トゴン

トゴン・タイシ：15世紀オイラトの首長、モンゴル統一を成し遂げた英雄

トゴン・タイシ（生年不詳 - 1440年）は、15世紀中頃に活躍したオイラトの首長です。彼は、当時のモンゴルを統一するという偉業を成し遂げました。

生涯

出自

『蒙古源流』によると、トゴンはバトラ丞相（マフムード）とエルベク・ハーンの娘サムル公主の間に生まれました。幼名はバクムといいました。

若き日

バトラ丞相はケレヌートのオゲチ・ハシハに殺害され、オゲチ・ハシハ自身も天罰で亡くなったため、その息子のエセクがオイラダイ・ハーンを擁立し、サムル公主を娶ってバクムも引き取りました。サムル公主はオゲチ・ハシハに虐げられたことを恨み、後のアダイ・ハーン、アルクタイ・タイシを逃がしますが、バクムはオイラトの仇敵であるモンゴルを利するような行為を責め立てました。

その後、アダイがハーンに即位するとオイラトを攻め、バクムは捕虜となりました。鍋をかぶせて召し使ったことからトゴンと名付けられたといいます。アダイ・ハーンの下でトゴンはアルクタイやモンゴルジン部のモンケベイといった人物の敵意の中で過ごしましたが、やがてサムル公主に引き取られてオイラトに帰還しました。トゴンはオイラトに戻るとすぐにドルベン・オイラト（四オイラト）の代表者を招集し、ドチン・モンゴル（四十モンゴル）を攻める軍を出発させました。

オイラトの指導者へ

父マフムードの死後、トゴンはオイラトの指導者となります。しかし、当初はタイピンやバト・ボラドといった有力者に主導権を握られていました。モンゴルでは、アルクタイが勢力を拡大していましたが、明の永楽帝がこれを警戒し、モンゴルへの遠征を行います。この機会に乗じて、トゴンはアルクタイへの攻撃を開始し、1423年にこれを打ち破りました。

モンゴル統一

1431年頃、明の支配下にあったトクトア・ブハがモンゴリアへ向かい、トゴンによって迎えられました。当時、トゴンは自らハーンとなることを望んでいましたが、「チンギス・カンの子孫以外はハーンとなれない」というチンギス統原理によって断念せざるを得ない状況でした。そこでトゴンは、トクトア・ブハを擁立することでモンゴルの部衆の支持を得ようとしました。1433年、トクトア・ブハはハーンに即位し、タイスン・ハーンと称しました。

タイスン・ハーンを擁立することで正当性を得たトゴンは、アルクタイへの攻勢を強めます。まず、ガハイウルンでのタイスン・ハーンとの戦いでアルクタイを破り、アルクタイはモナ山（現在のダルハン・ムミンガン連合旗）に逃れますが、そこでトゴンによって滅ぼされました。これにより、トゴンはモンゴルの大部分を制圧し、アルクタイの旧領の統治は主にタイスン・ハーンに任せられました。

一方、アルクタイに擁立されたアダイ・ハーンはアラシャー地方に逃れており、そこで明朝とオイラトという二大勢力に挟まれつつ余命を保っていました。しかし1436年-1437年に明・オイラト双方から攻撃を受けて衰退し、1438年にはオイラトの攻撃によって滅ぼされました。

死

1439年まではトゴンによる朝貢の記録が残っていますが、1440年にはその子のエセンが使者を派遣しており、1439年-1440年頃にトゴンは亡くなったと考えられています。トゴンの死後、一時的に長男のエセンと次男の間で争いが起こったようですが、最終的にはエセンがトゴンの地位を受け継ぎました。

死後

トゴンの死後、息子のエセンがその地位を継承し、更なる勢力拡大を目指しました。エセンは、明との間で「土木の変」を引き起こし、一時は明の皇帝を捕虜にするなど、その勢威を内外に示しました。

まとめ

トゴン・タイシは、15世紀のモンゴルにおいて重要な役割を果たした人物です。彼は、オイラトを率いてモンゴルを統一し、その勢力を拡大しました。彼の死後も、その影響力は息子のエセンによって引き継がれ、モンゴルの歴史に大きな足跡を残しました。

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