ツァスタバ M76

ツァスタバ M76：ユーゴスラビアが生んだ傑作狙撃銃

ツァスタバ M76は、ユーゴスラビア（現セルビア）のツァスタバ・アームズが開発した狙撃銃です。1970年代に、歩兵小隊を支援する選抜射手（マークスマン）向けに設計され、ユーゴスラビア人民軍に配備されました。

概要

M76は、ソ連のドラグノフ狙撃銃（SVD）と同様の運用思想を持つものの、外観や内部メカニズムにはAKM（ modernized AK-47）の設計が色濃く反映されています。具体的には、以下の点が挙げられます。

AKMとの類似点:
銃床から独立したピストルグリップ
上下分割可能なハンドガード
ガスピストンとボルトキャリアーを一体化させたロングストロークピストン方式
AK-47との類似点:
削り出し加工で製造されたレシーバー

弾薬

M76の大きな特徴の一つは、使用する弾薬です。東側諸国で一般的な7.62x54mmR弾ではなく、7.92x57mm弾（モーゼル弾）を使用します。これは、ユーゴスラビアが第二次世界大戦後にドイツから戦争賠償として接収した製造設備を活用し、7.92x57mm弾を使用するKar98kやMG42のクローンを生産していた背景によります。ただし、輸出向けには7.62x54mmR弾仕様や7.62mm NATO弾仕様も製造されました。

照準器

M76には、照門・照星と光学照準器の2種類の照準器が搭載されています。照門はAK系ライフルでお馴染みのタンジェントサイト方式で、1,000mまでの目盛りが刻まれています。レシーバー左側面には、ワルシャワ条約機構で標準的なアリ継ぎ式（dovetail）レールが設けられており、光学照準器や暗視照準器を取り付けることができます。

M76用として最も一般的な光学照準器は、ZRAK M-76 4x 5°10’です。この照準器は、ソ連・ロシア製のPSO-1やルーマニア製のLPS 4x6° TIP2 4x24と類似した形状と照準線レイアウトを持っています。照準線の蛍光光源にはトリチウムが使用されていますが、トリチウムは放射性物質であるため、放射性崩壊によって光量が徐々に低下し、8〜12年程度が寿命となります。

実戦での使用

M76は、旧ユーゴスラビア以外では、北朝鮮でライセンス生産され、朝鮮人民軍に配備・使用されています。ユーゴスラビア紛争では、十日間戦争からコソボ紛争に至るまで、旧ユーゴスラビア構成国で広く使用されました。

セルビアでは、7.62x54mmR弾を使用し、レシーバーの製造方法をM70B1アサルトライフルに準じた鋼板プレス加工に変更、よりドラグノフ狙撃銃に類似した形状となったツァスタバ M91に更新され、M76は退役しました。

登場作品

『ギルティクラウン』
『ドールズフロントライン』

関連項目

AK-47
ツァスタバ M70
狙撃銃
ドラグノフ狙撃銃
PSL狙撃銃
タブク狙撃銃
ツァスタバ M07
狙撃手 / 選抜射手

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