バロン・フォン・ラシク

バロン・フォン・ラシク（Baron Von Raschke）は、1940年生まれ、アメリカ合衆国出身の元プロレスラーです。本名をジェームス・ドナルド・ラシク（James Donald Raschke）といい、そのキャリアは、アマチュアレスリングの輝かしい実績から始まりました。

アマレスの実績とプロレスへの転向

高校時代からレスリングで頭角を現し、ネブラスカ州のヘビー級王者、そしてネブラスカ大学ではビッグ・エイト・カンファレンスで優勝、オール・アメリカンにも選出されるなど、目覚ましい活躍を見せました。1963年には、スウェーデンで開催された世界大会でグレコローマン・スタイルで銅メダルを獲得。1964年には、AAUのナショナル・チャンピオンシップで優勝し、東京オリンピックのアメリカ代表にも選ばれましたが、怪我のため出場を断念しました。

オリンピック出場の夢を絶たれたラシクは、プロモーターのジョー・デュセックの紹介で、AWAの総帥であるバーン・ガニアと出会います。ガニア自身のトレーニングを受け、1966年にプロレスラーとしてのキャリアをスタートさせました。

悪役レスラー「バロン・フォン・ラシク」の誕生

当初は、ジム・ラシク（Jim Raschke）というリングネームで正統派レスラーとして活動していましたが、1967年、マッドドッグ・バションの助言により、カナダのモントリオールでナチス・ドイツを彷彿とさせるスキンヘッドのギミックに変身。「バロン・フォン・ラシク」と名乗り、悪役（ヒール）としての道を歩み始めました。このギミックは、同じくドイツ人ギミックの先駆者であるフリッツ・フォン・エリックに倣ったもので、必殺技として、相手の脳天を掴む「ブレーン・クロー」を使用。同年11月には、IWAインターナショナル・ヘビー級王座を獲得し、一躍脚光を浴びました。

1970年代には、AWA、NWA、WWWFといった主要団体で活躍。その異様な風貌とキャラクターから、怪奇派レスラーとしてのイメージも確立し、日本では「妖獣」の異名で恐れられました。

各団体での活躍

テキサスではフリッツ・フォン・エリックやワフー・マクダニエルと抗争、NWAアメリカン・ヘビー級王座やテキサス・ブラスナックル王座を獲得しました。AWAでは、ホースト・ホフマンとタッグを組み、ビル・ロビンソン&ジェフ・ポーツのイギリス人コンビと抗争を展開。AWA世界ヘビー級王座にも挑戦し、アンドレ・ザ・ジャイアントとも対戦しました。WWWFでは、フレッド・ブラッシーをマネージャーに迎え、ブルーノ・サンマルチノのWWWFヘビー級王座に挑戦しています。

その後は、NWAのミッドアトランティック地区で活動。リッキー・スティムボートを破りNWAミッドアトランティックTV王座を獲得。グレッグ・バレンタインやポール・ジョーンズとのタッグでNWA世界タッグ王座も獲得しました。

1980年代初頭には、NWAの南部テリトリーを転戦。NWAジョージア・ヘビー級王座やNWAフロリダTV王座を獲得。セントルイスのキール・オーディトリアムにも度々登場し、デビッド・フォン・エリックやテッド・デビアスらと対戦しました。

古巣AWAにベビーフェイスとして復帰後は、ハルク・ホーガンとタッグを組み、ニック・ボックウィンクル率いるヒーナン・ファミリーと抗争。クラッシャー・リソワスキーとのベテランコンビでAWA世界タッグ王座を獲得しました。

日本での活躍

1971年10月、国際プロレスに初来日。ストロング小林のIWA世界ヘビー級王座に挑戦しました。1972年の『第4回IWAワールド・シリーズ』では、決勝トーナメントに進出し、準決勝でモンスター・ロシモフ（後のアンドレ・ザ・ジャイアント）と対戦。その後も、全日本プロレスに参戦し、ジャイアント馬場やジャンボ鶴田といったトップレスラーと対戦しました。1981年には、キラー・カール・クラップとの「クロー・コンビ」で『世界最強タッグ決定リーグ戦』に出場しました。

引退後

1995年に引退後は、OB会やイベントに顔を見せています。プライベートでは物静かな読書家であり、博学で紳士的な一面も持ち合わせているそうです。本人は、悪役を演じることで本来の自分とは別の人格になり切れたことを楽しんでいたといいます。

得意技

ブレーン・クロー
サイド・スープレックス
* エルボー・ドロップ

バロン・フォン・ラシクは、その強烈なキャラクターと確かな実力で、プロレス史に名を刻んだレスラーの一人です。

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