デヴィッド・ボウイ・ライブ

『デヴィッド・ボウイ・ライブ』（原題：David Live）は、イギリスを代表するロック・ミュージシャン、デヴィッド・ボウイにとって初めて世に送り出された公式ライブ・アルバムです。この歴史的な作品は、1974年の夏、具体的には7月にアメリカ合衆国ペンシルベニア州アッパー・ダービーに位置するタワー・シアターで行われた公演の模様を記録したもので、同年10月にRCAレコードよりリリースされました。

アルバムが捉える時代

このアルバムが録音された1974年という時期は、デヴィッド・ボウイの音楽性が大きな変化を遂げようとしていた節目にあたります。グラムロックの頂点を極めた『ジギー・スターダスト』や『アラジン・セイン』といったアルバム群を生み出した時代から、ソウルやR&Bのエッセンスを取り入れた『ヤング・アメリカンズ』に代表される「プラスチック・ソウル」へとサウンドをシフトさせていく、まさにその過渡期にボウイがいたのです。『デヴィッド・ボウイ・ライブ』は、その変遷期におけるボウイのライブパフォーマンス、そして彼が率いるバンドのサウンドを生々しく捉えた貴重な記録と言えます。

収録曲と制作背景

アルバムに収録された楽曲は、当時の最新スタジオアルバムであった『ダイアモンドの犬』と、その前作『アラジン・セイン』からのナンバーが中心を占めています。それに加えて、『ジギー・スターダスト』発表以前のキャリア初期からの代表曲も披露されており、幅広い時代の楽曲を楽しめます。また、彼が1972年にモット・ザ・フープルへ提供し、バンドのアンセムとなった「すべての若き野郎ども（All the Young Dudes）」のセルフカバーも収録されている点は特筆に値します。

録音されたライブ音源は、ニューヨーク市のエレクトリック・レディ・スタジオにて、同年7月にミックス作業が行われました。この時期は、後にプラスチック・ソウル期の幕開けを告げるアルバムとなる『ヤング・アメリカンズ』のレコーディング・セッションが始まるわずか1ヶ月前のことでした。なお、2004年に行われたスタジオ関連のアセテート盤オークション情報によると、当初の仮タイトルは「"Wham Bam! Thank You Mam!"」であったと伝えられています。

ライブパフォーマンスの特色

アルバム全体を通して、当時のボウイが持つ独特のステージングやエネルギーが伝わってきます。特に、後年の2005年版に追加収録された「スペイス・オディティ（Space Oddity）」では、ボウイがステージ上で高所作業用のクレーンを使って昇降しながら、電話機を模した特注のラジオマイクを用いて歌唱したという、視覚的にも凝ったパフォーマンスが行われたことが知られています。これは、当時の彼のライブがいかに演劇的な要素を含んでいたかを示す一例と言えるでしょう。

評価と商業的成功

リリース当時、『デヴィッド・ボウイ・ライブ』は商業的にも大きな成功を収めました。故郷イギリスではアルバムチャートで最高2位を記録し、カナダでは5位、そしてアメリカ合衆国でも8位にランクインするなど、主要各国でトップ10入りを果たしています。また、アルバムからのシングルカットとしてリリースされた「ノック・オン・ウッド（Knock on Wood）」は、イギリスのシングルチャートで10位に達するヒットとなりました。

再リリースと複数のバージョン

このアルバムは、その後の時代に何度か再リリースされており、それぞれに異なるバージョンが存在します。

初めてCD化されたのは1990年で、ライコディスクとEMIから共同でリリースされました。このCD版では、アナログレコードの収録時間の制約から漏れていた「時間（Time）」、「Here Today, Gone Tomorrow」、そして「バンド・イントロ（Band Intro）」が追加収録され、より完全な形でライブを体験できるようになりました。

さらに、2005年にはヴァージン・レコードから新たなバージョンが登場しました。この2005年版では、1990年版の追加曲に加えて、「デトロイトでのパニック（Panic in Detroit）」と、前述の「スペイス・オディティ」の計2曲が新たに追加されました。また、この時には高音質の5.1サラウンドミックスを収録したDVD-Audio盤も発売されています。

2016年にリリースされたボックス・セット『フー・キャン・アイ・ビー・ナウ？(1974–1976)』には、『デヴィッド・ボウイ・ライブ』が2つの異なるバージョンで収録されました。一つは1974年のオリジナルLPの構成を再現したバージョン、そしてもう一つは、長年のコラボレーターであるトニー・ヴィスコンティによって新たにミックスされ、さらに4曲が追加された2005年版を基にしたバージョンです。このトニー・ヴィスコンティによる新ミックス版は、2017年にはボックスセットから独立して、2枚組CDおよび3枚組LPとしても単独でリリースされています。

参加ミュージシャン

このツアー及びアルバムの録音に参加した主要ミュージシャンは以下の通りです。

デヴィッド・ボウイ - ボーカル
アール・スリック - ギター
ハービー・フラワーズ - ベース
マイケル・ケイメン - エレクトリックピアノ、ムーグ、オーボエ、編曲
トニー・ニューマン - ドラム
パブロ・ロサリオ - パーカッション
デビッド・サンボーン - アルトサックス、フルート
リチャード・グランド - バリトンサックス、フルート
マイク・ガーソン - ピアノ、メロトロン
ガイ・アンドリサノ - バックボーカル
* ウォーレン・ピース - バックボーカル

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