ネチェルカラー

ネチェルカラーについて

ネチェルカラー（Netjerkare）は古代エジプト第6王朝に属するファラオであり、7代目の君主です。彼はこの王朝の最後の王とされており、一部の研究者は彼を第7王朝の初代として位置づけることもあります。このことから、彼はエジプト古王国時代の終焉を象徴する重要な人物となっています。

彼の治世は紀元前22世紀の初頭にさかのぼり、当時エジプトではファラオの権力が衰え、地方の州侯たちの力が増大していく転換期でした。このような背景の中で、ネチェルカラーの存在は特に注目されています。興味深いことに、彼は男性であるにもかかわらず、古代の歴史家ヘロドトスやマネトによって伝説の女王ニトクリスと同一視されることがあります。

プラエノーメンとサー・ラー名について

ネチェルカラーのホルス名である「ネチェルカラー」は、エジプトの王名表『アビドス王名表』の40番目に記載されています。この王名表はセティ1世の治世の時代に編纂され、メルエンラー2世の後に位置づけられています。また、大英博物館に所蔵されている出所不明の銅器にも彼の名前が刻まれています。彼のサー・ラー名「ニトケルティ・シプタハ」は、『トリノ王名表』にも確認されており、注目に値します。

ニトクリス女王との関連

ヘロドトス著『歴史』には、エジプトの女王ニトクリスが夫である王を暴徒に殺された後の復讐劇が描かれています。彼女は宴席を設け、参加者たちをナイル川に溺れさせたという伝説が語られています。この物語は同じくマネトの著作『アイギュプティカ』にも登場します。彼はニトクリスを「当時のあらゆる男よりも勇敢で、美しさの象徴である」と賞賛し、メンカウラー王のピラミッドも彼女によって建造されたと述べています。

殺害された王の名前は明記されていませんが、マネトの記録においてナイル川の逸話は多くの研究者によってメルエンラー2世と結びつけられています。特に、シュテルンというドイツのエジプト学者は、ネチェルカラーとニトクリスが同一人物である可能性を1983年に提唱しました。

近年の研究成果

最近の研究では、デンマークのエジプト学者キム・ライホルトがシュテルンの仮説を再評価しています。彼は「ニトクリス」という名前が「ネチェルカラー」の変形から生じたものであると主張しています。『トリノ王名表』の分析からは、第19王朝初期に編纂された他のリストが「ニトケルティ・シプタハ」を不明確な位置に挙げていることが示されています。ライホルトは、パピルスの分析を通じて「ニトケルティ・シプタハ」が第6王朝末期のメルエンラー2世のすぐ後に記載されていることを明らかにしました。これにより、両者が同一視される根拠が強化されています。さらに、「シプタハ」というサー・ラー名が男性名であることから、ニトクリス女王が実際には男性のファラオであった可能性が示唆されています。

このように、ネチェルカラーの存在は古代エジプトの歴史を理解する上での重要な鍵であり、彼の治世がもたらした変遷は今後の研究でも光を当てられるべきテーマです。

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