ナコーンサワン県

ナコーンサワン県

タイ北部に位置するナコーンサワン県（タイ語: จังหวัดนครสวรรค์）は、「天国の都市」という美しい名を冠する県です。かつては、河川の合流点を指すパークナムポーという古称でも知られていました。県の周辺は、北にカムペーンペット県とピチット県、東にピチット県、ペッチャブーン県、ロッブリー県、南にチャイナート県とウタイターニー県、西にターク県と接しており、多様な地理的環境に囲まれています。

地理

ナコーンサワン県の地理的な特徴の中で最も重要なのは、タイを代表する二つの大河、北から流れるピン川と東から流れるナーン川が県内で合流し、ここからタイの主要水運路であるチャオプラヤー川が始まる地点であることです。この河川の合流点は、古くから水上交通における結節点として極めて重要な役割を担ってきました。また、県内にはタイ国内で最大の面積を持つ湖沼、ボーラペット湖が広がっています。その広さは約212平方キロメートルに達し、豊かな湿地生態系を育んでいます。この湖沼は特に多くの種類の水鳥たちにとって重要な生息地となっており、その生態系保護のため、一部の区域は禁漁区に指定されるなど、自然環境の保全が進められています。

歴史

ナコーンサワンの歴史は古く、ドヴァーラヴァティー王国時代にまで遡ると考えられています。その後、スコータイ王朝の時代には、王国の南側を守る前衛都市としての役割を果たし、ムアン・プラバーンという名で呼ばれていました。ピン川とナーン川の合流点という地理的な優位性は、アユタヤ王朝時代においてもナコーンサワンの重要性を高めました。この時代、ナコーンサワンは物流の中心地として繁栄を享受する一方で、ビルマ（現在のミャンマー）軍がアユタヤへ侵攻する際の主要な経路上に位置していたため、軍事的な要衝としても注目されました。アユタヤ陥落後の混乱期には、タークシン王がこの地を一時的な拠点として利用した記録も残っています。

近代に入り、1855年にラーマ4世（モンクット王）が英国との間でボウリング条約を締結し、タイが開国して国際貿易が盛んになると、ナコーンサワンの経済は大きく発展しました。特に米やチーク材といった主要産品の取引の中心地として、ナコーンサワンは新たな繁栄期を迎えました。しかし、時代の変化と共にその重要性は相対的に低下していきます。1922年にタイ国鉄が開通し、内陸部への鉄道網が整備されたこと、1932年の立憲革命前の世界恐慌が経済に影響を与えたこと、そして1950年に主要道路であるパホンヨーティン通りが完成し、陸上輸送が発展したことなどが複合的に影響し、かつての物流拠点としての中心的地位は変化していきました。

行政組織の変遷としては、1895年にラーマ5世（チュラーロンコーン王）によって広域行政区画であるモントン制度が導入された際に、ナコーンサワンはそのモントン・ナコーンサワンの中心地として位置づけられ、この地域の統括拠点となりました。

行政区画

現在のナコーンサワン県は、行政的に15の郡（アムプー）に区分されています。さらにその下位には130のタムボン（地区や準郡に相当）があり、末端の行政単位として1328の村（ムーバーン）が設置されています。これにより、県全体の広範囲にわたる地域が効率的に管理されています。

もう一度検索