ティート・ゴッビ

ティート・ゴッビ（Tito Gobbi, 1913年10月24日 - 1984年3月5日）は、イタリアを代表するバリトン歌手であり、その卓越した演技力で世界中のオペラファンを魅了しました。

生涯

イタリアのバッサーノ・デル・グラッパで生まれたゴッビは、パドヴァ大学で法律を学んだ後、声楽家としての道を志し、ジューリオ・クリーミに師事しました。1935年、ベルリーニ作曲の『夢遊病の女』でロドルフォ伯爵役を演じ、オペラ歌手としてデビューを果たします。

1942年からは、名門歌劇場であるミラノ・スカラ座の舞台にも立つようになり、第二次世界大戦終結後には国際的な活躍を開始しました。1950年代から60年代にかけては、ローマ歌劇場を、そして60年代後半からはシカゴ歌劇場を主な拠点として活動し、数多くの新作オペラの初演にも参加しました。

1959年には、NHKイタリア歌劇団の一員として来日し、ヴェルディの『オテロ』でマリオ・デル・モナコと共演し、日本のオペラファンを熱狂させました。1979年に惜しまれつつも舞台から引退しましたが、1960年代からはオペラの演出にも意欲的に取り組み、晩年は後進の育成に情熱を注ぎました。1984年3月5日、滞在先のローマで生涯を閉じました。

人物

ゴッビのレパートリーは非常に幅広く、ロッシーニの『セビリアの理髪師』のフィガロ、ヴェルディの『ファルスタッフ』、プッチーニの『ジャンニ・スキッキ』のような喜劇的な役から、ヴェルディの『オテロ』のイヤーゴ、プッチーニの『トスカ』のスカルピア男爵といった悪役まで、100近い役柄をこなしました。

特に、『トスカ』のスカルピア役は、1953年のスタジオ録音全曲盤（ヴィクトル・デ・サバタ指揮、マリア・カラス、ジュゼッペ・ディ・ステファーノ共演）が今日でも名盤として高く評価されています。また、イヤーゴ役では1959年の東京公演でのマリオ・デル＝モナコとの共演、スカルピア役では1958年のパリ、そして1964年のロンドンでのカラスとの共演（ただし第2幕のみ）が映像として記録されており、彼の卓越した演技を垣間見ることができます。第二次世界大戦終戦直後には、映画にも多数出演し、ジーナ・ロロブリジーダとも共演しています。

マリア・カラスとは公私にわたる親友であり、彼女の人柄、エピソード、芸術性について数多くのコメントや著述を残しています。著書には自伝"My Life"や"Tito Gobbi and His World of Italian Opera"があります。また、バス歌手のボリス・クリストフは義兄弟にあたります。

ティート・ゴッビは、その歌唱力はもちろんのこと、役柄への深い理解と卓越した演技力で、オペラ界に大きな足跡を残しました。

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