ダンケルク (戦艦)

ダンケルク級戦艦の概要

ダンケルクは、フランス海軍が1932年から1937年にかけて建造したダンケルク級戦艦のネームシップです。フランス海軍では戦列艦に分類されています。艦名はフランス北部の港湾都市ダンケルクに由来し、同型艦にはストラスブールがあります。

ダンケルク級は、第二次世界大戦勃発後、襲撃部隊に所属し、イギリス海軍と共同で船団護衛やドイツ通商破壊艦の警戒任務に従事しました。1939年11月には、巡洋戦艦フッドと共にドイツ戦艦を捜索する作戦にも参加しています。

1940年6月、フランス降伏時にダンケルクはメルス・エル・ケビールに停泊していましたが、イギリス軍の攻撃により大破着底しました。その後修理され、1942年にトゥーロンへ帰還しましたが、ドイツ軍の侵攻を防ぐため自沈しました。

建造の背景

ワシントン海軍軍縮条約によって列強各国の艦艇保有が制限された中、フランス海軍は巡洋艦や駆逐艦の建造に注力していました。しかし、1922年に戦艦フランスが事故で失われたことを契機に、代替艦としてダンケルク級の建造が決定されました。

ドイツのドイッチュラント級装甲艦（ポケット戦艦）に対抗する意味合いもあり、ダンケルク級はポケット戦艦を凌駕する性能を持つように設計されました。1931年、フランス海軍委員会は巡洋戦艦の建造を勧告し、議会は2万3,000トン級巡洋艦の建造を決議しました。様々な検討の結果、最終的に2万6,000トン級の艦型に拡大されました。

1932年10月、フランス政府はダンケルクの建造を命令し、同年12月に起工しました。ドックの制約から艦体を分割建造し、1935年10月に進水、1937年5月に就役しました。

設計の特徴

ダンケルク級は、主砲と副砲の一部を四連装砲塔に収めることで軽量化を図り、浮いた重量を防御力の強化に充てました。また、主砲塔を艦前方に集中配置することで、防御範囲を縮小することができました。

主砲には、13インチ（33センチ）50口径砲を四連装砲塔にまとめ、2基8門を艦前部に配置しています。これは当時の国際的な軍縮の動きを反映したもので、列強各国が新型戦艦の主砲口径を12〜14インチに制限しようとしていたためです。

四連装砲塔は、フランスの新しい戦艦の特徴であり、過去のノルマンディー級やリヨン級から続く伝統的な設計です。イギリス海軍のネルソン級戦艦は、16インチ三連装砲塔を艦首に集中配置した強力な戦艦でしたが、ダンケルク級はそれとは異なる設計思想で建造されました。

就役後の活動

1937年5月にはイギリスで行われたジョージ6世戴冠記念観艦式に参加し、各国の艦艇と交流しました。その後、大西洋や地中海での哨戒任務に従事し、イギリス海軍との親善にも努めました。

第二次世界大戦での活躍

第二次世界大戦が始まると、ダンケルク級は連合国側の船団護衛任務に従事しました。ドイツ海軍の通商破壊艦に対抗するため、フランス海軍は襲撃部隊を編成し、ダンケルク級もその一翼を担いました。

1939年11月には、ドイツのシャルンホルスト級戦艦を捜索しましたが、捕捉には至りませんでした。1940年4月にはイタリア参戦の可能性が高まり、北アフリカのアルジェリアに移動しました。

メルセルケビール海戦

1940年6月、イタリアが参戦し、フランスが降伏すると、イギリスはフランス艦隊がドイツ軍に接収されることを恐れました。

7月3日、イギリス軍はフランス艦隊を無力化するため、メルス・エル・ケビールに集結していたダンケルク級戦艦を含むフランス艦隊を攻撃しました。この海戦で、ダンケルクはイギリス艦隊の砲撃により大破着底しました。その後、浮揚修理を経て1942年2月にトゥーロンへ帰還しました。

自沈

1942年11月、ドイツ軍がトゥーロンに侵攻してきたため、フランス艦隊はドイツ軍に鹵獲されるのを防ぐため、ダンケルクを含む多くの艦艇が自沈しました。ダンケルクは、艦長の当初の拒否にも関わらず、軽巡洋艦ラ・ガリソニエールの艦長の説得により自沈を決意しました。

その後、トゥーロンはUボートの基地となり、連合国軍による空爆を受けました。1944年8月、連合国軍が南フランスに上陸すると、ドイツ軍はダンケルクの主砲塔を利用して応戦しましたが、最終的に連合国軍に占領され、ダンケルクは残骸となりました。第二次世界大戦終結後、ダンケルクは解体処分されました。

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