テレビ三面記事 ウィークエンダー

『テレビ三面記事 ウィークエンダー』は、1975年4月5日から1984年5月26日まで、日本テレビ系列局を中心に放送されたワイドショー番組です。全465回が制作され、日本テレビでは毎週土曜日の夜10時台に生放送されていました（初期は22:00-22:55、後に22:00-22:54）。一部の放送局では録画による時差ネット形式で放送されていました。

この番組の大きな特徴は、全国的な主要ニュースでは扱われないような、いわゆる「B級」とされる事件や出来事を掘り下げて伝えた点にあります。リポーターがスタジオでフリップボードを使用したり、事件の状況を再現フィルムで表現したりしながら解説する独特の手法が用いられました。生放送ならではの臨場感もあり、司会の加藤芳郎がプロ野球の結果を速報するといった場面も見られました。

番組は常に30%を超える驚異的な視聴率を記録し、当時の日本テレビを代表する看板番組の一つとなりました。そのルーツは、同時期に朝のワイドショー『あなたのワイドショー』内で放送されていた「テレビ三面記事」という類似コーナーにあり、それを週末の夜というより視聴しやすい時間帯に移し、夜間帯や男性層を意識した事件内容に焦点を当てて展開させたスピンオフ番組と言えます。泉ピン子、大山のぶ代、桂朝丸（後の桂ざこば）、高見恭子、青空はるおといった個性豊かな出演者たちが、時にコミカルな語り口で事件を伝え、特に泉ピン子はこの番組を通じてその知名度を飛躍的に向上させました。スタジオでのリポートが中心という簡素な番組構成でありながら高い視聴率を上げたことから、プロデューサーの細野邦彦は「最も少ない予算でヒットを生み出す名人」と称されました。

「ウィークエンダー」という番組タイトルは和製英語ですが、かつて同局で放送されたバラエティ番組『ウィーク・エンド・イン』に由来するとされており、スタッフ間の会話から自然に決定されたと言われています。

番組の冒頭はタイトル表示、提供クレジット、CM、再びタイトル、出演者・スタッフ紹介、オープニング、そして最初の事件解説という流れでした。エンディングでは、「来週こそいい週でありますように… おやすみください」というメッセージボードが掲げられ、視聴者に語りかけるような締めくくりが印象的でした。年末の最終放送では「来年こそいい年で」、新年初回放送では「今年もいい年でありますように…」とメッセージが変わる演出もありました。

番組は1984年の終了時でも約20%の視聴率を維持しており、内容的には好調でしたが、提供スポンサーが30分の番組枠を2つ持ちたいという営業的な事情により、惜しまれつつその歴史に幕を下ろしました。

番組で取り上げられた話題は多岐にわたりましたが、特に性犯罪や男女間のトラブルに絡む殺人事件、未成年者との性行為などが比較的多く扱われました。しかし、当時の番組表を確認すると、地震などの災害や一般的な殺人事件といったニュース性の高い事件も少なからず報じられていました。番組終了の1984年には、社会に大きな衝撃を与えたグリコ・森永事件やロス疑惑、そして当時は原因不明の難病として世界中で恐れられ始めていたエイズといった話題も取り上げています。また、医療法人「徳洲会」についても、その存在が世間に知られるようになった頃に、「24時間診療可能」「患者優先の姿勢」といった点から好意的な視点で紹介した回もありました。

高い人気を誇った一方で、その表現手法や内容には常に「過激すぎる」「興味本位だ」といった批判が寄せられました。1978年には、日本PTA全国協議会が発表する「子供に見せたくない番組」のワースト7にランキングされています。放送当時には、『テレビ腐蝕検証』や『テレビよ、驕ることなかれ』といった書籍でも、番組の青少年への悪影響（特に性描写に関連して）、事件の関係者への配慮の不足、報じられる情報の真偽などが問題視され、厳しく非難されました。

特に大きな騒動となったのは、1975年10月18日の放送回で、ストリップ小屋への警察の摘発事件を取り上げた際に、出演者の泉ピン子が「スパっと脱いで一日8万円なら、私もやりたいわ」と発言したことです。これに対し、ストリッパーで組織された「日本成人実演舞踊協団」が強く抗議しました。彼らは発言そのものだけでなく、既に決着していた事件を面白おかしく蒸し返す番組の姿勢にも憤慨し、今後日本テレビの番組には一切出演しないと表明。同年12月29日に予定されていた同局の特別番組への所属ストリッパー30名の出演拒否を通告し、さらに他の団体にも協力を呼びかけ、テレビ各局への出演をボイコットする方針を示したため、一時的にテレビでストリップが見られなくなるかもしれないという事態に発展しました。その後、関係者間で和解が成立し、予定されていた番組は無事放送されました。

また、番組開始初期の「再現フィルム」は、殺人事件を非常にリアルに描写していたため、放送開始後すぐに抗議が殺到しました。これらの苦情は番組制作部署だけでなく、インフォメーションセンターや報道部にまで及び、当時の朝日新聞の読者意見欄『0023コーナー』では、この番組に関する意見があまりに多かったため、急遽特集が組まれるほどでした。果ては司会の加藤芳郎の自宅にまで「変な番組に出るな」「ふざけるな」といった抗議の電話がかかってくる事態となりました。こうした事態を受け、一度「再現フィルム」コーナーは中止されました。復活する際には、犯人の名前など個人を特定できる情報は仮名とし、顔写真のフリップには目隠しを入れるなどの配慮がなされるようになりました。同時に、殺人事件だけでなく、覗きや恐喝、トルコ風呂といった多種多様な事件も再現フィルムで扱われるようになりました。

番組の司会は、漫画家の加藤芳郎が務めました。彼の入院期間中には、青空はるおが代理を務めたこともあります。番組開始当初のリポーターとしては、青空はるお、天地総子、大山のぶ代、西川きよし、野沢那智などがレギュラー出演していました。その後、桂朝丸、泉ピン子、横山やすし、高見恭子、エド山口、芸能リポーターの井口成人など、様々なタレントや文化人が参加しました。桂朝丸が番組を離れてからは、桂べかこ、春やすこ、番組最後の1年間は桂雀々が後任を務めました。後に政治家となった山谷えり子や、『Gメン'75』の主題歌で知られるしまざき由理もリポーターを務めた時期があります。

番組を象徴するものとして、ナレーターの小早川正昭（元日本テレビアナウンサー）による「新聞によりますと…」という語り出しと、クインシー・ジョーンズ作曲の米ドラマ『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲が組み合わされた事件解説への導入が挙げられます。

事件の状況を視覚的に伝える役割を担った「再現フィルム」には、柳沢慎吾、山口良一、大地康雄、清水大敬（清水のぼる）といった俳優が出演しました。中でも、お笑いタレントの笑福亭鶴光に風貌が似ていた俳優の高嶋洋は、コメディ要素のある役柄や奇妙な人物を演じることが多く、常連出演者として知られました。

年末には特別番組として、その年に起きた事件の総集編「イヤーエンダー」が放送されました。番組が開始された1975年と翌1976年の大晦日には、夜7時台から2時間のスペシャル番組として放送され、番組終了後の1984年の大晦日にも、NHK紅白歌合戦の裏番組として「イヤーエンダー'84お騒がせ事件総集編」が放送されています。

また、2005年と2006年の大晦日には、メイン司会に泉ピン子を据え、『ピン子のウィークエンダーリターンズ』として21年ぶりに復活特番が放送されました。2005年は2時間の放送で、その年に発生した奈良騒音傷害事件などが取り上げられ、裏番組を上回る視聴率を記録しました。2006年は3時間に拡大して放送されましたが、視聴率は低迷しました。これらの復活版では、スタジオ出演者のトークが中心で、再現フィルムはほとんど使われず、オリジナルの番組とは趣が異なる内容でした。

この番組は、同業他局からも注目されていました。裏番組として本番組に視聴率で苦戦していた時期のTBSテレビの役員は、「我が局にこれほど思い切った番組を作れる人材がいれば…」と評価したと伝えられています。また、NHKでドキュメンタリー番組を多数手がけたディレクターの相田洋も、『ウィークエンダー』の登場を日本のテレビ番組史における重要な出来事と位置づけています。彼は、番組で扱われた素材の内容はさておき、その「方法論」には学ぶべき点が多いとし、たとえ映像が撮れなくてもリポーターが現場に赴き、得た情報を自らの言葉で視聴者に語りかけることの重要性を訴えました。相田自身も、1998年にNHKスペシャル『マネー革命』を制作した際に、「私たちは首から上の『ウィークエンダー』を目指そう」とスタッフへの檄文に記したと語っており、BS自動車の解説番組などで自ら出演して語るスタイルでこれを実践しました。

推理作家の岡嶋二人が執筆した長編小説『とってもカルディア』と短編連作『三度目ならABC』には、この番組で使われたような事件の再現フィルム制作を専門とする会社が舞台として登場しており、番組が当時の文化に与えた影響の一端が見られます。岡嶋二人のペンネームの一人である井上夢人は映像制作会社出身と言われていますが、本番組への関与は明確ではありません。

放送当時はPTAなどから常に問題視されていたことや、1970年代までの放送用VTRが高価で扱いにくかった技術的な制約が重なり、残念ながら番組の映像はほとんど現存していません。横浜市にある放送ライブラリーにも、この番組の映像は一切保存されていない状況です。例外として、2003年に放送された『ダウンタウンのバラエティ50年史』や2008年の『THE・サンデー』といった特別番組や報道番組で、ごく一部の映像（出演者の様子や過去の総集編）が使用された例があるのみです。

番組で使用された主な楽曲としては、タイトルバックにチェイスの「Bochawa」、オープニングテーマにバリー・ホワイト（ラブ・アンリミッテッド・オーケストラ）の「ラプソディ・イン・ホワイト」が使われました。事件解説の導入部で流れるアタック音やアイキャッチには、クインシー・ジョーンズによる『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲が使用されました。エンディングではGQの「I do love you」が流れました。

当時の日本テレビ系列は現在に比べてフルネット局が少なく、また土曜夜10時台がローカルセールス枠であった影響もあり、ネット局は比較的限られていました。しかし、遅れネットや、午前0時台といった深夜帯での放送、さらには既存の系列局ではなく他系列の放送局で放送されたケース（青森県の青森テレビ、愛媛県のテレビ愛媛など）もあり、そのネット形態は多様でした。大晦日の特別番組のみをネットしていた局も多数存在します。

主なスタッフには、監修に円山法律事務所、ナレーターに小早川正昭、構成に池田淳や山崎忠昭、演出に萩原雪彦や森岡正彦、そしてプロデューサーとして細野邦彦などが名を連ねていました。2005年、2006年の復活特番でも、泉ピン子司会のもと、当時の番組を意識したスタッフ編成が行われました。

この番組をモデルにした作品もいくつか存在します。1976年の東映映画『戦後猟奇犯罪史』は、本番組のスタジオを模したセットで泉ピン子が進行役を務める形式で、実際の犯罪事件を再現するオムニバスドラマでした。また、橋田壽賀子脚本のTBS系ドラマ『おんなは一生懸命』の劇中には、本番組をモデルにした架空のテレビ番組『お笑い事件簿』が登場しています。

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