タガイ・バアトル

タガイ・バアトル：チンギス・カンに仕えた勇将

タガイ・バアトル（生没年不詳）は、スルドス部出身で、チンギス・カンに仕えた千人隊長の一人です。漢文史料では塔孩、ペルシア語史料ではتقاىなどと記され、「タガイ」と「タキ」という二通りの読み方が存在します。

生涯

ジャムカとテムジン（後のチンギス・カン）が決別した頃、タガイ・バアトルはテムジンの勢力に帰参し、その臣下となりました。アルカイ・カサル、チャウルカン、スケゲイ・ジェウンらと共に使臣（イルチ）の職を与えられ、テムジンから「遠き矢、近き矢」と評されるほど重用されました。特にスケゲイとは行動を共にすることが多く、オン・カンの下にテムジンのカン即位を伝える使者としても派遣されています。

1189年のダラン・バルジュトの戦い（十三翼の戦い）では、「第12翼」を構成するニルンのキンギヤト族の一員として参戦しました。スルドス部出身でありながらスケゲン族を率いた背景には、スケゲイ・ジェウンとの連携や、スルドス、キンギヤト、スケゲンなどの諸族が混淆する軍団を率いていた事情があったと考えられています。

ケレイト部の裏切りによるカラ・カルジトの戦い後、モンゴル軍がバルジュナ湖に逃れた際、タガイはテムジンと共に泥水を飲み、後に「バルジュナの功臣」と称えられる一人となりました。ケレイト部との決戦でも活躍し、その功績によりケレイト部族の中でも精強で知られたジルギン氏人を隷民として与えられました。

1206年のモンゴル帝国建国時には、帝国の根幹をなす95名の千人隊長の一人に列せられます。論功行賞では、バアリン部のアラク・ノヤンと共に、バアリン3千人隊を中心とし、アダルキン、トオレス、テレングトといったモンゴル高原西北の「森の民」を含む「万人隊」を治めるコルチ・ウスン・エブゲンの補佐を命じられました。

1219年のホラズム遠征では、アラク・ノヤン、コンゴタン部のスイケトゥ・チェルビと共に別働隊としてファナーカト攻略に派遣されました。この別働隊は、チンギス・カン本隊の陽動部隊としての役割を担い、ファナーカト攻略後もホジェンドを攻略するなど、目覚ましい戦果を挙げました。

子孫

タガイの死後、子のブカが千人隊を継承し、さらにその子アタカイが継承しました。アタカイは南宋遠征や日本遠征に従軍したことで知られており、南宋遠征では祖父タガイの同僚であったアラク・ノヤンの孫バヤンを起用するなど、父祖以来の縁を大切にしていたことが窺えます。

スルドス氏タガイ家

タガイ・バアトル (Taγai ba'atur)
ブカ (Buqa)
アタカイ (Ataqai)
アリマン (Aliman)

タガイ・バアトルは、チンギス・カンの信頼厚い部下として、帝国の建国と拡大に大きく貢献した人物であり、その功績は子孫にも受け継がれました。

もう一度検索