ノンちゃん雲に乗る

ノンちゃん雲に乗る

石井桃子氏が生み出し、1951年に出版された児童文学の金字塔が『ノンちゃん雲に乗る』です。この作品は、発表以来、子どもから大人まで幅広い層に親しまれ、日本の児童文学史において重要な位置を占めています。

物語のあらすじ

物語の主人公は、8歳の女の子、田代信子、愛称ノンちゃんです。ある春の穏やかな朝、ノンちゃんはお母さんとお兄さんが、自分には何も言わずに家を出て行ったことに気づき、深い悲しみに沈み、涙を流していました。悲しみにくれるノンちゃんは、庭の木に登り、下のひょうたん池に映った空を眺めているうちに、足を滑らせて池に落ちてしまいます。

しかし、ノンちゃんが次に目を覚ますと、そこは不思議な空間でした。水の中にいるはずなのに、まるで空の上にいるような、雲の世界が広がっています。その真っ白な雲の上で、ノンちゃんは長い白いひげを生やした温かいおじいさんと出会います。おじいさんは熊手を使ってノンちゃんを助け上げてくれます。安全な雲の上で、ノンちゃんはおじいさんに、自分が抱える悲しみや家族に関する出来事を正直に語り始めます。

メディアミックス展開

原作が持つ魅力は、出版後すぐに様々なメディアへと波及しました。

映画化

1955年には、実写映画として公開されました。この映画では、当時期待の新人であった鰐淵晴子が主人公ノンちゃん役に抜擢され、監督は倉田文人が務めました。本作はまた、前年から病気療養に入っていた大女優、原節子の復帰作として大きな注目を集めたことでも知られています。映画版では、ノンちゃんが体験する雲の上の幻想的な情景を表現するために、当時としては先進的なアニメーション合成技術が活用されました。

スタッフ

監督：倉田文人
製作：熊谷久虎、中田博二
原作：石井桃子
脚本：倉田文人、村山節子
撮影：小原譲治
美術：山手健
音楽：飯田信夫
バレエ振付：谷桃子
後援：雪印乳業

主なキャスト

ノンちゃん（田代信子）：鰐淵晴子
お母さん：原節子
お父さん：藤田進
雲のおじいさん：徳川夢声
山口先生：臼井正明
長吉：石井秀明
おばさん：小沢路子
ナレーター：阿里道子
その他出演：名古屋章、大泉滉、高崎淳生、倉田マユミ、谷桃子バレエ団

この映画は、公開から数年後の1960年5月21日には、『希望の青空』と改題されてリバイバル上映も実施されています。

映像ソフトとしては、2000年11月24日にイマジカからDVDが発売され、エスモックが販売を担当しました。

テレビ放送

映画公開の翌年、1956年にはテレビ番組としても制作され、KRT（現在のTBSテレビ）で放送されました。当時、同局で放送されていた子供向け番組『影絵名作アルバム』（月曜から日曜の夕方18時45分から18時50分）の中で、同年3月26日から4月7日までの期間、「影絵劇」として展開されたのです。影絵の制作は「雪の会」が手掛け、物語の語りは井潤一氏が担当しました。

音楽作品

時代はさらに下り、2008年12月24日には、この作品の世界観を着想源としたオリジナル楽曲が制作されました。この楽曲は、大橋のぞみのCDアルバムとして『ノンちゃん雲に乗る』のタイトルでリリースされています。

書籍としての流通

原作の児童文学『ノンちゃん雲に乗る』は、現在も複数の出版社から入手可能です。

角川文庫より1973年5月に文庫版が刊行されています（ISBN 978-4041342015）。
福音館書店からは、福音館創作童話シリーズとして1967年1月に刊行されています（ISBN 978-4834000795）。

このように、『ノンちゃん雲に乗る』は文学作品として、また映像作品や音楽作品として、様々な形で親しまれ続け、多くの人々の心に温かい光を届けている名作です。

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