定の音程を堆積して新たな音階を作り出します。このスケールは、ゼンハーモニック音楽で広く用いられており、多様性が魅力となっています。特定の音階を作成することで、音楽表現の幅が広がります。

純正音程との関連性

ゼンハーモニック音楽において、純正音程は極めて重要です。調律方法のひとつに「レギュラーテンペラメント」があり、これは異なる純正音程による音の調整を行うための方法です。また、パウル・エリッチは「ハーモニック・エントロピー」という概念を提唱し、音程がどれだけ協和するかを数値化して解析しました。

ソフトウェアの重要性

ゼンハーモニック音楽を作曲するために使用されるDAWやVSTプラグインは限られていますが、確立されたソフトウェアも存在します。例えば、Ableton LiveやFL Studioなどが代表的です。これらのソフトウェアは、創造的な音楽制作を支援し、ゼンハーモニック音楽の可能性を広げています。これにより、作曲家たちはより自由な発想で音楽を創り上げることができるのです。つまり、ゼンハーモニック音楽は、伝統的な調律の枠を超えた新しい音楽表現の道を開いています。

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