チチャ

チチャ (Chicha)

チチャとは、南米アンデス地方で広く消費されているトウモロコシを主成分とした伝統的なアルコール飲料です。特にペルーとボリビアでの知名度が高く、高山地域の民族文化に深く根付いています。ボリビアのコチャバンバはこの飲料の名産地として知られ、国立民族学博物館には、これに関連するさまざまな遺物が収蔵されています。これらの中には、アイマラやケチュアの人々がかつて使用していたとされる陶器や、現代のチチャ製造の様子を示す土人形などがあります。

製法

本来、チチャはトウモロコシを発酵させて作られます。伝統的な製法では、トウモロコシを噛むことによって唾液の酵素で発酵させる方法が用いられていました。これは特に先住民の文化において重要なプロセスであり、彼らの歴史に深く根差しています。

特徴

チチャの味わいは酸味のあるブドウジュースのようで、製法や飲むタイミングによってアルコール度数が異なります。一般に煮沸など発酵を止める工程を経ないため、賞味期限は非常に短く、飲み頃を過ぎると味わいは急速に変化し、酸っぱくなります。通常は作られてから一週間以内に飲むことが推奨されます。

チチャモラーダ

現代のペルーやボリビアのレストランで提供される紫トウモロコシを原料にしたチチャモラーダは、アルコールを含まず、上記のチチャとは異なります。チチャモラーダはポリフェノール（特にアントシアニン）を多く含み、健康効果が期待されています。特に血栓を防ぐ効果が注目されています。

アンデス文明とチチャ

チチャはアンデス文明の形成において非常に重要な役割を果たしてきました。その原材料であるトウモロコシは、特にアンデス地域では多様な品種が栽培されており、先コロンブス期には特に価値の高い作物として重宝されていました。トウモロコシは酒だけでなく、マニオクやキヌアからも作られ、モチェ文化の中でも清酒の儀式に利用されていました。

ワリ文化

ワリ文化（700年～900年頃）において、トウモロコシの生産は拡大され、この地域での栽培は社会的にも重要視されていました。当時の儀式にはチチャが欠かせない存在で、特にチチャを入れた巨大な土器が儀式後に壊されるという風習も存在していました。

ボリビアおよびインカ帝国の利用

ボリビアのティワナク文化でも、チチャは儀礼用として利用されており、特にチチャを盛るための独特なデザインの土器が見つかっています。またインカ帝国においても、チチャは重要な飲み物の一つとして利用され、社会的や儀礼的な催しに欠かせない存在でした。労働に対する報酬としてチチャが提供され、この飲み物がもたらす共同性の重要性が記録されています。

音楽と文化

1980年代になると、コロンビアのクンビアやペルーのフォルクローレといった音楽ジャンルとアメリカのサイケデリック・ロックが融合し、「チチャ音楽」という新しい音楽スタイルが登場しました。この音楽は山岳部からリマに移住した人々の間で人気を集め、エレキギターを用いた演奏スタイルが特徴です。主なアーティストにはチャカロンやロス・シャピスなどがいます。

このように、チチャはただの飲み物以上の存在であり、アンデスの文化や社会、歴史に深く刻まれた重要な要素となっています。

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