トボリスク

トボリスク：シベリアの歴史と文化が交差する街

トボリスクは、ロシア連邦チュメニ州に位置する都市で、トボル川とイルティシュ川の合流地点にあります。1587年にロシア人によって建設され、ウラル山脈以東では2番目に古いロシアの居留地となりました。シベリアの歴史的な中心地であり、その長い歴史の中で、政治、軍事、文化、宗教の中心として重要な役割を果たしてきました。かつては「トボルスク」とも表記されていました。

地理と概要

トボリスクは、ウラル山脈の東側、トボル川とイルティシュ川の合流点に位置しています。チュメニからは北東に約247km離れています。1820年代に西シベリア総督府がオムスクに移されるまで、シベリアの中心都市として機能していました。1917年まではトボリスク県の県都でした。この地域は、かつてシビル・ハン国の首都イスケルに近かった場所とされています。

歴史

シビル・ハン国の征服

16世紀後半、コサックのイェルマークが、ロシア・ツァーリ国のシベリア征服を開始しました。1582年、イェルマークはシビル・ハン国の首都カシリク（イシュケル）を攻略し、クチュム・ハーンを追放しました。しかし、クチュム・ハーンはその後も抵抗を続け、1584年にはイェルマークを討ち取りました。1598年、クチュム・ハーンはコサックに敗北し、シビル・ハン国は滅亡しました。

トボリスクの建設と17世紀ロシア帝国

17世紀、ロシア人はシベリアへの進出を本格化させました。1587年には、ダニール・グレゴリーエヴィチ・チュルコフが率いるロシア軍によって、チュメニに次いでトボリスクが建設されました。トボリスクは、シベリアの河川交通の要所として発展しました。また、シベリアの広大な領域を統治するため、1601年頃にはトボリスクに初のシベリア管区長官が置かれ、シベリアにおける行政の中心となりました。1621年にはシベリア初のロシア正教主教座が設立され、1649年にはシベリアが公式に流刑地となりました。

ピョートル大帝とエカテリーナ2世の地方行政改革

18世紀初頭、ピョートル大帝の改革により、シベリア全域は一つの県（グベールニヤ）となり、トボリスクにはシベリア県の総督府が置かれました。シベリア初の学校や劇場が建設され、新聞も発行されました。また、大北方戦争で捕虜となったスウェーデン兵士が大量にトボリスクに送られ、都市の発展に貢献しました。1764年にはシベリア県が二つに分割され、その後エカチェリーナ2世の治世下で、トボリスクは主管区の一つとなりました。

汚職天国

19世紀初頭、アレクサンドル1世の信任を受けたミハイル・スペランスキーは、シベリアの汚職を告発しました。1822年には「シベリア諸県統治制度」が発布され、トボリスクには西シベリア総督府と会議が置かれました。しかし、1820年代から1830年代にかけて、トボリスクの総督府はオムスクに移転しました。トボリスクの権威は認められ、オムスクやチュメニなど、シベリアの多くの町がトボリスクの紋章を参考に独自の紋章を作成しました。

19世紀から帝政末まで

1825年のデカブリストの乱の後、多くのデカブリストがシベリアに追放され、トボリスクにも移住しました。1890年にはシベリア鉄道の路線がトボリスクを迂回したため、都市の重要性は低下しました。20世紀初頭には、トボリスクはロマノフ皇帝一家に大きな影響を与えたグレゴリー・ラスプーチンの故郷に近い地域として注目されました。

革命と内戦

1917年2月革命によりロシア帝国が崩壊し、ニコライ2世一家は一時的にトボリスクに避難しました。しかし、10月革命後、ボリシェヴィキがトボリスクで権力を掌握し、皇帝一家はエカテリンブルクに移送され、その後殺害されました。

ソ連時代

1920年の行政改革により、トボリスク県は廃止され、地方行政の中心としての役割を終えました。その後、チュメニ州のウエズドの行政中心となり、幾度かの行政区画の変更を経て、最終的にチュメニ州に属することとなりました。

ロシア連邦

1996年、トボリスクはチュメニ州から独立した都市となりました。2013年には、ロシア最大のポリプロピレン生産施設が建設されました。現在、トボリスクはその歴史的遺産や自然景観により、シベリア観光の拠点として、またロシア正教会の重要な教育拠点としても知られています。

著名な流刑者や滞在者

アヴァクームなどの著名な流刑者や滞在者がトボリスクの歴史に名を刻んでいます。また、日本の漂流民である大黒屋光太夫の見聞録をまとめた「北槎聞略」には、当時のシベリアの様子が記録されています。

気候

トボリスクは亜寒帯湿潤気候に属し、冬は非常に寒く、夏は温暖です。年間を通して適度な降水量があり、特に夏にやや多くなります。

人口と民族構成

2010年のデータによると、トボリスクの人口の大部分はロシア人で、次いでタタール人、ウクライナ人などが住んでいます。

姉妹都市

トボリスクは、アメリカ合衆国のカウンシルブラフス、コソボのペヤ、ベラルーシのマヒリョウと姉妹都市提携を結んでいます。

著名な出身者

メンデレーエフ（元素の周期律表を発見した化学者）、ニコライ・アファナシエフ（作曲家）などがトボリスクの出身です。

トボリスクは、その長い歴史と文化、そして自然景観により、シベリアの中でも特別な場所です。シベリアの歴史を深く知る上で、トボリスクは欠かせない都市と言えるでしょう。

もう一度検索