ダニー・リンチ

ダニー・リンチ：英国マット界の異端児、流血王の生涯

ダニー・リンチ（Dangerous Danny Lynch、1939年1月9日-2007年5月29日）は、イギリス・ヨークシャー（マンチェスターとも）出身のプロレスラーである。 類まれなラフファイターとして知られ、その風貌は時代とともに変化した。初期は短髪だったが、後にスキンヘッドに辮髪、口髭を蓄えた迫力ある姿となり、日本では「英国の流血王」と呼ばれた。

喧嘩と軍隊、そしてプロレスへの道

少年時代から喧嘩に明け暮れたリンチは、イギリス陸軍に入隊。そこで培ったパンチ力を活かし、陸軍ミドル級ボクシングチャンピオンの座に輝いたという逸話が残る。しかし、減量を嫌った彼はボクシングを辞め、1960年に地元ヨークシャーでプロレスラーとしてデビューする。

デビュー後は、荒々しいファイトスタイルで注目を集めた一方、その危険なファイトはプロモーターから敬遠され、出場停止処分を受けることもあった。それでも彼は実力を認められ、1960年代にはヨーロッパ版の世界ヘビー級選手権を獲得するなど、着実にキャリアを積み重ねていった。

国際プロレスでの活躍と海外進出

1969年2月、リンチは国際プロレスに初来日。得意技のスタンディング・クラッチ・ホールドでグレート草津を破るなど、インパクトを残した。同時期にはデイブ・ラールとタッグを組み、豊登&サンダー杉山組とTWWA世界タッグ王座を争った。同年後半からはカナダにも進出し、スタンピード・レスリングでNWAカナディアン・ヘビー級王座を獲得。翌1970年にはモントリオール地区でインターナショナル・ヘビー級王座を獲得するなど、国際的な活躍を見せた。

1971年10月の再来日では、バロン・フォン・ラシクと凶悪コンビを結成し、IWA世界タッグ王座に挑戦。ストロング小林、ラッシャー木村との金網デスマッチにも出場するなど、ハードなファイトを展開した。1975年には「弟」と称するブッチャー・リンチ（ブライアン・メイソン）を伴い再来日。再びIWA世界タッグ王座、そしてIWA世界ヘビー級王座に挑戦した。

晩年と引退後

イギリスを拠点にヨーロッパ各地で活躍したリンチだったが、1978年、ローラン・ボックとの試合で脚を負傷し、セミリタイア。その後1982年にはレバノンで一時復帰し、ヘビー級王者となる。引退後はケントのアシュフォードでレスリングスクールを開校。映画やテレビにも出演するなど、多方面で活躍した。2007年5月29日、68歳で死去。晩年までプロレス界との繋がりを大切にし、OB会などにも参加していたという。

ダニー・リンチのファイトスタイルと得意技

リンチは、その危険なファイトスタイルで知られた。彼の得意技は、スタンディング・クラッチ・ホールド、ボストン・クラブ、そして強烈なナックル・パンチなど。スタンディング・クラッチ・ホールドは、相手の肩にまたがり片足を掴んで引っ張り上げる、複合型サブミッション・ホールドで、カール・ゴッチやミル・マスカラスも使用していた技である。

獲得タイトル

世界ヘビー級王座（ヨーロッパ版）
NWAカナディアン・ヘビー級王座（カルガリー版）
* IWAインターナショナル・ヘビー級王座（モントリオール版）

ダニー・リンチは、その危険なファイトスタイルと圧倒的な存在感で、プロレス界に大きな足跡を残したレスラーであった。彼の生き様は、後の世代のプロレスラーたちにも大きな影響を与え続けている。

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