ダウブリール石

ダウブリール石：隕石中に潜む希少鉱物

ダウブリール石は、地球上では非常に珍しい硫化鉱物です。その特徴的な黒色の板状集合体は、主に隕石の中から発見されます。化学組成式はFe2+Cr3+2S4で、立方晶系に属します。

命名と発見の歴史

この鉱物は、19世紀のフランスを代表する鉱物学者、岩石学者、そして隕石学者でもあったガブリエル・オーギュスト・ドブレの名を冠しています。彼の功績を称え、1876年に初めて記載されました。最初の発見地は、メキシコのコアウイラ州で発見されたコアウイラ隕石です。この発見は、ダウブリール石研究の端緒となり、後の研究へと繋がっていきました。

分類

鉱物学における分類体系では、シュツルンツ分類とダナ分類の2つが広く用いられています。シュツルンツ分類では、「硫化鉱物と硫塩鉱物」のグループに属し、さらに「金属：硫化物比が3:4及び2:3の硫化金属」という細かな分類に位置づけられます。一方、ダナ分類では、「硫化鉱物と硫塩鉱物」の中のリンネ鉱グループに分類されます。これらの分類は、ダウブリール石の化学的性質や結晶構造を反映したものです。

生成と産出

ダウブリール石は、主に隕鉄、具体的にはカマサイトやテーナイトといった鉄ニッケル合金の包有物として発見されます。その周囲には、閃マンガン鉱、頑火輝石、グラファイト、斜長石、そしてシュライバーサイトといった鉱物が共存していることが多く、これらの鉱物組み合わせから、ダウブリール石の生成環境を推測することができます。文献によると、これまでに34の地域でダウブリール石が発見されていると報告されています。特に有名な例としては、アラン・ヒルズ84001隕石、ホバ隕石、そしてキャニオン・ディアブロ隕石などがあります。さらに、アポロ15号が月の雨の海から持ち帰ったハドリー・リル隕石からもダウブリール石が発見されており、地球外におけるダウブリール石の存在が示されています。これらの多様な発見例は、ダウブリール石が宇宙空間における鉱物生成過程を理解する上で重要な役割を担っていることを示唆しています。

結晶構造

ダウブリール石は、空間群Fd3m (4/m 3 2/m)という対称性の高い立方晶系に属します。その結晶構造は、1つの単位格子の中に8つの化学式単位(Fe2+Cr3+2S4)が存在する複雑なものです。この結晶構造の詳細な解析は、ダウブリール石の物性や生成メカニズムを解明する上で重要な手がかりとなります。

今後の研究

ダウブリール石は、その希少性と宇宙における存在から、地球科学や惑星科学の分野において重要な研究対象となっています。今後の研究では、より詳細な結晶構造解析や生成条件の解明、さらには地球外物質における分布調査などが期待されます。これらの研究を通じて、太陽系や宇宙における物質進化の解明に貢献することが期待されています。

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