ダウコーニング

ダウ・シリコーンズ・コーポレーション：シリコーン技術のパイオニアとその歴史

ダウ・シリコーンズ・コーポレーションは、かつてダウコーニング社として知られていた、シリコーン材料を専門とする化学メーカーです。ミシガン州ミッドランドに本社を置いていた同社は、ダウ・ケミカル社とコーニング社の合弁事業として1943年に設立されました。シリコーン技術の先駆者として、数多くの革新的な製品を世に送り出し、世界中の産業に貢献してきました。

シリコーンの可能性：設立と初期の歩み

ダウコーニング社の設立は、第二次世界大戦中の1942年にさかのぼります。当時、航空機の高高度飛行は、エンジンの水分による電気系統のコロナ放電という課題に阻まれていました。シェイラー・バス氏によって開発されたシリコングリースが、この問題を解決する糸口となり、シリコーンの潜在能力に注目が集まりました。この革新的な技術を基に、ダウ・ケミカルとコーニングは、シリコーンの研究開発と商業化を目指し、ダウコーニング社を設立しました。E.C.サリバン氏が初代社長、ウィリアム・R・コリングス氏が初代ゼネラルマネージャーに就任し、企業の成長を牽引しました。コリングス氏はその後、1954年から1962年まで社長を務めました。

幅広い製品群：シリコーンの可能性の追求

ダウコーニング社は、シリコーンの幅広い応用可能性に着目し、多様な製品を開発・製造していました。その製品群は実に7000種類にも及び、シリコーン製の充填材、接着剤、潤滑剤、離型剤、吸音材など、私たちの生活の様々な場面で使用されています。特に、半導体や太陽光発電パネルに使用されるシリコンウェハーの製造は、同社の重要な事業の一つでした。

ヘムロック半導体社：シリコン材料の供給

ダウコーニング社の主要な子会社として、ヘムロック半導体社（Hemlock Semiconductor Corporation）の存在も特筆に値します。1960年設立の同社は、コンピュータ技術の発展以前から、半導体や太陽電池に使われる高純度多結晶シリコンの製造に取り組んできました。高品質なシリコン材料の供給は、情報化社会の発展に大きく貢献しました。

国際展開：日本市場への進出

ダウコーニング社は、海外市場への積極的な展開も行っていました。日本市場においては、1966年に東レとの合弁事業として東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社（後に東レ・ダウコーニング株式会社、現在のダウ・東レ株式会社とデュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアルズ株式会社）を設立し、日本におけるシリコーン市場の成長を支えました。

訴訟問題と再編：困難を乗り越えて

1980年代から1990年代にかけて、ダウコーニング社は、豊胸手術に使用されたシリコンバッグに関する集団訴訟に直面しました。乳がんや関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの健康被害との因果関係が訴えられ、1984年から訴訟が開始され、1998年には数十億ドル規模の和解が成立しました。この訴訟問題は、1995年にダウコーニング社の破産保全手続きへとつながりました。その後、米国医学研究所などの複数の機関による研究により、豊胸手術とこれらの疾患との因果関係は証明できないことが明らかになりました。

ダウ・ケミカル傘下へ：新たな発展

2017年、ダウ・ケミカル社はコーニング社の持ち分を買い取り、ダウコーニング社を完全に傘下におさめました。そして、2018年には社名をダウ・シリコーンズ・コーポレーションに変更し、新たな体制の下で事業を継続しています。現在もシリコーン材料分野におけるリーディングカンパニーとして、世界中の様々な産業に貢献を続けています。

もう一度検索