トルキスタン・シベリア鉄道

トルキスタン・シベリア鉄道（トゥルクシブ）

トルキスタン・シベリア鉄道、通称トゥルクシブは、中央アジアとシベリアを結ぶ大動脈として重要な役割を果たしています。ロシア語では「Туркестано-Сибирская магистраль」と表記され、その名の通り、トルキスタン（中央アジア）とシベリアを結んでいます。軌間はロシア式の広軌1,520mmを採用しています。

歴史

鉄道構想の初期

シベリアとトルキスタンを結ぶ鉄道の構想は、19世紀後半の1886年に遡ります。当初は、タシュケントとウラル地方のオレンブルクを結ぶトランス・アラル鉄道が優先されました。しかし、アルマトイのドゥーマ（議会）が1896年にトルキスタン・シベリア鉄道の建設是非を検討する委員会を設立。その結果、トルキスタンからの綿花輸送、シベリアからの穀物輸送、そして中国国境付近への軍隊移動に有効であると判断されました。

1906年、帝政ロシアはバルナウルとタシュケント北部のアルスを結ぶ鉄道建設を決定。ロシア人技術者たちは、ステップ地帯や半砂漠地帯への鉄道敷設に向けた研究を進めました。1915年には、ノヴォシビルスクとセミパラチンスク（現在のセメイ）を結ぶ区間が「アルタイ鉄道」として着工されました。残りの区間はフランスの資金提供によりロシアの民間企業が建設する予定でしたが、第一次世界大戦の勃発により計画は中断されました。

ソ連時代

十月革命後、工事は10年以上中断されました。アレクサンドル・コルチャーク率いる白軍が1918年から1919年にかけて建設した140kmの区間は破壊されました。第一次五ヶ年計画中の1930年に、残りの1,442kmを含む全線が開通。鉄道建設を描いたドキュメンタリー映画「トゥルクシブ」が製作されるなど、大々的に宣伝されました。しかし、その陰では、イングリアから追放されたエストニア人やフィンランド人など、グラグ（強制収容所）に収容された人々が過酷な労働に従事させられました。

開通後

トルキスタン・シベリア鉄道の開通後、シュウで合流するカザフスタンの南北幹線が開通し、カラガンダ、ヌルスルタン、ペトロパブルなどが結ばれました。1990年には、アルマトイとセメイの間にあるアクトガイ駅に新線が接続。ここから東へ向かうと、ドストゥク（ドルージュバ）を経て中国の新疆ウイグル自治区にある阿拉山口駅に接続し、北疆線へと繋がります。西へ向かうと、カザフスタンのバルハシやカラガンダにアクセスできます。

ルート

ウズベキスタンのタシュケントから出発し、北方のアルス（アルィーシ）でトランス・アラル鉄道から分岐します。そこから北東へ進み、シムケント、タラズ、キルギスの首都ビシュケク、カザフスタン最大の都市アルマトイを経由して北へ転じます。セメイを過ぎてロシアに入り、バルナウルを経由してノヴォシビルスクに到達し、シベリア鉄道に接続します。

主要駅

ノヴォシビルスク
バルナウル
セメイ
アクトガイ
アルマトイ1駅 / アルマトイ2駅
シュウ
タラズ
シムケント
アルス
タシュケント

支線

ドストゥク支線: アクトガイ - ドストゥク - （中国）阿拉山口（北疆線）
アルティンコリ支線: ジェティゲン - アルティンコリ - （中国）コルガス（精伊霍線）
ビシュケク支線: ルゴヴォイ - ビシュケク
ビシュケク・バルイクチ支線: ビシュケク - バルイクチ

現代における役割

現在でも、トルキスタン・シベリア鉄道は中央アジアとシベリアを結ぶ重要な輸送ルートであり、地域経済の発展に大きく貢献しています。中国との接続も強化され、ユーラシア大陸における物流の大動脈としての役割を担っています。

関連項目

ロシア鉄道
カザフスタン鉄道
ウズベキスタン鉄道
キルギス鉄道
K9795/9796次列車
K9797/9798次列車
北疆線
精伊霍線

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