チンボラソ

チンボラソ

エクアドル共和国の中央部、チンボラソ県に位置するチンボラソ（スペイン語: Volcán Chimborazo）は、アンデス山脈の一部をなす荘厳な成層火山です。首都キトから南南西へ約150キロメートルの距離にあり、標高は6,268メートルを測ります。この山はエクアドル国内で最も標高が高い山として知られています。山名の「チンボラソ」は、現地の言葉で「青い雪」という意味を持つとされています。

特異な「最高峰」

一般的な海抜高度を基準にした場合、世界で最も高い山はエベレスト山です。しかし、地球は完全な球体ではなく、赤道付近がわずかに膨らんだ楕円形をしています。チンボラソ山が位置するエクアドルは赤道直下にあり、一方エベレスト山は北緯28度付近にあります。このため、赤道地域の方が地球の半径が大きく、海面高度も高くなっています。その結果、標高ではチンボラソ山の6,268メートルはエベレスト山の約8,848メートルよりも約2,580メートル低いにもかかわらず、地球の中心からの距離で比較すると、チンボラソ山頂は約6,384.4キロメートル、エベレスト山頂は約6,382.3キロメートルとなり、チンボラソ山の方が約2.1キロメートル遠くなります。つまり、地球の中心から最も離れた地点は、エベレスト山頂ではなくチンボラソ山頂なのです。

ただし、海抜高度で見た場合、チンボラソ山は北アメリカ大陸の最高峰であるデナリ（旧マッキンリー山）よりは高いものの、同じアンデス山脈の最高峰であるアコンカグアよりは低い位置づけとなります。

地理と地質

チンボラソは、安山岩からデイサイト質の溶岩から形成された成層火山です。この種類の火山は、噴火の度に溶岩や火山灰が積み重なって円錐形の美しい山容を形成します。チンボラソの直近の噴火活動は、西暦400年から700年の間に発生したと考えられています。

探検と登頂の歴史

19世紀初頭まで、多くの人々はチンボラソ山が地球上で最も高い山であると考えていました。このため、17世紀から18世紀にかけて、多くの探検家や登山家がその頂を目指し挑戦しました。

有名な挑戦の一つに、1802年に行われた探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトによるものがあります。南米を調査中だったフンボルトは、フランスの植物学者エメ・ボンプランやエクアドルのカルロス・モントゥーファルらと共にチンボラソに登りました。彼らは標高5,875メートル地点まで到達しましたが、高山病にかかる者が続出したため、やむなくそこで引き返しました。これは当時のヨーロッパ人によって到達された最も高い標高地点として記録されました（ただし、それ以前にインカの人々はより高い山に登っていたことが知られています）。

最終的に、チンボラソ山の初登頂を達成したのは、イギリスの登山家エドワード・ウィンパーとその弟ルイス、そしてイタリア人ガイドのジーン・アントワーヌ・カレルらです。彼らは1880年にこの偉業を成し遂げました。当初、この登頂の真偽を疑う声もありましたが、ウィンパーは同年中にエクアドルのダビット・ベルトランとフランシスコ・カンパーナを伴い、再び登頂に成功し、疑惑を払拭しました。

水源としての重要性

チンボラソ山の山頂部や斜面を覆う広大な氷河は、山麓部だけでなく、エクアドル国内のチンボラソ県やボリーバル県にとって非常に重要な水源となっています。この氷河が解け出す雪解け水は、多くの人々の生活用水や農業用水を供給しています。

しかし、近年、気候変動の影響により、この氷河は著しい後退を見せています。2005年の夏には、山麓の都市部で深刻な水不足が発生しましたが、これは氷河の後退が原因の一つと考えられています。フランスの研究者による調査では、アンデス高地の氷河の融解速度が加速しており、大部分が近い将来に消滅する可能性があると警告されています。もし、チンボラソを含むアンデス山脈の氷河が大幅に減少すれば、キト、リマ、ラパスといった氷河からの水供給に依存している南米の主要都市は、将来的に極めて深刻な給水問題に直面する恐れがあります。

文化との関連

チンボラソ山は、その壮大さから古くから人々に畏敬の念を抱かれてきました。南米独立運動の英雄であるシモン・ボリバルも、この山に触発されて詩を書いたと伝えられています。チンボラソは、自然景観としての美しさだけでなく、地域社会の生命を支える存在であり、歴史や文化においても重要な役割を果たしています。

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