ティデ・ツクツェン

ティデ・ツクツェンの生涯と業績

ティデ・ツクツェンは704年に誕生し、吐蕃王国のツェンポとして705年から755年まで治世を持った重要な王である。彼の本名はチベット文字で「ཁྲི་ལྡེ་གཙུག་བཙན」と書かれ、またメー・アクツォムという別名でも知られている。文献資料によると、彼の治世はシルクロードの時代における唐との複雑な外交関係と、吐蕃国内での権力闘争に深く関わっていた。

王位継承と第一の挑戦

704年、ティ・ドゥーソンが亡くなると、吐蕃の王位を巡る争いが始まった。この混乱の中で、712年にティ・ドゥーソンの末子である8歳のギェルツクルが王位に即位し、ティデ・ツクツェンという名前が与えられた。この年は、彼の最初の大きな挑戦として位置付けられる。

唐との婚姻関係と外交

708年、吐蕃は唐の中宗に対し、公主を迎える意向を示し、唐はこれを了承した。710年には、金城公主がティデ・ツクツェンの妃として吐蕃に嫁いだ。彼女は唐の太子李賢の孫娘であり、この婚姻は両国間の関係を深めるための重要なステップであった。

軍事的対立と領域拡大の試み

ティデ・ツクツェンの治世において、吐蕃はパミール地方や河西地域への軍事的進出を試み、唐と対立する状況が続いた。しかし、吐蕃は唐の軍事力に対して劣勢に立たされていた。特に高仙芝の指揮する唐軍が吐蕃の軍を討ち、小勃律国（現在のギルギット）を奪回したことは、吐蕃にとって大きな衝撃を与えた。

739年には、金城公主が亡くなり、これが原因で吐蕃と唐の関係は一層悪化していった。753年には、唐の封常清に率いられた軍によってバルティスタンが奪われ、吐蕃にとっての領土の喪失が続いた。

最期

ティデ・ツクツェンの治世は、相次ぐ軍事的な敗北と内部での権力闘争に悩まされることになり、754年または755年ごろに重臣によって暗殺されるという悲劇的な終焉を迎えた。この事件は彼の治世の動乱を象徴するものであり、吐蕃王国の歴史における一つの転機となった。

参考文献

• - 岩尾一史 著『古代期のチベット』、臨川書店、2021年。
• - 森部豊『唐―東ユーラシアの大帝国』中公新書、2023年。
• - 森安孝夫『シルクロードと唐帝国』講談社〈興亡の世界史 第05巻〉、2007年。
• - 山口瑞鳳『チベット』 下、東京大学出版会、1988年。

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