ニュー・ロック (音楽)

ニュー・ロックとは

「ニュー・ロック」という言葉は、1970年前後、特に1960年代末から1970年代初頭にかけて、ロック音楽の新たな動向を指すために用いられました。この言葉は、既存のロック音楽とは異なる、革新的な要素を持つバンドや作品を分類するために使われました。

ニュー・ロックの誕生と変遷

「ニュー・ロック」という言葉は、1960年代末に日本のレコード会社が、音楽のジャンルを分類するために使い始めたと言われています。当初は「新しいロック」という意味合いで使用されましたが、その定義が曖昧であったことや、時代とともに音楽シーンが変化したことにより、次第に使われる機会が減っていきました。

「ニュー」という言葉が示す「新しい」とは、1960年代に流行したロックを「古い」と定義し、それに対する概念として用いられました。ここでいう「古い」ロックとは、ブルースやカントリーを基調としたメロディーや編曲、狭義のロックンロール、ロカビリーなどを指します。また、シングルレコードに収まる短い収録時間の楽曲も、「古い」ロックの特徴とされていました。

一方、「ニュー・ロック」は、これらの制限にとらわれず、音色や音量、歌唱法、演奏形態、曲の長さなどにおいて、より自由な感覚と技法を取り入れた音楽を指します。特に、プログレッシブ・ロックは、クラシックやジャズ、民族音楽といった異質なジャンルの要素を積極的に取り入れ、それを前面に押し出す傾向がありました。ただし、音楽の根底にはロックの要素があり、その技法はロックから逸脱しないという点が特徴です。

1960年代末から1970年代初頭にかけて、10代後半から20代の若者を中心に人気を集めたロック音楽やバンドが「ニュー・ロック」と呼ばれていました。ハードロックも初期の頃は「ニュー・ロック」として扱われていました。

海外の代表的なミュージシャン

海外では、テン・イヤーズ・アフター、クリーム、フリー、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンなどのイギリスのバンドや、アンボイ・デュークス、MC5、ザ・ストゥージズ、ジャニス・ジョプリン、グランド・ファンク・レイルロードなどのアメリカのアーティストが「ニュー・ロック」の代表的なミュージシャンとして挙げられます。

日本のニュー・ロック

日本では、1960年代のグループ・サウンズ・ブーム時代に、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズに影響を受けたバンドが多く登場しました。その中で、ザ・ゴールデン・カップス、ザ・モップス、PYGなどが、UKロックの影響を強めた後、「ニュー・ロック」と呼ばれるようになりました。グループ・サウンズ・ブームの退潮期には、柳ジョージのパワーハウスのように、英米の最新ロック、特にアイアン・バタフライに影響を受け、エフェクターなどの最新機材を使用したバンドも登場しました。また、ブルースやソウル音楽の影響を受けたウエスト・ロード・ブルース・バンドや上田正樹とサウストゥサウスなどは、1972年以降のデビューであったため、「ニュー・ロック」とは呼ばれないことが多かったようです。

1990年代後半には、旧譜再発企画「ニューロックの夜明け」シリーズが企画され、プログレッシブ・ロックなども「ニュー・ロック」として分類されるケースが多く見られました。この企画は、1970年前後の日本のロック系ミュージシャンのアルバムを再発するものでした。

主なミュージシャン／グループ

以下は、「ニュー・ロック」に分類されることの多い代表的なミュージシャンやグループです。

グランド・ファンク
フリー
カルメンマキ
コンディション・グリーン
ジャックス
頭脳警察
タージ・マハル旅行団
BOWWOW
パワー・ハウス
PYG
フラワー・トラベリン・バンド
ブルース・クリエイション
紫
村八分
ザ・モップス
四人囃子
外道

まとめ

「ニュー・ロック」は、1970年前後という特定の時期に、ロック音楽の新たな展開を示す言葉として使われました。その定義は曖昧な部分もありますが、従来のロックの枠にとらわれず、様々な音楽ジャンルを取り込みながら、新たな表現を追求した音楽を指します。今日では、この言葉が使われることは少なくなりましたが、当時の音楽シーンを語る上で重要なキーワードとなっています。

参考文献

黒沢進『日本ロック紀GS編 コンプリート』シンコー・ミュージック、2007年

もう一度検索