ティズナウ

ティズナウ：アメリカ競馬史に輝く名馬

ティズナウ (Tiznow) は、アメリカ合衆国で活躍した競走馬であり、種牡馬としても名を馳せた伝説的な馬です。2000年と2001年、彼はブリーダーズカップ・クラシックを連覇するという偉業を成し遂げ、その類まれな能力を世界に示しました。この記録は、2022年現在でも破られておらず、彼の強さを物語っています。さらに、2000年にはエクリプス賞年度代表馬に選出され、3歳牡馬チャンピオン、2001年には古牡馬チャンピオンにも輝きました。

競走馬時代：

ティズナウの競走馬としてのキャリアは、2000年のサンタアニタ競馬場での未勝利戦デビューから始まりました。デビュー戦では6着と敗れましたが、その後見事な成長を見せ、3戦目で初勝利を飾ります。G3のアファームドハンデキャップを制覇すると、G1のスワップスステークスに挑戦。惜しくも2着に終わりましたが、続くパシフィッククラシックステークスでも2着と好走しました。G1タイトル獲得への期待が高まる中、彼はスーパーダービーで6馬身差の圧勝劇を見せ、念願のG1初制覇を達成します。その後も勢いを維持し、ブリーダーズカップ・クラシックへと駒を進めました。

このブリーダーズカップ・クラシックは、ティズナウのキャリアの中でも特に記憶に残るレースとなりました。彼はレース序盤から積極的に先頭に立ち、最後の直線ではヨーロッパから参戦した強豪ジャイアンツコーズウェイとの激しい叩き合いを制し、僅差で優勝を掴みました。このレースには、キャプテンスティーヴ、フサイチペガサス、キャットシーフ、レモンドロップキッドなど、錚々たる強豪が名を連ねており、ティズナウの勝利は彼の圧倒的な強さを証明するものでした。カリフォルニア産馬、そして3歳クラシック未出走馬がブリーダーズカップ・クラシックを制覇するという快挙は、彼の稀有な存在感を際立たせています。さらに、前年、彼の全兄バドロワイヤルがキャットシーフに敗れた雪辱を果たしたという意味でも、この勝利は大きな意味を持っていました。

2001年、4歳となったティズナウは現役を続行しました。G2競走で2勝を挙げた後、サンタアニタハンデキャップを5馬身差で圧勝。しかしその後、腰痛の影響もあり、3着が続くなど苦戦を強いられます。引退レースとなったブリーダーズカップ・クラシックでは、前走までの不振や、サキー、ガリレオなどヨーロッパの強豪の参戦により、4番人気に留まりました。しかし、レースでは前年同様、最後の直線で壮絶な叩き合いを繰り広げ、サキーを振り切って優勝。ブリーダーズカップ・クラシック史上初の連覇という偉業を達成しました。

種牡馬時代：

競走馬引退後、ティズナウはケンタッキー州のウインスターファームで種牡馬としてのキャリアをスタートさせました。マンノウォー系種牡馬の貴重な繋ぎ手として期待され、初年度産駒からエクリプス賞最優秀2歳牝馬フォークロアを輩出するなど、種牡馬としても大きな成功を収めました。その後も、フォークロアやティズワンダフルのように早期から活躍する馬、カーネルジョンやダタラのようにクラシック戦線で活躍する馬、ティズウェイやウェルアームドのように古馬になってから大成する馬など、多様な産駒を送り出し、その血統の幅広さを示しました。

2013年には種付け料が75,000ドルに達するなど、高い評価を受けていました。孫世代も多くの重賞競走を制覇しており、サイアーラインの存続が危ぶまれていたゴドルフィンアラビアン、マンノウォー系の血統を繋ぐ重要な存在となりました。しかし、2010年代後半からは、後継種牡馬が韓国へ輸出されるなど、北米での勢力は衰え、2020年シーズンをもって種牡馬を引退しました。

エピソード：

2009年には、アメリカ競馬名誉の殿堂博物館に選定され、その偉大な功績が称えられました。また、共同馬主のセシリア・ストラブ・ルーベンスは、ティズナウのブリーダーズカップ・クラシック初優勝を見届けた直後に84歳で亡くなりました。彼女が残した「Take care of my boy.」という言葉は、ティズナウ関係者の心に深く刻まれています。2年目の優勝は、セシリアからの後押しがあったと関係者の間で語り継がれています。

2001年のブリーダーズカップは、9.11アメリカ同時多発テロ事件直後、グラウンドゼロからわずか12マイルのベルモント競馬場で開催されました。ティズナウが欧州勢を破って連覇した姿は、傷ついたアメリカ国民に大きな感動と勇気を与え、実況の「Tiznow wins it for America!」は今でも語り継がれる名言となっています。

さらに、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツのヘッドコーチ、ビル・ベリチックが、不振にあえぐチームの士気を高めるために、ティズナウのレース映像を選手に見せたというエピソードも伝えられています。この後、ペイトリオッツは劇的な巻き返しを見せ、スーパーボウル制覇を達成しました。ティズナウの活躍は、スポーツ界全体に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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